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週刊セブ島留学&起業日記(第79回)

この記事は2020年4月12日に配信されたメルマガのバックナンバーです。

<今週のトピック>
・セブ島 武漢肺炎をデータで読み解く
・セブの治安は大丈夫なの?
・フィリピン経済は大丈夫か?
・フィリピン留学の将来を独断と偏見で予測する

<セブ島 武漢肺炎をデータで読み解く>
このメルマガでは今後は「武漢肺炎」と呼ぶことにします。詳細は割愛しますが、「コロナウイルス」ってたくさんあるのです。SARSもMARSも実はコロナウイルスなのです。病気の名前に地名をつけることは別に差別でも何でもありません。ちなみに、武漢は世界的には「ウーハン」と発音されます(豆)。

さて、最新データから。

4/11 PM5:00現在

<累計感染者>
セブ市:25名(0名)*14名回復
ラプラプ市:3名(0名)*同1名
マンダウエ 市:2名(0名)*同2名

<死者>
セブ市:5名(0名)
ラプラプ市:0名(0名)
マンダウエ 市:0名(0名)

*カッコ内は過去24時間増加数

ソースはこちら。
https://www.facebook.com/DOH7govph/photos/pcb.849097158892124/849096518892188/?type=3&theater

以上より、セブはよく頑張っています。上記の数字に、ここ1週間はほとんど変化はありません。もちろん検査結果待ちの人も多いのですが、それはどの国の統計も同じなので、apple to appleで比べた場合、セブは本当によく抑え込んでいます。

次に年齢別で分析してみると下記のようになります。

80代 1名 / 0.2%
70代 5名 / 14%
60 代 17名 / 47%
50代 6名 / 17%
40代 5名 / 14%
30代 1名 /0.2%
20代 1名/0.2%

サンプル数は合計36名と少ないですが、明らかに高齢者に感染者が多いことは明らかです。ざっくり60歳以上が全体の60%を占めるのですが、平均年齢が24歳のここフィリピンで60歳以上の人口ってたったの4%です。たった4%に60%が集中しているのです。

フィリピンの60代って日本人の80代の感覚です。であれば、80代の方が病気にかかり易かったり、なんらかの病気をきっかけに亡くなるのってそんなに珍しいことではないと思うのですが、皆さんどう思われますか?(人命を軽んじるのではなく、武漢肺炎が特別ではない、という意味です)

しかし、こんなセブもロックダウン中です。私が住むラプラプ市は4/14までの予定だったのですが、先日市長から月末までの延長が宣言されました。理由は「長いモノにまかれろ」的なものです。首都マニラが月末まで延長し、州都のセブ市も月末までなので、まあ普通の人はこういう判断しますよね。しかし、セブとマニラでは全然状況は異なるのです。

下記がフィリピン全体の数字です。

累計患者数:4,195人(過去24時間で119人増)
死者:221人(同上18人)
回復:140人

感染者は日本の数字が上回っていますが、フィリピンの方が死者数は倍以上で、回復した人の人数も圧倒的に少ないです(日本は685名)。おそらく、この辺は医療体制の差だと思います。しかし、トレンドを見極める上で重要なのは「新規感染者数」なのです。

フィリピンでは明らかに、新規感染者が減ってきています。新規死者数も減り始めています。下記のグラフを見れば明らかです。ロックダウンが効いてるのかな?

https://twitter.com/Cebu_Eigo_Club/status/1248746611695468544

次に地域別の内訳を見てみましょう。

全体感染者数 3,764人 (4/7時点)
マニラ 1,227人
確認中(for validation) 1,453人

ソースはこちら。
https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_in_the_Philippines

相変わらず、マニラに集中しています。フィリピン全体の10%の人口を占めるマニラに53%が集中しています。島ベースでは、マニラがあるルゾン島に70%以上が集中している感じです(すみません、地名を見てもどの島かわからないので曖昧な言い回しになります)。マニラは圧倒的に「密集」しているので、それが原因かもしれませんね。


<セブの治安は大丈夫なの?>
私が住むマクタン島はとっても平和です。少なくとも、私が住むマクタン島の中でもハイエンドな(マシな)地域は全く問題ありません。普段から危なくない場所はいまでも大丈夫です。人が少ない分、野良犬が道路の真ん中を闊歩し、普段あまり見ない猫を最近よく見かけるようになりました。ということで、癒されまくってます。

一方で、普段からあまり安全でない場所が、いまも安全でないのも当然です。最近こんなツイートを見かけました。

「3月下旬,夜7時半頃,セブ市内ITパーク地区の路上において邦人母子が,正面から歩いてきた2人組男性に,すれ違いざまに肩を掴まれ,拳銃を突きつけられ,金品を渡すよう脅されたところ,所持していた鞄(現金,カード類入り)を渡すと犯人は逃走した。」

https://twitter.com/Ryu_Ta_Life/status/1247029683163545600

被害に遭われた方は本当に気の毒ですが、「ITパークの夜7時半」って元々安全ではないですよ。私は以前ITパークに1年住んでいたので分かります。ITパークって広くて、暗くて人目につかない場所って結構あるのです。

私は普段から「真っ当な注意力を持って行動すればセブの治安に問題はない」と言っていますが、残念ながらこのケースは「注意力不足」ですね。繰り返し言いますが、悪いのは犯罪者です。そして、被害者の方は本当に気の毒です。でも、セブは無条件に安全な場所ではないのです。

マニラでも強盗が横行しているとか、ロックダウンに反対するデモ隊と警察が衝突したとかいうニュースが拡散されています。一方で、ロックダウン後にマニラの犯罪件数が52%も減ったというデータもあるのです。バギオでは何と73%も減ったそうです。

『Baguio City crime volume down by 73 percent』
https://news.mb.com.ph/2020/04/07/baguio-city-crime-volume-down-by-73-percent/

いまは何か起これば「武漢肺炎のせいだ」と決めつけがちですが、ロックダウンのおかげで全体的な治安は圧倒的に改善しているのです。ですから気をつけるべきことは一つ、「危ないところには行かない」これだけです、普段と全く同じです。

<フィリピン経済は大丈夫か?>
これまでの考察の通り、フィリピンは他国と比べ上手に武漢肺炎に対応しています。感染者数も減少に転じ、治安に大きな乱れもありません。しかし、これらは全て「経済の犠牲」の上に成り立っているのです。ということで、フィリピン経済の「やばさ」について検証します。

まずは、フィリピンの産業構造をざっくり捉えると下記のようになります。

農業 11.1%
鉱工業 32.1%
サービス業 56.9%

ソースは下記。
https://kaigaisyusyoku.com/?page_id=2852

そして、半分以上を占めるサービス業の中でここセブで目立つ産業といえば、観光業とBPOです。BPOとはBusiness Process Outsourcingの略で、フィリピンの場合は分かりやすく言えば「コールセンター」のことです。

また、フィリピン経済を支えるOFWと言われる海外出稼ぎ労働者からの送金も無視できません。何といっても、GDPの約10%を占めるからです。参考までに、海外からの送金はGDPには含まれません。GDPとは国内総生産なので。国民総生産のGNPには含まれますね(豆)。

そこで、これらの主要?外貨獲得産業の対GDP比の数字を並べると下記のようになります。

観光業:12.7%
BPO: 12%
OFW: 10%

すごい数字ですよね。特にBPOの数字には驚きました。直感的に「大きすぎでしょ」と思ったので5件ほどの文献に目を通しましたが少なくとも10%はある感じです。

根拠は下記です。

『Contribution of Tourism to the Philippine Economy is 12.7 percent in 2018』
https://psa.gov.ph/content/contribution-tourism-philippine-economy-127-percent-2018

『The Philippines’ BPO Industry Performance in the Global Market』
https://www.outsource-philippines.com/bpo-industry-in-the-philippines/

『フィリピン、18年の海外送金 3.1%増に鈍化』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41330720V10C19A2FF8000/

上記のデータを見れば明らかなように、フィリピン経済って外需依存な訳です。まず観光業って言うまでもなく壊滅ですよね。それから、BPOですが主要発注先のアメリカがあんな感じです。コールセンターはオンラインなので営業に支障はありませんが、例えばメーカーのコールセンターであれば、本業の製品が売れなければコールセンターを縮小しますよね。

そして、フィリピン経済の絶対的エースであるOFW。最近は中東への出稼ぎが増えていますね。そして、世界的に不景気になれば当然にOFWの職も失われ送金額も減ることになります。フィリピン政府はすでに、OFWに対する補助金まで打ち出しています。ということは、すでに影響が出ているということです。

GUIDELINES: OFWs eligible for DOLE's coronavirus assistance
https://www.rappler.com/nation/257530-guidelines-overseas-filipino-workers-eligible-dole-coronavirus-cash-assistance

要は武漢肺炎の影響を受けたOFWに現金を支給するというのです。といっても、金額は1人1万ペソ程度なので焼石に水です。フィリピンでは、OFWが家族に1人いれば他は働かなくても生きていけるのです。これが、フィリピン人の男が全然働かない理由の一つでしょう。

ということで、フィリピン経済ガチでやばいです。そして、こういう時に唯一頼りになるのが「国家」という存在です。最近、日本でも緊急経済対策が発表されたばかりです。アメリカでは220兆円という空前の大盤振る舞いです。そうです、民間が冷え込んでいるときは政府がお金を使うしかないのです。経済政策のイロハです。

そこで、ドゥテルテ大統領の4/9の記者会見での発言。要約すると、

経済対策の財源?そんなものはない。
金はないから、政府の資産を売って金を工面する!
国民を救うために何でも売っぱらう!!

悲壮感漂っています。そんな中、アジア開発銀行が約5600億円をフィリピン政府に貸し付けることを決定したそうです。アジア開発銀行は、歴代総裁は全員日本人で、日本が最大出資国の、マニラを本拠とする銀行です。

こういう時に日本が貸せないものかと思います。日本の財政は鉄壁なので100兆円くらいお札を刷ってもインフレにはならないと思います(お札を刷ることの唯一のペナルティはインフレです)。こういう時に中国にお金を借りたらアウトですね。中国政府はサラ金です。ドゥテルテ大統領がルビコン川を渡らないことを切に願います。

最後にドゥテルテ大統領は、こんなことも言ってます。

Duterte also used his speech to warn lessors against demanding for rent or evicting tenants during the outbreak, saying this could cause chaos in the country

平たく言うと、「こんな時に家賃の取り立てとかするなよ」と貸主に対してwarn/警告したそうです。

『Duterte says he'll sell gov't assets to pay coronavirus loans』
https://amp.rappler.com/nation/257438-duterte-sell-government-assets-pay-coronavirus-loans?utm_medium=Social&utm_source=Twitter&__twitter_impression=true

セブの武漢肺炎情報に関してはyoutubeでも発信しています。

【マクタン島現地情報】セブ島ロックダウン10日目
https://www.youtube.com/watch?v=9Wi5sW8dot8


<フィリピン留学の将来を独断と偏見で予測する>
最近は「アフター武漢肺炎」のことばかり考えています。僕のような凡人の予言など当たるはずもないのですが、自分なりの考察を書いてみたいと思います。

まず、人々は英語学習を継続するか?これこそ、英語学校経営者にとっては根本的な命題です。そして、僕の予測はイエス。確かにAIの急速な発達により自動翻訳はかなり便利になっていますが、ドラえもんに出てくる「翻訳こんにゃく」のレベルに達するにはまだまだ時間は掛かるでしょう。まあ、それ以上に「自分で話したい」という人間の根源的な欲求は無くならないと思うのです。

次に、英語学習をする「手段」としての「留学」の価値について。これも価値としては残ると思います。英語学校の経営者としては問題発言かもしれませんが、英語なんて留学しなくても話せるようになります。僕も留学無しで英国MBAに合格しました。でも、大半の人は「他人の助け」が必要なのです。1人ではなかなか勉強が続かない。そこで「勉強する環境」を与える留学はやはり価値を失わないと思うのです。

更には、留学先の中でのフィリピンの価値。少なくとも、今回の武漢肺炎の騒動で、フィリピンが相対的な価値を落とすことはないでしょう。アメリカやイギリスに比べ、フィリピンは圧倒的に軽傷で済んでいることは明白です。オーストラリアはまだ深刻な状況には陥っていませんが、これから冬を迎える南半球は楽観視できません。

最後に、フィリピンの中でのセブの価値。残念ながら、フィリピン国内の武漢肺炎の感染者の7割はマニラがあるルゾン島に集中しています。セブはフィリピン第2の都市ですが、第3の都市であるダバオよりも感染者数は少ないのです。この観点から、ここでもセブが相対的な価値を落とすことはないでしょう。

以上から、留学というビジネスが存続する限りはセブ留学は生き残れると思っています。しかし、留学生の人数はガクンと減るでしょう。仮に以前の状態に戻れるにしても3年はかかるような気がします。

では、留学生の属性として、どういう人がセブに来て、どういう人が来なくなるか?僕は、学生が一気に減ると思います。特に学校単位の組織的な語学研修は激減するでしょう。というのも、仮に本人が留学したくても親が止めると思うのです。また、学校側もこれまで以上に「何かあったら大変」ということで、更に保守的になるでしょう。石橋を叩いて渡らない、って感じです。

一方で、比較的時間とお金に余裕のある「大人」は減らないでしょう。この層は留学生全体に占める割合は少ないですが一定程度います。そして、海外に慣れているは、どんなに日本が素晴らしい国でも海外に行かないと満足できないのです。僕もその一人なのでよくわかります。タイ出張から戻ってまだ1ヶ月も経たないのに、もう海外に行きたくてウズウズしています。

現在、セブ留学に占める学生の割合は分かりませんが、一番多い層であることは間違いないでしょう。この学生が来なくなるのですから、セブ留学業界は大打撃を被ります。

そして、次に起こるのは「値引き合戦」です。ビジネスは需要と供給のバランスで成り立つので、圧倒的な供給過剰がもたらすものは「値崩れ」です。最近の原油価格を見れば分かりやすいです。一時1バレル100ドルを超えていたものが、20ドルまで下がりました。

更に「値崩れ」が引き起こすのが品質の低下です。まず、学校は固定費の削減を徹底的に行うでしょう。フィリピン人講師の正社員雇用をやめ、「1コマいくら」といったアルバイトのような契約になると思います。

そして、フィリピン国内では数ヶ月後には絶望的な不景気がやってくるので、職を求める講師たちが「1時間50ペソ」程度の最低賃金で契約することになるでしょう。こんな給料では当然モチベーションは上がりません。授業中に愚痴を漏らす先生も増えるでしょうね。

更には食費の切り詰めも始まります。寮のスタッフの人数も減らすので、生活面のサポート体制が弱くなるのは明らかです。無休で働くインターン生も減るかもしれません。一方で、日本人スタッッフをまともに雇用すると固定費が大きく増大します。ということで、残った日本人スタッフの負荷は大きく増え、文字通り留学生へのサポートが「行き届かなくなる」のです。

以上は、「生き残る」ために企業がとる普通のアクションです。不況下において、非難に晒されるべきものではないと思います。だって、学校が潰れたら多くの雇用が失われてしまう訳で、どんな形であろうと会社の存続には大きな価値があるのです。

中には廃業する学校も出てくるでしょうね。一方で体力がある学校は、こうした学校を安く買い叩くでしょう。悲しいですが、これも不況時の常です。

さて、こういう状況下で自分はどう動くべきか?

先ほど書いた通り、値引き合戦で安さを売りにする学校は増えるでしょう。一方で、「大人層」は比較的減少が少ないと思われるので、この層をターゲットにする学校も少なくないでしょう。ということで、安さを売りにする学校と、少し高いけどサービスレベルが高い学校の2極化が進むのではないかと思っています。

そして、当然に自分が進む方向性は後者のものです。僕は安売りビジネスは苦手なのです。「安さ」には圧倒的な価値があり、僕も消費者としては安いものが大好きです。しかし、売り手の立場で「安くしてください」と言われるのが何よりも嫌いなので笑。

ということで、品質を落とさないために、1人もレイオフを行わず、給料を満額支給し続けるつもりです、少なくとも年内は。僕は日本人なので、こういう時こそ古臭い「日本的経営」に拘ろうと思います。しかし、会社のキャッシュも夏前には底をつきます。ですから、フィリピン人講師の給料を払うために、日本に出稼ぎに行こうと思っているのです。

これって、当社の場合は全然深刻な話ではないのです。まず無借金なので返済の問題とかありません。キャンセルになったお客さんにも全額返金済みなので変な心配やトラブルもありません。

更には、当校は寮も食事もアウトソースしており、講師も4人しかいないので圧倒的に固定費が小さいのです。正直、何もしなくても今後数年は自己資金で固定費を払い続けることも余裕です。

しかし、じっとしているのが一番苦手なので、「これは良い機会」と捉えて、日本に帰ろうと思っているのです。ロックダウンが落ち着くGW頃に日本に帰ろうと思っています。期間は半年。ですから、セブの家(賃貸)も引き払います。いまでは、日本で何をやろうか毎日ワクワクしながら考えています。

2012年8月1日に英国に渡って以来の日本での長期滞在。楽しくないはずがない。

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