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コミュニティホスピタルの認知症ケアのアプローチ(認知症に優しいデザイン①)

こんにちはCCH協会の草野です。みなさんは「認知症に優しいデザイン」をご存じでしょうか?コミュニティホスピタルが向き合う重要な課題の一つとして認知症ケアがあります。
水海道さくら病院では、2022年から認知症ケアを強化するためのプロジェクトが始まっています。その中で、デザインからアプローチを行う新たな取り組みについて数回にわたりご紹介させていただきます。


認知症とは?

認知症は、脳の病気やさまざまな原因によって脳の働きが低下し、日常生活や社会生活を送るうえで支障が出てくる状態(くらしの障害)です。私たちの生活のあらゆる面に影響を及ぼします。

出所:「世田谷 認知症とともに生きる みんなでアクションガイド」(世田谷区)


認知症の有病率は加齢とともに増加していくことがわかっています。国の試算では、2020年時点で認知症高齢者の数は約600万人と推定されています。これがどれくらい身近なことかと言いますと、小学生との比較がとてもわかりやすいです。現在全国の小学生の人数は約630万人です。つまり私たちが普段見かけるランドセルを背負った小学生と同じくらいの認知症の人々がすでに私たちの身近な地域に生活していることになります。それほど認知症は身近なことです。

認知症の2つの症状

認知症の症状は大きく2つに分けられます。1つは中心症状と呼ばれる記憶障害や実行機能障害など、認知症によって生じる症状であり、今のところ決定的な治療はありません。一方で、もう1つの周辺症状と呼ばれる症状、例えば興奮、徘徊、睡眠障害など、は必ず出現するものではなく、周囲の環境に対する本人の反応として出現すると考えられています。ここでいう周囲の環境は、身体的環境、心理的環境、社会的環境、物理的環境の大きく4つの環境があります。簡単に言いますと、聴力や視力低下、歩行困難などは身体的環境、不安や孤独、自信喪失などは心理的環境、偏見や無理解、居場所がない、外出先がない、役割がない、関わりやケアの不足などは社会的環境馴、染みのないものや場所や人、過度な情報、騒音などは物理的環境に分けられます。それぞれの環境を認知症の人にとって適切な者にしていくことが重要になってきます。認知症に優しいデザインは、この中でも物理的環境に着目した取り組みになります。ここで言う物理的な環境とは、自宅や高齢者施設などの住宅、病院などの医療施設、役所や図書館などの公共施設、銀行やスーパーなどの商業施設などを指します。また、屋内の環境だけに留まらず、バスや電車、駅などの交通機関や、歩道、公園など地域の屋外環境も含まれます。

出所:「世田谷 認知症とともに生きる みんなでアクションガイド」(世田谷区)


認知症に優しいデザインとは?

認知症の人の中には、例えば、自分がどこにいるか、またどこに向かっているのかわからなくなることがあります。しかし、これは認知症でない人にも日常的に起こることです。例えば、旅行で初めての場所に行った時、道に迷ったり、自分の居場所がどこかわからなくなることがあります。違うのは、そのような場合、認知症でない人の多くは、ネットで調べたり、地図を見たり、人に聞いたりして解決して、目的地に到達することができます。つまり、認知症の有無に関わらず、空間としてわかりにくい場所は、誰にとってもわかりにくいものです。認知症に優しいデザインは、認知症の人の状態の変化を理解し、認知症の人の多くがストレスを感じてしまうポイント、わかりずらく感じるポイント、混乱しやすいポイントを解消もしくは補完するような環境を整えていくことが出発点になります。それは、子供から大人、高齢者までどの年代の人にとっても、健康で活発に生活できるように環境を最適化していくことなのです。

認知症に優しいデザインは、自分の身の回りの環境を理解しやすくすることであり、その人が持っている能力を引き出し、利用できるようにすることです。転倒などの危険性を減らしたり、記憶に頼らないで生活できる空間を作り出すだけでなく、自分のペースで物事に取り組める自由や自信が感じられたり、自分らしさを思い出させてくれるような物理的環境を整えていくことです。

出所:医療法人社団プラタナス ナースケア・リビング世田谷中町


認知症に優しい環境にしていくためには?

では、どのようにしたら物理的な環境を整えていけるのでしょうか?その1つの指針として、イギリスの認知症サービス開発センター(DSDC)が示している原則や項目が大きなヒントとなります。DSDCは、イギリス北部スコットランドに位置するスターリング大学の機関であり、認知症に優しいデザインの分野の知識と経験において国際的なリーダーの1つとみなされているところです。ここでは、これまでの国際的な研究から、認知症の人々に最適な環境デザインを体系的にまとめています。

DSDC
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次回は、具体的な導入事例を交えて、認知症に優しい環境づくりについて説明いたします。


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