高津再生工場なるか

 高津臣吾ヤクルト監督を見ると、どうしても彼の恩師である野村克也元監督と重ね合わせてしまう。若手投手を中10日でローテーションに組み込む事や、規定投球回を敢えて投げさせず細切れ継投策で弱かった投手陣をリーグ屈指のものにしたりと球界の新常識を作り続けているのだ。今回は、そんな高津ヤクルトが獲得した3人の自由契約選手にハイライトを当てることとしよう。

沼田翔平を是非救援で

 この投手はスピンの効いた直球がウリであったが、結果がなかなか出なかった為に横手投げにしたり、上手投げと横手投げの間の子であるスリークオーターにしたり、そして今季はフォームを戻しと迷走していたところをヤクルトが拾った形となった。育成から支配下へと上がるだけでも大変な巨人で、それどころか一軍のマウンドを経験したということは秘めたポテンシャルが相当高いのだろう。

 沼田の最大の武器は投げっぷりだ。腕を強く振って投げるので、変化球と直球の区別がつかないのではないか。ヤクルトの主戦級で例えるなら救援の清水昇だ。気の入った投球で、流れを変えられる投手なので、今季大量の投手をつぎ込んだヤクルトにとっては来季の救世主となる予感がする。

尾仲祐哉は環境を変えて飛躍を

 この投手はチーム全体での防御率が2点台を誇り、先発、救援にそれぞれ大黒柱が揃う阪神では厚い選手層に屈していたものの、冒頭で書いた通り細切れ継投策を信条としているヤクルトであれば活躍の可能性があるのではないか。

 尾仲はウエスタン・リーグで度々投球を見たが、「この投手が二軍なのか」という感想を見る度に抱くような選手であった。直球は150キロ近くを計測し、スライダーと落ちる球のキレが抜群な所謂球の速い変化球投手だ。沼田同様に、この投手を育成契約で獲得できたことはまさに願ったり叶ったりだろう。

最高の脇役・三ツ俣大樹

 前述の2人とは違い、三十路を過ぎた三ツ俣は伸び代が期待できないだろう。ただ、今トライアウトに出場した選手の中で、最も安定感のある選手が他でもない彼なのではないか。

 この選手は戦力外寸前だった令和3年に開花した。攻守走全てが平均ほどで、内野の全ポジションをこなせるという「使い勝手のいい選手」である。ヤクルトには山田哲人や村上宗隆といったNPBを背負って立つ選手が多数いるが、同時に彼らが抜けたら次に続く戦力がいないこともまた事実である。コロナ禍の今、複数のポジションをそうなくこなす選手が重宝される時代になっていくのではないか。

最後に

 3人共にいい素材であることは確かなので、あとはヤクルト首脳陣がどう料理するかだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?