山梨県と取り組む害獣被害課題を解決する、ニホンジカ有効活用方策プロジェクト
山梨県が抱える害獣被害を解決する甲州印伝
今、日本のいたるところでニホンジカによる深刻な
森林環境被害・農業被害が起きており、害獣として捕獲されています。
捕獲されたニホンジカを産業上で真に利用しようとする場合、森の中から売り場までの動線上にいる自治体や様々な業種の方々が連携する必要があり、その実現は難しいのが現状です。
山梨県では、全国に先駆けたニホンジカの有効活用方策として、鹿革を用いる伝統工芸である甲州印伝の素材に捕獲されたニホンジカの皮を用いることを計画し、平成26年度中頃からプロジェクトをスタートさせました。
このプロジェクトでは、食肉加工場を有する地元市町村をはじめ、猟師グループ、鞣し加工業者、デザイナー、伝統工芸士、皮革加工職人がコンセプトを共有しながら、質の高い製品づくりと持続可能なシステムづくりに取り組んでおり、
・施設は廃棄していた革を利活用できる。
・なめし事業者は付加価値の高い白い革を提供できる。
・甲州印伝はほかにはない新しい伝統工芸を生み出すことができる。
それぞれステークホルダーすべてがWin-Winの、
サステナブルな取り組みとなっています。セメントプロデュースデザインは山梨県産業技術センターさんからのご依頼で、プロジェクトの企画、プロデュース、ネーミング、ロゴデザイン、プロジェクトムービーなどアートディレクションを担当させて頂いております。
適正生息数のおよそ15倍にあたる70,000頭のニホンジカが生息。
していると推計されています。
そのため山梨県では、特定鳥獣保護管理計画に基づき個体数調整に取り組んでおり、年間13,000頭あまりを捕獲しています。
しかし、捕獲されたニホンジカが食肉等に加工される割合はわずかに1〜2%であり、ほとんどは有効利用されないまま廃棄されているのが現状です。
この廃棄されてしまうニホンジカから得られる皮を甲州印伝の素材として活用していこうと企画デザインしています。ニホンジカによる農林業被害の解決と、伝統工芸の新たな素材開発とを結びつけ、新しい価値を持ったプロダクト開発を進めています。
印伝から“inden”へ
日本で唯一の「甲州印伝 伝統工芸士(総合部門)」の資格保持者である山本裕輔氏が経営する創業90年以上を誇る「印伝の山本」とセメントプロデュースデザインが共同開発したSAIKA。
甲州印伝は、江戸時代には武士も町民も巾着など好んで持たれており、現在でも伝統的な文様を活かした和柄が多く見られます。
その中で今回目指した新たな甲州印伝は、山梨県に関連した模様をこれまでとは違うモダンな印象で表現し、いまの生活に寄り添うようなデザインを目指しました。
見え方だけではなく、漆塗りの技術もこれまでにない一段と細かい模様に挑戦し、より繊細で緻密な美しさを表現しています。
甲州印伝 / 鹿革に漆で模様をつける伝統的技法
柔らかく手になじみ滑らかで軽い鹿革に、型紙を用い漆で描かれた様々な柄が艶めく甲州印伝。様々な道具を駆使し、伝統的な技法で一つ一つ丁寧に作り込まれたこだわりの品々は、カバンや財布に形をかえつつも現代にも受け継がれ、生活を彩る実用美として多くの人々から愛されています。また稀少な日本の革工芸文化を伝える役割も担っています。
環境負荷が極めて少ない日本初で日本発な白鹿革を使用
鹿革に漆を使い模様付けする山梨県の伝統工芸、甲州印伝。しかしこれまで使われていた鹿革は全て中国から輸入された「キョン」と呼ばれる鹿革でした。
現在、市場に流通している皮革のほとんどは安価で安定的に大量生産を可能とするクロム剤を用いて鞣されています。一方で、クロム剤は環境や人体に影響を与える物質としても知られています。
山梨県の地元猟師さんと連携し、品質基準をクリアした質の高いニホンジカ皮を、環境負荷が極めて少なく、柔らかく鞣すことのできる技術を持った姫路の鞣し技術によって加工することで、一般的な鞣し加工では得ることのできない真っ白な革(無染色・無漂白)を作製しています。
ロゴ / ネーミング
SAIKA(サイカ)は「彩鹿」「彩化」など漆によって模様が入ることによって鹿革が華やかに彩られる様子を表現しており、このブランドを通してユーザーの方々の生活に彩りを与えたいという願いが込められています。
沢山のラインで表現した鹿のシルエットには富士山、印伝の山本、山梨県の頭文字「Y」のアルファベットが隠れています。また、そのラインには「猟師」→「解体処理施設」→「なめし業者」→「印伝事業者」→「消費者」という繋がりを意図し、鹿皮の有効活用、森林環境、生態系の保護などを考慮したブランドであることを訴求する目的が込められています。日本を代表する伝統工芸である印伝、日本産の鹿皮を使ったブランドであることを体現したデザインに。
新ブランド・商品開発
新たに開発した商品はロングウォレットとカードケース、パスケースの3種で、
これまでの甲州印伝とは違い、今の生活やファッションに馴染むデザイン性に機能性も加味した山梨県を代表する商品となっております。日常肌身離さず持ち歩くものだから、細かなサイズ感、開閉方向など、細部まで微調整を行い、使用するときにきれいなシルエットになるよう設計しています。さりげないディテールは日本を代表する山梨県の「富士山」や「南アルプス」などからモチーフにした山梨県産ならではのデザインになっています。
「鹿の子斑」を繊細な小さな漆のドットで表現
漆でできた模様は鹿の毛並みに見られる白い斑点「鹿の子斑」をモチーフにモダンな印象になるように小さなドットで表現しました。繊細な柄を正確に再現するには印伝職人による熟練の技術が必要で、伝統工芸士である山本裕輔氏だからこそ実現できた模様です。
鹿の毛並みに見られる白い斑点「鹿の子斑」をモチーフにモダンな印象になるように小さなドットで表現しています。繊細な柄を正確に再現するには印伝職人による熟練の技術が必要で、伝統工芸士である山本裕輔さんだからこそ実現できた模様。
甲州印伝 伝統工芸士の山本裕輔さん
こちらの商品はセメントプロデュースデザインが運営する
coto mono michiでご購入いただけます。
この廃棄されてしまうニホンジカから得られる皮を甲州印伝の素材として活用して、ニホンジカによる農林業被害の解決と伝統工芸の新たな素材開発とを結びつけ、新しい価値を持ったプロダクト開発を進めていきます。
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