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第200号(2022年11月28日) ロシアが対日戦争を準備していた?(訳ではないだろうという話)

 【今週のニュース】 

極東から派遣された義勇部隊が帰還

『TASS』2022年11月27日 
 ウクライナ作戦を支援するためにウラジオストクなど沿海州で編成された義勇部隊「ティーグル(虎)大隊」が特別軍事作戦の実施地域から帰還した。TASSが伝えたコジャミコ沿海州知事の発言を見るに、彼らは太平洋艦隊第155海軍歩兵旅団に編入されて戦ったようだ。
 その第155海軍歩兵旅団はドネツクでの戦闘で凄まじい損害を出し、そのことをコジャミコに直訴したためにさらに苛烈な任務を与えられて崩壊状態に陥ったと言われている。

 してみると、ティーグル大隊の帰還は、「凱旋」と呼べるようなものではなかったのだろう。
 

トルコがウクライナに長距離精密誘導ロケットを供与していた?

『MIDDLE EAST EYE』2022年11月23日
『MIDDLE EAST EYE』が二人の情報筋から得た話として報じたところによると、トルコは今年の初夏にTRLG-230 230mm誘導ロケット「数ダース」を秘密裏にウクライナに供与していた。『MIDDLE EAST EYE』はその具体的な数を50発程度としている。
 TRLG-230の射程は20-70kmで、GPS誘導で定められた座標を精密打撃できるだけでなく、レーザー誘導が可能であるとされている。ということは、現在ウクライナに供与されている米国製のM30/31では不可能な、移動目標(というか座標が頻繁に変わる目標)に対しても実はウクライナは攻撃能力を持っていたということになろう。
 なお、TRLG-230の外観やスペックは以下から閲覧できる。


【インサイト】ロシアが対日戦争を準備していた?(わけではないだろうという話)

幻の「対日限定戦争」

 去年夏頃、ロシアが対日限定戦争をかなり真剣に検討していた、という話がまた注目を集めているようです。「また」というのは、この話は今年春ぐらいに一度持ち上がってきたものの、おそらくはガセであろうということで流されたものであったからです。
 ところが米『NEWS WEEK』が先週、これを今更スクープのようにして取り上げたために(多分、本当にスクープだと思ったのでしょうが)、今度は英語からの逆輸入という形で日本に戻ってきました。

 本件について、詳しくは第174号で一度取り扱ったのですが、この話の出どころとされているのは、いわゆる「FSBレター」です。ロシアの行末を憂う連邦保安庁(FSB)将校が外部の人権団体に託しているという体裁の書簡で、かなり鋭い考察が含まれている一方、どうにも信用し難い話、面白いけれど裏の取れない話も混じった「用法・用量を守って正しく使いましょう」的性質の怪文書といえます。
 そのFSBレターが対日戦争の話を持ち出してきたのはウクライナでの戦争が始まってから3週間ほどが経過した後の3月17日のことでした。その内容はやはり第174号である程度詳しく扱いましたが、ここで改めておさらいしておきましょう。

Письмо источника от 17.03.22г. Не хотел его публиковать. Вообще. Потому что одно из опубликованных ранее писем содержало...

Posted by Vladimir Osechkin on Monday, March 21, 2022

・ロシアは2021年8月に日本との局地戦争を真剣に考慮していた
・2023年に習近平の三期目が決まる頃に米中対立はピークに達する筈であり、ここでは日本を対中戦略により深く引き込む必要がある。そのためには日本に大きな借りを作らせる必要がある。すなわち、米国の力で北方領土を奪還するということである
・また、このとき、アメリカはアフガニスタンで無様な敗北を喫したが、そこで国内の目をアジアに向けさせる必要性が生じた。これによってクレムリンは、米国が北方領土奪還という計画を早めるだろうと判断した
・そこでロシア側は先手を打って日本を攻撃することにした。クレムリンは、米国に協力する国はみんなロシアを攻撃しようとしていると思うのだ
・この時期、ロシアが日本軍によるソ連兵捕虜への生物兵器の人体実験を暴露したことや、北方領土にMi-8MTPR-1電子戦ヘリを配備したことはこれらの動きに関連している
・しかし、電撃的な勝利の確信が得られないために計画は中止された

あまりにも無理筋な「FSBレター」

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