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その人が持っている能力を引き出すためのデザイン(認知症に優しいデザイン2)

前回は、認知症に優しいデザインの背景や考え方について解説しました。今回は、水海道さくら病院での実績を踏まえて、医療機関や高齢者施設への導入事例を紹介していきます。

皆さんの中にも、例えばホテルなどで自分の部屋がどこかわからなくなった経験や空港やデパートでトイレの場所が見つけられない経験などをした人がいると思います。場所の手がかりは、探さなくてもパッと自然に目に入ると良いと思いませんか?


1 扉(ドア)を認知症に優しいデザインにする

すぐにわかって欲しい場所、例えばトイレや居室などのよく使う場所は、ドアと周囲の壁との間に明確なコントラストをつけることでわかりやすくすることができます。一方で、事務室や倉庫などスタッフが主に利用する場所は、逆に周囲の壁と同様にして溶け込ますことで、目立たなくして注意を引きにくいデザインにすることができます。

前後比較(左改修前、右改修後)


前後比較(病室の扉)


2 床は穴と見間違えることもある

空間を自由に移動できるためには、床に視覚的な障害を作らないことが大切です。例えば、極端な明度の変化は、段差と間違えて見えてしまったり、穴と見間違えたりすることがわかっています。歩き方に影響を与え転倒リスクが高まったり、不安や恐れなどの心理的ストレスを感じさせることになります。建物全体で統一した色の明度し、コントラストをつけないようにすることで視覚的な障害を作らないことができます。また、細かい模様は、動いていると錯覚したり、虫やゴミに見間違えてしまうことがよくあります。ピカピカと反射しやすい床ですと、水たまりと見間違えてしまうことがあることもわかっています。これらに対しては、模様の少ない床や出来るだけ光を反射しにくい素材を選んで使用することが必要です。

前後比較(床)


3 サイン(標識)はコントラストとセットで考える

サイン(標識)や目印は、効果的に設置することで、自分がいる場所や行きたい場所がどこなのかの手がかりとして有効であることがわかっています。例えば、文字だけでなくピクトグラムを併記することで、複数の手がかりとなり、わかりやすさが向上します。また、サイン(標識)や目印が自然に目に入るように、背後の壁と明確な色のコントラストをつけたり、視線の高さに設置したりすることも重要です。

前後比較(診察室)


前後比較(トイレ)


4 十分な照度と不快な眩しさの軽減

最後の例は、照明です。認知症の有無に関わらず、多くの高齢者はものをよく見えるためには通常よりも照度が必要です。認知症の人ができていなかったことの原因の1つとして、実は環境が暗くよく見えていなかったためだったという研究報告もあります。また、高齢者の目は、照明(自然光や人工光)によるまぶしさの影響を受けやすくなっています。まぶしさは、視覚的な不快感や目を細める原因となり、また、影が物や穴に見えるなどの誤解を招くこともあります。

照度について

 

5 その人が持っている能力を引き出すためのデザイン

認知症に優しいデザインは、自分の身の回りの環境を理解しやすくすることであり、その人が持っている能力を引き出し、利用できるようにすることです。転倒などの危険性を減らしたり、記憶に頼らないで生活できる空間を作り出すだけでなく、自分のペースで物事に取り組める自由や自信が感じられたり、自分らしさを思い出させてくれるような物理的環境を整えていくことです。また、これは認知症の人だけでなく、認知症でない人にとっても過ごしやすい環境を作っていくことにつながり、認知症の人と共に生きる認知症共生社会を創っていくことの1つの取り組みなのです。

その他のデザイン例



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