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モテ期

最近モテ期が到来した。
相手は人間ではない。うちの猫である。



以前書いた通り、最近2番目が夜中に来ることが増えた。
2番目は夜中にわたしの胸の上で眠り、気が済むと自分の寝床 (※占領したわたしのベッド) に帰って行く。尚、わたしは床に敷いた布団で眠る。(「一日の終わりを君と共に。」参照)


そんな2番目、とうとうわたしに抱っこされながら眠るのを日課にすることに決めたらしい。
最近ずっとイラストを描いたり作業をしたりで遅くまで起きていたのだが、深夜1時を過ぎたあたりになると2番目が「…んなおぅ。」とベッドの上から催促するようになった。
まだ眠れぬ、と作業を続けていても「……なーん。うおう。」と定期的に2番目が呼ぶ。お陰で2時前には布団に入るようになった。
わたしの睡眠時間は2番目によって保たれている。…いや、保たれていた。

過去形なのは何故か。
2番目の日課に目を付けた猫が居るからである。

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末猫は日頃から、わたしの部屋の前で2番目の出待ち・入待ちをしている。
お気に入りの段ボール箱に入りながらじっとわたしの部屋の入口からベッドを見上げ、2番目の動きと気配を今か今かと待ち侘びている。
余程大好きなんだなと思っていたが、実際顔を合わせると「ううううう」とドスの効いた声で唸ったり「シャアアアっ」と言ったりもする。最早好きなのか嫌いなのか全くわからない。
末猫はニャンキーなので、ツンデレなだけかも知れない。いつの時代もどの種族でも乙女心は繊細だ。

そんな大好きな2番目が確実に降りてくる機会を末猫が見逃す筈が無かった。
2番目がわたしの手の甲を枕に眠り始めて暫く、わたしもうとうとし始めた辺りで2番目が唸り始める。
何事かと目を覚ませば、枕元に末猫がじっと座って胸の上の2番目を見詰めている。
唸りもせず動きもせず、ただただじいいいいっと2番目を見詰める末猫。
2番目はその末猫の様子に不安を覚えるのか、地獄の底から響くような声で唸り続け、そのうち怒りながらベッドに帰って行く。

尚、その間残念ながらわたしは眠れない。
ずうっと2番目が胸の上で重低音を響かせているのである。眠れるわけがない。


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更に、そんな状況が面白くないと感じている猫が居た。
そう。わたしの大親友の3番目である。

かつてわたしの手から液状フードを直接貰っている末猫を嫉妬心からぶん殴りに来た3番目。
わたしの周りに沢山の猫が居る状況に耐えられる訳が無かった。


3番目は冬はわたしの姿が見える暖かい場所で眠るのだが、夏になると玄関近くで眠る。
気温が程良くお気に入りらしい。

玄関からだと誰の姿も見えないからか、偶に末猫は夜中に寂しくなると「ふにゃあん。んんんん。なぁあん!」と人を呼んだりしていた。
頻度は高くなかった。本当に偶にだった。

ところがつい先日、夜中にわたしの近くに2番目と末猫が居るのを3番目が目撃してしまったのだ。

結果、3番目が毎晩わたしを呼ぶようになった。

2番目が唸り「ううううう…んなっ!!!」と声を上げてベッドに帰る声を聞くと、数分後に玄関から3番目が「ふなぁああん。」と呼ぶ。
呼び声に応えずにいると「ふにゃぁあぁん! んにゃーん。にゃぁああ!」と更に強く呼ぶので、わたしは3番目の元に馳せ参じるのだ。

「どしたの? 寂しくなっちゃったの?」

と声を掛ければ、3番目は嬉しそうな笑顔でころりとお腹を見せてゴロゴロと喉を鳴らす。
そのお腹に顔を埋め、3番目を思いっきり吸いながら「いいこだね、おやすみ。また明日ね」と頭を撫でると3番目はそのまま丸くなって眠る。可愛いことこの上ない。



猫たちは可愛い。とても可愛い。
あの愛らしいふわふわした存在に愛されて、わたしは何と幸せなことか。
しかし、わたしのモテ度と幸福度に反比例して睡眠時間はゴリゴリと削られていく。
幸せだから良いのだが、いかんせん仕事と健康に響く。どうしたものか。


尚、この話を職場でAにしたところ、

「可愛くて良いじゃないですか」

とニコニコと言われた。
そういえばAは動物との暮らしに憧れると言っていた。
もふもふしてて羨ましいです、と言うAに以前2番目と嫉妬した3番目による喧嘩で被った額と腕の傷跡 (Hero or Green-eyed monster?で出来た傷である。) を見せる。傷跡が消え辛い性質なので、未だに肌には赤い線が残っている。
ひええ、と声を上げたAは

「一緒に暮らすって大変なんですねえ。」

と感想を漏らした。

人間同士にせよ、異種間にせよ、愛は重く痛いものなのだ。

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