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ライブコマース、ソーシャルコマース、コンテンツコマース──「◯◯コマース」の注目ニュース

CEREAL TALKで毎週お届けしている海外トレンドの中から、ライブコマースやソーシャルコマースにまつわるニュースをまとめてご紹介。

Supergreatはライブコマース領域でどう勝ちにいくか

https://www.retailbrew.com/stories/2021/12/01/how-beauty-app-supergreat-aims-to-stand-out-in-the-livestream-shopping-space

ライブコマースのSupergreatのアプリを開けると年齢、肌色、スキンタイプ、髪の色、髪質、どういうビューティー領域に興味があるかと聞かれた後、キュレーションされたフィードが提供される。お昼に60年代のメイクチュートリアル、19時にSephoraのコレクションの紹介など、様々なクリエイターのライブ配信動画のスケジュールも見えるようになっている。Supergreatは元々クリエイターがショートフォーム動画で商品レビューをするプラットフォームだけだったが、去年あたりからライブコマース領域へ入り込んだ。今では20万人のSupergreat登録者が合計25万動画を制作した。そして週の25%の時間は誰かしらライブ配信している。

さらに『Retail Brew』の取材によると、SephoraやCoverGirlなど大手ブランドはSupergreatのクリエイターと提携してイベントやプロダクト紹介の配信をしてもらっている。大体営業イベントだと平均600〜700人の同時アクセスで、最高毎分$60の販売があったと語る。さらに30分ごとに大体2,500個のコメントがある。Supergreatの強みはビューティー領域にしかフォーカスしていないことで、今後はユーザーにアプリ内通貨などのインセンティブを使ってよりエンゲージメントや購入に至る行動を設計していく予定。ライブコマースアプリとしてどうコンテンツを広告っぽく見えないようにして、エンタメ感があるコンテンツとして見えるようにするかが重要になりそうだ。

2022年はライブコマースプラットフォームが大手テック企業と対抗する年に

アメリカでは去年まで「NTWRK」や「Whatnot」などライブコマース企業がコレクターやブランドなどと提携して大型調達も行ってきたが、『Modern Retail』によると、大手テック企業がより本格的に市場参入し始めているようだ。

2021年には$11B、2023年までに$25Bになると言われているアメリカのライブコマース市場を狙ってFacebook、YouTube、TikTokなどがコマース展開している。FacebookやYouTubeは去年からショッピング型のライブ配信イベントを開催している。
スポーツ・ポケモンカードやフィギュアなどを販売するWhatnotからすると、大手テック企業はライブコマースのネイティブユーザーであるカードショップの売手などを抱えるのは難しいと語る。YouTube・Instagramインフルエンサーとは違うスキルセットであり、Whatnotは売手に対して専用のマーケティングやアナリティクスツールを提供している。
機能自体は大手テック企業に真似されるので、最終的にプラットフォームが勝つためには最も強いライブコマースクリエイターを集められるかかもしれない。NTWRKなどでは複数人の売手が一緒に集まってライブショッピングフェスティバルなどを開催していて、毎回$2Mぐらいの売上を達成している。

ソーシャルコマースは本当にアメリカで流行るのか?

InstagramなどのSNSは、消費者が新しい商品を発見できるプラットフォームを作った。それまでは雑誌、新聞、野外広告、店舗、検索のオプションしかなかったのが、SNSを通して大量のコンテンツ・広告を見られるようになった。チェックアウト体験も数クリック以内で完了するまでになり、インフルエンサー・クリエイターの影響力が上がってきた。
そんな中、『BANKNOTE』で紹介されているのは、中国のソーシャルコマース市場規模が$250Bを超え、2023年までに中国の全体のEC売上の14.3%がソーシャルコマースから来るという予想だ。コロナ前から37%の中国のオンラインでショッピングしたことがある人たちはライブ配信から商品を購入したことがあったので、同じトレンドがアメリカにも来るだろうと多くの人が予想している。

ただ、一つ中国とアメリカの大きな違いがWeChat。WeChatはTencentが運用するスーパーアプリで、メッセージ機能としてスタートしたが、今ではゲーム、エンタメ、ソーシャル、決済など、なんでもWeChatのミニプログラム経由で出来るようになった。そのため、ユーザーはWeChat以外の他のアプリをダウンロードせずにすむ。アメリカでは逆にアプリの利用シーンがかたまっているため、コンテキスト(状況)に応じてアプリを変えることに慣れている。中国ではこのコンテキストスイッチングがないからこそ、SNSからスムーズに購入に進むことができる。

アメリカでソーシャルコマースが流行るには色んなコンテキストを組み込んだアプリが必要になるかもしれない。コマースを含む、アメリカでスーパーアプリ化出来そうなアプリを考えると、Amazon、Shopify、Facebook、などが候補社として上がる。

グルメマーケットプレイスのGoldbellyがTV番組をスタート

Goldbelly CEOのジョー・アリエルは、ローンチした2013年にすでにアメリカの人気テレビチャネルFood Networkにアプローチをしていた。彼が考えていたのは、レストランの紹介をするだけではなく、そのレストランをGoldbelly経由で注文できる仕組み。そのときすぐに実現はしなかったのものの、2020年には売上を4倍に成長させた。
特にコロナ期間ではレストランの重要なパートナーになり、『Fast Company』によると今では1,000社弱のレストランが活用していて、数十社はGoldbelly経由だけで数百万円の注文を取れている。

そしてようやくテレビ番組「Goldbelly TV」を11月にローンチ。この番組はMaster Classのようなクッキング番組とQVCのようなコマース要素を取り入れたコンテンツとなる。アメリカでは料理番組がかなり人気だが、今まではその食べ物をオーダーできなかった理由が分からないと語る。さらにコンテンツを盛り上げるためにセレブシェフを呼んだり、地域特化の動画を出すことを考えている。このようにコンテンツとコマースを掛け合わせるブランドは今後増えていくはず。

ライブショッピングに出演するフード系D2C起業家

TalkShopLive」は、2018年のローンチ以来、セレブリティ主導のショッピングセッションのライブで知られるようになった。『ModernRetail』によると、最近ではプラットフォームに自ら出演してくれるフード系D2C創業者を増やしたいと考えているようだ。

フード領域は、ビューティーと並んでTalkshopliveで最も成長しているセグメント。その中でも特に成功したのは、食をテーマとした専門テレビ局のFood Networkの名司会者ジャーダ・デ・ラウレンティスが新刊のキャンペーンで行ったセッションだ。そのなかで、視聴者から「ブランド創業者を取り上げてほしい」という要望が寄せられたそう。そこからオリーブオイルブランドのBrightlandや缶のワインブランド Nomadicaの創業者がライブ・ショーの一部に出演。ビデオコマースのトレンドは、TikTokやInstagramのリールような、より動画に適したプラットフォームを試してみたいというブランドの高い関心がある。さらに出演者は製品の背景にあるストーリーや想いを視聴者に伝えた後に、その場で購入に繋げることもできる。

ここでのポイントは、創業者たちが自宅から配信していること。「視聴者は、創業者が自宅で犬と一緒にいる姿を見るのが好きで、綺麗なスタジオよりも心に刺さる傾向がある」とTalkShopLiveの共同設立者兼 CEOは述べている。
まだまだマーケティングの実験場として動いていくであろうライブ・ビデオ・コマース。今後はもっと創業者のリアルを発信するセッションやそこだけでしか見られないブランドのコラボレーションが期待されるかもしれない。

ソーシャルコマースマーケットプレイス「Basic.Space」がブランドやクリエイターを惹きつけはじめている

ソーシャルコマースマーケットプレイスのBasic.Spaceは、招待制のプラットフォームとしてローンチした。未だにプラットフォームに参加できるクリエイター、アーティスト、ブランドは招待制で、2018年には大坂なおみなどもジョイン。11月に数名のクリエイターと提携して限定ドロップをまとめて販売した「Select Day」イベントをローンチした。
Select Dayでは8名のBasic.Space売手が特別なデジタル体験と商品ドロップを販売して、Basic.Spaceのロイヤリティプログラムメンバーが先行してアクセスできる仕組みだった。このように今後プラットフォーム側もドロップマーケティングを提供するのがトレンドになるかもしれない。NikeはSNKRSアプリで2015年から行っているが、最近だとPinterestのPinterest TVやComplex NetworkのComplexConでもドロップ商品が流行り始めている。

Liquid Deathが2021年に$3M分のグッズ販売を出来た理由

インパクトのあるビジュアルと天然水というギャップがすごい、水ブランド「Liquid Death」は常に新しいグッズを販売して、需要を検証している。2019年にローンチしてから数ヶ月以内にTシャツを売り出していたが、最近ではグッズ販売がかなりの売上になり始めている。『Modern Retail』の記事によると、2021年$45Mの売上のうち、$3Mはグッズから来た。11月には「Urban Outfitters」でLiquid Deathのグッズを卸して販売。去年の夏には$6,000もするLiquid Death専用の自販機を販売した結果、4人が購入したという。グッズは犬のおもちゃやミニ冷蔵庫など、$14から$500ぐらいだが、少しエッジの効いた商品も販売することがある。去年は、スケートボードの神ことトニー・ホークとコラボし、彼の血を含んだスケートボードを$500で100個販売。そして、20分で完売した。

主力商品が二種類(天然水と炭酸水)しかないLiquid Deathにとってはマーケティングがブランド優位性であり、このようなグッズ販売はブランドを強化するもの。そのため、毎月3つから5つの新しいグッズを販売していて、Liquid Deathのサイトで商品購入をするユーザーの半分以上が一緒にグッズを注文する。Glossierも過去にパーカー販売する際に10万人のウェイトリストを集めたが、今後はどのようにブランドとしてカルトファンを集めるかが勝負になるので、グッズ販売戦略を強化する会社が増えるかもしれない。

『ユーフォリア』に実は登場しているD2Cブランド

ラッパーのドレイクが製作総指揮を務める、ゼンデイヤ主演のHBOシリーズ「ユーフォリア Euphoria」。現代社会でさまざまな問題を抱えながら生きる高校生たちの姿をスタイリッシュに描いた若者向けドラマで、「ゲーム・オブ・スローンズ」に次ぐ視聴者数を記録した。
実は劇中にシリアルブランド「OffLimits」とハイビスカスウォーター「RUBY」といったD2Cブランドが登場している。凄いのが、OffLimitsが2020年8月頃、RUBYは2021年5月頃にリリース、Euphoriaのシーズン2の撮影が始まったのも同じ5月。本作ではかっこい古着や若手のブランドの着用も話題になったが、 "尖った"最新フードブランドも最速で取り入れているあたりに新しいコンテンツの作り方を感じる。

「ユーフォリア」はどこを切り取っても絵になるビジュアルやキャッチーなセリフでTikTokなどでミーム化され、作品を観ていない人でもキャラクターは分かるというくらいトレンドになっていたり、話題にするのがとにかくうまい。今回の新興ブランドをセットに取り入れるのもニッチで熱量の高いコミュニティに刺さる良い施策でもあるのかもしれない。最近では、作品のメイクアップアーティストのドニエラ・デイビーと制作のA24と共同でコスメブランド「Half Magic」もローンチ。ドラマという枠組みだけでは収まらないコンテンツ性の高さが感じられる。


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