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首長のリコール制度<学習アウトプット>

愛知県の知事のリコール運動が起きている。その是非ではなく、純粋に法律上の手続きについて整理してみた。

地方自治法におけるリコールの規定

都道府県や市町村は普通地方公共団体といって、その組織運営に関する事項は昭和22年に制定された「地方自治法」に定められている。地方自治法第1条の条文は次の様なものである。

この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、合わせて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

同法第81条に長の解雇の請求とその処置という条文があり、それから第85条にかけて手続きなどの記載がある。当該地方公共団体の選挙権を有する者(つまり有権者)の3分の1の連署があれば、連署の代表者から選挙管理委員会に対して請求をすることができる。請求が有効であったときは60日以内に選挙人の投票を行い、過半数の同意があれば失職する。なお、長の就職の日から1年間及び解職の投票の日から1年間は請求をすることが出来ない。

事例として愛知県知事のリコール運動に当てはめると

愛知県の有権者(選挙人名簿の登録者数)は、2020年6月1日現在約613万人である。解職の請求に何人分の連署が必要であるかだが、有権者数が40万人以上の地方公共団体は単純な3分の1より要件がやや緩和されている。具体的に言うと、40万を超え80万までは6分の1、80万を超える部分については8分の1とされている。この計算式に基づくと、愛知県の場合は84万人程度の署名を集めれば請求できる。なお、選挙管理委員会によると署名には署名した日付、氏名、住所、生年月日、押印の5点が必須とあり、電子署名は今のところ有効数としては認められない。

また、現知事は2019年2月に就任(3期目)しており、1年以上の期間を経過しているので、解職請求の制限期間にはかからない。

リコール以外の住民の権利

今回の愛知県の場合は、過日おこなわれたイベントに対する公金の支出に事の発端がある様である。仮にリコールと言う手段以外に住民が行政に対して出来ることに、住民監査請求(同法第242条)がある。違法若しくは不当な公金の支出と認めるとき、監査委員に対し、監査を求めることができる。これは住民一人でも請求でき、連署による必要はない。また、有権者という規定もなく、住民であれば法人でも請求できる。請求が受理されれば、監査委員は60日以内に監査を行い、長などに対し、必要な期間を示して必要な措置を執るべきことを勧告する。

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