【詩】ぼくと彼の約束、はじまりのとき
その木陰で紳士は襟元を正した。
何もかもがひしめき合う世界の中で
自分を守れるのは自分だけ。
寂しいと思うかい?
いいや、素敵なことだ。
悲しみも喜びも共に湧きいずる。
だけど時は限られているから
見定めて微笑みを掬いとるんだ。
ズルくていいんだよ。
そうやって初めて、
大切な人を守ってあげられる。
だからどんな時も、胸を張って。
そう言って彼はぼくの上着のポケットに
青に輝く一輪を差し込んだ。
さあ、おまじないだ。
心震わせる何かは君の上に
どんな時も咲き誇っているよ。
ぼくは頷いて光の向こうを見つめた。
ぼくがぼくを守れるように。
いつか誰かを守れるように。
そして、
世界のありとあらゆる美しさを
忘れることなく愛し続けられるように。
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