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ダンスダンス

☆あらすじ
以前、金原ひとみ先生が審査委員長を務めていらっしゃった公募にこの作品を応募したのですが、落とされたので、多少内容を変えるなどして此処に掲載。



私の名前は金原ひとみ。
弱冠二十歳で芥川賞を受賞した天才作家である。私の受賞作を見て芥川龍之介は何を思うだろうか。というか私のような者が芥川賞を受賞して良かったのだろうか。
私の職業が正式に作家になった折、なんかそうせねばならなぬような気がして純文学とされる有名どころの作品に一応一通り目を通してみたのだが、悲しい哉どの作品も面白いと思えなかったのだ。
夏目漱石から太宰治まで。
芥川龍之介の作品も例外ではない。
微々たるストレスを常々感じながら、偶に本を閉じ、未読ページの厚さを確認するとまだまだ終わらないのかと溜め息が出た。まるで好きでもない教科の教科書を教師に読まされているような気分だった。

インタビューなどでは建前上、歴史に名を刻んでいる作家の名前を出し、ああだこうだと批評したりリスペクトを口にしたりして文学人を気取っているのだが、本音をいうと………。

ただそれは昔の話だ。
あれからもう多くの月日がながれた。
今読んでみると、もしかするとオモシロイと思えるかもしれない。
まあ今の私に小説を読む気力などないのだが……。

たが、これは今作家を目指している一部の人達にとってある種希望になり得るかもしれない。
『純文学を読んで面白いと思えない己は感性が豊かでないのだ。作家に向いていないのかもしれない。ああ作家は諦めよう』
と悄気ないで欲しい。

元気付けてあげたい。
そんな私だって作家になれたのだ!
諦めるな!

と。

今この時代に夏目漱石のこころを読んでいる若者がいたとしよう。しかし、彼等又は彼女等は十中八九こころをオモシロイと思って読んでいる訳ではない。夏目漱石のこころを読んでいる俺、又は私カッコイイだろう?と自分に酔っているだけなのである。彼等彼女等も本当は知っている。こころよりも朝井リョウ、山田詠美、西加奈子の文の方ががオモシロイ事を。

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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