当事者目線の共感と理解/認知症AR体験(認知症に優しいデザイン3)
前回までの① ②では認知症にやさしいデザインについてご紹介してきました。3回目の今回は、医療や介護に従事している人たち、また一般市民の方々にとっても、当事者目線で考えるきっかけづくりとなる、認知症AR体験「Dementia Eyes」を紹介します。
認知症は身近なことであり、私たちの身の回りでも多くの方が認知症とともに生活をしています。私たちは認知症AR体験は知識レベルだけではなく、認知症体験を通して具体的な困難を理解し・共感することで、実践に移るための最初の一歩になると考えています。
1 認知症を実感するのは難しい
認知症の方は、何も変わりのない日常においても、私たちが想像できないような様々な場面で困難な状況に直面しています。そのような中には、周囲の人のちょっとした対応や空間上の工夫などで、解消したり、軽減できるものもあります。
例えば、自分がいる場所やこれから向かおうとしている場所を思い出せなかったりすることがあります。記憶に頼れないために、周囲にあるものから場所の手がかりを得ようとします。しかし、わかりにくい空間ですと、例え目の前にトイレの入口があっても、トイレに気が付けないということがあります。そして、このようなことは本人の不安や混乱、気持ちの落ち込みにつながったりします。
また、空間内での自分と物との位置関係をうまくつかめないことも認知症の特徴の1つです。そのために椅子にうまく座ることができずに何度も座り直したり、時にはトイレで座り損ねてしりもちをついてしまったりします。
必要なところに注意が向けられなかったり、視野に入っていないと全く気がつかなかったりすることもあります。横から急に声をかけられたりするとびっくりしてしまうことがあるのはそのためなのです。
このようなことは聞くとなんとなく頭で理解した気になります。しかし、認知症は脳の病気であり、目に見えない障害なため、実際にそれがどんな感覚であるのか、どう難しくなるのかまではなかなか実感する機会はありません。
2 Dementia Eyes
本人の視点で体験する1つの方法として、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)のようなテクノロジーが有効ではないかということが少しずつわかってきています。認知症ではないですが、家庭内暴力や人種差別の分野では、このようなテクノロジーを使った当事者体験により、共感度の向上や偏見の解消、行動変容に効果があることが報告されています。
認知症の人が一般的に経験している世界がどう見えて、どう感じているかを再現したAR(拡張現実)を用いたプログラムの1つに「Dementia Eyes」というものがあります。これは、慶應義塾大学と株式会社メディヴァにより共同開発されたものです。
「Dementia Eyes」による認知症AR体験は、移動型の小さな装置を使って行われます。自分たちが普段過ごしている環境や働いている場所で認知症の方がどう見えるかを本人の視点から体験するため、とても現実感のある体験になります。
3 認知症AR体験から得られた気づき
これまで医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護士などの医療介護従事者、受付や事務などの事務職員、一般の高齢者に対して実施しています。体験してくださった方のコメントを一部紹介いたします。
4 十分な照度と不快な眩しさの軽減
認知症は身近なことであり、私たちの身の回りでも多くの方が、認知症とともに生活をしています。認知症AR体験「Dementia Eyes」は、医療や介護に従事している人たち、また一般市民の方々にとっても、当事者目線で考えるきっかけとなりました。知識レベルだけではなく、認知症体験を通して具体的な困難を理解し・共感することで、実践に移るための最初の一歩となっています。
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