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折り合いの付け方 〜『異動辞令は音楽隊!』を鑑賞して

久々に映画館に行ってきた。
元々映画鑑賞はそこそこ好きで、「これは!」とセンサーに引っ掛かったものは映画館に観に行くタイプだ。以前は気が向いたときにふらっと映画館に行っていたものだが、このご時世になって全く行けていなかった。

今回何故行ったのか?

友人から8月末までの何でも鑑賞できるチケットを頂いたからである。
折角いただいたのだ、行かぬ手は無い。

そしてチケットを片手にわたしは悩んだ。

ー何を観よう?

あの恐竜映画? -気になるが、今のわたしはスプラッタで色々やられる気がする。
話題の海賊アニメ映画? -気になるが、鑑賞後に沼に嵌まる可能性を考えると恐ろしい。

思案の末、観に行ったのが『異動辞令は音楽隊!』だった。



「なんで俺がドラム奏者に──?」
犯罪捜査一筋30年の鬼刑事が警察署内の〈はぐれ者集団〉にまさかの人事異動!?
映画『異動辞令は音楽隊!』公式HP
(https://gaga.ne.jp/ongakutai/) より


非常に良かった。テンポも良かったし、音も人物もストーリーもアクションも好きなものだった。
なんならタイミングが合えばもう一度観に行きたいくらいである。それくらい気に入ったのだ。


作品テーマは大人向けだと思う。
大人向け? …いや、自分の在り方に悩む人向け、というのが正しいだろうか。

この映画には、自分と周囲にうまく折り合いを付けられず悩む人たちがたくさん出てくるのだ。発現の形は違えども、彼等は皆それぞれ悩み、藻搔いている。

観てるととても心に刺さる。
グッサグサ刺さる。
正直終わる頃には出血多量である。

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途中のとある人物が慟哭するシーンがとても印象に残っている。

自分の信念と正義が一番だと信じているから、周りを大事にすることが出来ずに蔑ろにし続けてしまう。
段々と人は離れていくし、何もかもうまくいかない。

それは観ている我々からすれば自業自得なのだが、しかし本人にはわからないだろう。
自分の『正義』を信じて生きていたのだから、それを今更否定されたら慟哭したくもなるだろう。やり方が間違っているのかもと薄々勘付いていたからこそ余計に悔しかったのだろうと、わたしは受け取った。

わたしがこの映画に引き摺り込まれたのは、そのシーンからだった。
そこから全部持ってかれた。


自分の信念は勿論大事だ。
しかし周りの人間だって、それぞれがそれぞれの信念を持っている。
周囲を優先させ過ぎても自分の心が死んでしまうし、自分を優先させ過ぎても周囲の想いを殺してしまう。
うまくバランスを取りながら生きていくことはとても難しい。


非常に身につまされる。

果たしてわたしは、自分の信念の名の下に暴走していないだろうか?
周囲を蔑ろにせず生きられているだろうか?

答えは出ない。出ないが、どっち付かずでブレブレで右往左往するのもあまり良くないのだろう。それはそれで、映画の「あの人」のように何かを傷付けてしまうだろうから。


わたしはわたしが大切に思っているもの全てを守りたい。
部下も人も居場所もうちの猫たちだって。
わたしを心配してくれる人も大切にしてくれる人も居ることを忘れずに、しっかり生きねばならない。
周囲も自分も全てを大事に丁寧に生きることは、人生の課題だなと思う。

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それぞれが己と向き合い、前に進んで行くところが描かれた良い映画だった。

抱える想いと信念が故にうまく周囲と折り合いが付けられずに苦しむ人物たち。
彼等がどう前に進んでいくのか。

気になった方がいらっしゃれば、是非映画を観てその行く末を確認していただきたい。



【追記】
見出し画像はパンフレットの写真なのだが、パンフレットのデザインが本当に可愛い。
映画鑑賞された方はそちらも是非見ていただきたい。
わたしはパンフレットは問答無用で購入する派なので、勿論入手した。

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