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#77 細胞培養肉の可能性、グリーンウォッシングの取り締まり強化など

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Briefing

細胞培養肉の可能性とこれから

動物の権利や環境への配慮から、肉を食べない「ヴィーガン」が広がり、植物由来の素材を使って肉を再現する「プラントベース」の商品も増えてきた。
そんななか、注目を集めているのが細胞を培養して作る「細胞培養肉」だ。『Fast Company』は、最近の培養肉を取り巻くフードテックの状況を詳しく報じている。

世界的な環境意識や健康志向の高まりを受けて、肉を代替する存在として、「培養肉」にまつわる技術の開発がスタートアップを中心に相次いでいる。

本物の肉と比べて、生産時の二酸化炭素や水の消費を削減できるほか、食肉が抱える倫理的な問題、感染症による供給網の寸断リスク回避などの理由から注目を集めている。

今回は、培養肉の中でも「珍しさ」の観点から注目されている企業を取り上げたい。
ロンドンに拠点を置き、培養肉の研究をしているPrimeval Foods(プライムバル・フーズ)社は、培養技術を使った「ライオンのパテ、トラのステーキ、シマウマの巻き寿司」の販売を計画していると発表した。
同じく培養肉の研究をしているオーストラリアのVow Foods(バウ・フーズ)社は、シマウマや象の肉を培養する可能性を探っているようだ。

このように、培養肉はこれまで食用肉として扱われてこなかった種類の動物も、食用として普及させる可能性を秘めている。

さらに培養肉は、動物愛護、環境保全、人口増加にともなう食糧の確保など、あらゆる問題を一度に解決できる可能性を持っている。

培養技術を駆使すれば、食肉を構成する筋繊維や脂肪の組織だけを培養できるので、動物を殺める必要もないし、骨や臓器などの廃棄物も出ないうえに、飼育にかかるコストも削減できる。
飼育が必要なくなれば、これまで家畜が排出していた温室効果ガスも削減できるため、環境にも優しい。さらに、飼育が困難で大量に繁殖しにくい動物でも、食肉として量産化できる可能性がある。
水分・酸素・栄養分といった、細胞が成長するために必要な要素を外部から供給すれば、脂肪の含有量も調節し、より栄養価の高い食肉を作ることも可能になる。

その反面、味や安全性の懸念が、同じく肉の代替として期待されるプラントベースフードの普及を阻んでいると言われるように、培養肉も同じ道を辿る可能性がある。さらに、もしもライオンの培養肉が高級レストランで提供されるようになった場合、密猟や養殖を助長する恐れもある。

前述の二社などは、ライオンやシマウマなどの珍しい肉を培養することに重きを置いているようにも見え、本質的な課題解決に向かっているのかも気になるところ。

細胞培養肉は、「食肉の代替品ではなく、それをアップグレードするもの」だとPrimeval Foods創業者のYilmaz Bora氏は語る。食肉に取って変わるモノではなく、可能性を広げた延長線上に培養肉があるという。しかし、まずは本物の肉同等の美味しさと手に取りやすい価格設定を両立させることが、培養肉の当面の課題となりそうだ。

ブランドはファッションのグリーンウォッシングの取り締まりをどのようにナビゲートするべきか

「SDGs」や「エシカル」がビジネスのキーワードになっているなか、環境に配慮した製品をつくっているかのように見せる「グリーンウォッシング」が問題となっている。誤解を招くようなサステナビリティ・マーケティングを行っていることが判明したファッション企業は、風評被害、訴訟、罰金などのリスクに直面していると『Business of Fashion』は伝えている。

「グリーンウォッシング」とは、企業や製品が環境に与える影響が実際には削減されていないにも関わらず、環境に配慮しているように見せかける行為を指す。

近年では、ファストファッションブランドのH&Mが「サステナブルファッション」と称して発表したコレクションをノルウェー消費者庁が「グリーンウォッシュである」と判断したり、環境負荷に関するデータを偽っていたことも話題となった。

漠然とした「サステナブル」という曖昧な表現で、消費者に対してサステナビリティを誇張することは、企業が良いことをしているように見せながら、今まで通りのCO2や廃棄物を大量に排出するビジネスで利益を上げ続けることを可能にする。
と同時に、本当に環境への影響を減らしている企業が注目されず、その取り組みが広がるよう支援する機会を見逃してしまうことにもなる。

これを踏まえた上で企業が注力しなければいけないことは、サステナビリティを「見える化」すること。サステナビリティをブーム化するのではなく、各ブランドは「自社が考える持続可能性とは何か」を定義して、それを説明すること。
それはデータとしてではなく、ブランドの根幹にある想いや哲学の部分でサステナビリティの主張の裏付けを取る必要がある。

さらに、ブランドがサステナビリティへの取り組みを消費者に伝える場合、あらゆるデータは適切かつ丁寧に文脈化される必要がある。例えば、あるパッケージのプラスチック使用量が50%減少したとと述べても、基準値や比較対象がなければ消費者にはほとんど意味がない。消費者には「取り組みをしている」と”伝える”のではなく、分かりやすい”伝わる”表記が重要視される。

サステナビリティの透明性が大事とはよく聞くが、結局その「透明性」になる要素とは、企業が発信することはもちろん重要だが、消費者とつくっていくことが更に重要になってくる。

マーケティングにおける情報が明確でわかりやすいものになるよう、1,400人以上の顧客を対象にサステナブルファッションについての考えを調査したブランドがあるように「透明性」をブランドと消費者が一緒につくっていくことで消費者一人一人が「自分にとってのサステナブルとは何か」を考えることができる。そうなった時に商品レベルでどの点が「サステナブル」なのか?と思考することができる未来にしていきたい。


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