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【鑑賞記録】特別展「都市の祈り 住吉祭と堺」

堺市博物館で開催している特別展「都市の祈り 住吉祭と堺」を拝見しました。

本展は堺市博物館が所蔵する「住吉祭礼図屏風」(以下、堺市博本)とサンフランシスコ・アジア美術館が所蔵する「住吉祭礼図屏風」(以下、サンフランシスコ本)を中心に構成されていました。サンフランシスコ本は日本初公開で、住友財団の助成を受けて岡墨光堂で修復を受けてのお披露目となります。

展示の中心は上記の作品ですが、冒頭に展示されている「住吉遊楽図屏風」に目を奪われました。描かれるのは傾奇者たちが博打をしていたり女性と戯れている露悪的な場面が中心となっています。顔貌や女性の黒髪など線にゆるぎがなくピッとした線で描かれていました。絵師のうまさで言えば堺市博本、サンフランシスコ本よりも出来が良いと思います。パネル際のケースに展示されているので見逃し注意です。

「住吉祭礼図屏風」は右隻に堺の町並み、左隻に住吉大社が描かれます。堺市博本は左隻から右隻につながるように行列が描かれるのに対し、サンフランシスコ本は左隻では行列が上から下に向かい、右隻では左から右方向へ行列が進みます。ペアとして考えると違和感が拭えない構成であることは12月3日に住吉大社で開催されたシンポジウムでも指摘されました。

シンポジウムで報告された住吉浜を描くのに本物の砂を画面に撒いて砂浜を表現する点はサンフランシスコ本の大きな特徴です。画面を見て気付いたのは神輿の鳳凰が金箔の箔押しで表現されている点です。他の展示作品で神輿の鳳凰を確認したところ、金泥と墨で描かれているものが多かったです。砂の利用とあわせて考えると工芸的な側面も強く感じる作品でした。

文献資料や新調された神輿、住吉祭のダイジェスト映像など住吉祭を体感できる展覧会でした。

展覧会は12月17日まで。