見出し画像

工場見学|メガネも漆器もとにかく磨かれる。RENEW参加レポ。

 普段限られた人しか入れない工場を一般開放するイベントを「オープンファクトリー」と言います。ものづくり産業ファン垂涎のイベントです。
 福井県の鯖江さばえを中心に開催されたオープンファクトリーイベント「RENEWリニュ―」へ参加し、漆器やメガネが丹精込められて作られている姿を見てきました。

オープンファクトリーとRENEW

 大人になっても工場見学ってわくわくしますよね。複雑怪奇な工夫を凝らされた製造工程で、よく知る製品が出来上がっている姿をみると感動します。都内にいたころは片っ端から工場見学に参加していました。でも、いわゆる町工場って中に入れる機会がほとんどない。工場の前を通るとき、心持ちゆっくり歩きながら中の様子をうかがったこと、ありますよね。同志です。
 実はその町工場に入れるイベントが産業観光の文脈で全国で開催されています。そのうちの一つ、福井県のRENEWリニュ―へ参加してきました。存在を知ってから半年間、この日をどれだけ楽しみにしていたか。

 イベントの公式サイトはこちら。2022年は10/7(金)~10/9(日)開催。

RENEWの初日に参加

鯖江駅につくと、イベントのビジュアル、赤い水玉が目に入ってこれだけで高揚します

 静岡を8時過ぎに出発、昼前には鯖江駅に到着。夕方までのタイムリミットで、回れるだけ工房やショップを回る予定。
 今回参加前に公式サイトで知って小躍りしたことの一つが、タクシーの定額チケット。アプリ上で500円のタクシーチケットを購入すれば、あとはRENEW参加拠点間は500円ぽっきりで移動可能です(一部遠いところは1000円)。電車で参加した人間に優しい…!誰がこんな素敵なアレンジをしてくれたんですか。ありがとうございます。

不運なことに駅到着時は雨でタクシーが出払ってしまい、タクシー待ちが発生、ハラハラしました。こればかりは仕方ないので時間に余裕もっての計画がおすすめです!

 こちらのイベントは福井県鯖江市・越前市・越前町からなる半径10km圏内の101の工房が参加。ざっくり5ブロックに分かれます。移動時間を最小にするため、私は総合受付が設置されている「うるしの里会館」があるエリアを回りました。ここは漆器の工房がたくさん。

まずは総合受付でガイドマップを入手

 駅からタクシー15分で総合受付に到着。赤い水玉のビジュアルが目立っていて、一目瞭然。案内人の方々が着てるはっぴがかわいい。

ここが総合受付、うるしの里会館
あいにくの雨でしたがテントがたくさん設置されていて助かりました。
まずはガイドマップを入手。工房の地図やワークショップを一覧できるので必携です。

 ガイドマップの入手と併せてもう一つ大事な目的は、RENEW Payのチャージ。5,000円で6,000円分の商品券がチャージ(20%お得)される。せっかく工房をまわるのでちょっといいものを買いたいし、しっかりこちらでお得にチャージ。タクシーチケットもそうだけど、この3日間を盛り上げるためのサービス精神がすごい。ありがとう福井。


越前漆器

 さくっと受付を済ませたら、近隣の工房へ。鯖江といえば眼鏡が有名ですが、漆器の工房もたくさん集積しています。遡ると1500年前から越前漆器はあるそう。歴史ながい!

参加工房の近くには、のぼりが立っていてわかりやすいし、景色がかわいい。

1か所目

漆琳堂さんのショップへ。店員さんが漆器をもつときの手つきのやさしさが響く。
大事にしたくなる食器と暮らすっていいよなぁ。

2か所目

漆を塗る前の木の器を形作る(「木地師さん」と言うそう)、ろくろ舎さん
工房内を説明してくださった方は、実はろくろ舎の方ではなくて「ろくろ舎のファンなんですよ」。愛が高じて布教活動されてた。お世話になりました、ありがとうございます。
ここで器の形を削り出す。木くずの量がすごい。
ろくろ舎さんのショップ

 このエリアは全部歩いて周りました。

雨でけぶる山を背負った景色がいい。

3か所目

漆器久太郎さん
漆器は分業制。昔は木地の器を籠に背負って運んだらしい。
木のままでは水を通してしまったり壊れやすいので、漆を塗って強度とツヤを出す。
これは漆塗りお箸の端材。塗り作業の時の持ち手が塗り残るので、そこを切り捨てる。
ポッキーの取っ手部分みたいな。
いただいた。木と漆の質感がいい。
いろんな漆の色をみたのですが、今日はえんじ色っぽい漆塗りに目が行きます。
木製のマイストロー開発中!家でアイスコーヒーいれたときに使いたい。かわいい。
次はどこいこうか、地図片手に歩いてると、ちらほら赤い水玉が見える。


鯖江の眼鏡

4か所目は眼鏡の工房。

谷口眼鏡さん。今回一番長居しました。

 眼鏡の製造工程をじっくり説明してもらえます。

板から切り出されて眼鏡の形になるまで、想像以上に工程が多い。
しかも分業制。
谷口眼鏡さんでは、眼鏡の形に組み立てて磨き上げる、最終工程を担当。
自社でデザインが中心だけど、OEMの製造を受けていたり。
メガネのこと大量生産だと思ってませんでしたか?手磨きです。
ひとつひとつのキズを確かめながら。
順路が作られていて、とても丁寧に説明をしてもらえます。
研磨剤と小石のような「ガラ」のなかに眼鏡(の素材)を入れて、12時間~ローリング。
ジャラジャラと回転する音が響いています。
ガラの種類を変えて、何度も磨くので、どんどんぴかぴかに光沢が出てる。
眼鏡に腕を付けるために、細かな丁番の取り付け
おしピンの針ぐらいの太さの部品を取り付ける。すごく細かい。
眼鏡の形になったら、最後の磨きあげ。回転する布にあててつるつるに。
眼鏡は一つずつ磨かれまくってできている
最後、磨き作業を経験させてもらいました。これは眼鏡の端材。左が磨いた後のパーツ。
肉眼だと全然違うのですが、うまく写真で表現できずで悔しいです。
完成した眼鏡たち

 起きてる時間のほとんどは眼鏡をかける生活を送っていますが、曇るし鼻のあたりがむずむずするし、鬱陶しいなぁと思うことが多々ありました。でも、この工程をみていると、自分の眼鏡たちがこんな手間かけ大事にされて生まれてきたのか…と急激に愛着がわきました。眼鏡ユーザーでよかった!もっと大事にしよう。

木工

5か所目は、オリジナルの木製雑貨を手掛ける工房へ。

木地師発祥のHacoaさん。大きい。
木材から切り出し、製品の形に仕上げるまで自社で一貫して手掛けている。
製造工程を職人さんが教えてくれる。
「NC加工でどうして薄板残して、切り抜かないんですか?」素朴な質問しても、丁寧に答えてくれる。正方形の枠にはめて加工しているので、抜ききっちゃうと加工できなくなるから。最後、手で抜き取って、磨く。
「何万個と磨いてるから、考えなくても身体が覚えてるよ」ってかっこいいな。
木の香りが満ちた工房。ここでも、端材へやすり掛けする体験をさせてもらいました。磨くまえはトゲでてたり角がとがってたりするんだよねぇ。

漆器も眼鏡も木製品も、とにかく磨く

 滞在4時間弱でしたが、徒歩でうろうろとするだけで5箇所の工房をめぐることができました。たぶん、もっと効率よく攻めたら、別のエリアにも行けたと思うのですが、すっかり一か所で満喫してしまい、タイムアップ。
 漆器、眼鏡、木製品と見せていただきましたが、どれも製品になるまでとくにかく磨いて磨いて加工してまた磨いて、消費者の想像の10倍ぐらい丁寧に磨かれて世に出てきています。棚にしれっと並んだ器や眼鏡たちが、こんなに手間暇かけてつくられてるとは。
 眼鏡はレンズさえはまれば機能するし、漆器や木製品も多少でこぼこしてても多分困らない。でも、誰かがとがった先にでケガしないように、とか、ぴかぴかの光沢で特別な存在感が出るように、とか、ちょっとでも長持ちするように、とか「磨く」はいろんな気持ちが込められた工程なんですね。

回った工房のお土産の一部。かわいいショップバックは総合受付で買えます。

 そんなことを考えつつ、お土産を抱えてバスに揺られてRENEWを後にしました。オープンファクトリー、いいなぁ。工房に入って、職人さんたちから直接説明を聞いたり体験したりするうちに、自分の価値観も一緒に磨いてもらったような。
 全国のものづくりファンのみなさま、ぜひともどこかのオープンファクトリーに参加してみてください!(静岡でも来年、きっと開催するぞ!)



 福井のRENEWに続き、翌日は燕三条の「工場こうばの祭典」に参加します。(どうしてこの二つが同日開催なんだ!)北陸とはいえ福井から新潟の上の方への移動はなかなか遠かった。特急・新幹線3つ乗り継いで5時間の長旅。「工場の祭典」のレポートはまた後日。

追記)燕三条の工場の祭典れのポートもかきました。連日のことで情報量に頭がパンクしそうになりました。幸せです。

#お祭りレポート

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集