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異世界タクシー・勇者と仲間達を乗せて・第一話(始まりの村と偽勇者)

異世界に迷い込んで一週間、車を走らせていると、小さな村に辿り着く。村の入口に看板には、はじまりの村シーバラと書いてある。タクシー車を邪魔にならない場所に置き、村へと入っていく小さな村に酒場・宿屋・武器屋・教会などがある「おい、酒持ってこい、」酒場から大きい声が聞こえてくる、気になり酒場の中へ入っていくと1人の男が暴れていた、頭に冠・小綺麗な服・黒いマント、腰に剣をぶら下げている。なんだこの男は?そう思っていると男がこっちへ歩いてくると目の前に止まる、で、でけーなぁ、コイツ自分の身長は171,男の身長は184、自分を見下す「おい、オッサン金をくれないか?」男は顔を近づけてくると、口からお酒の臭いが漂う。酒の飲めない戸川・陽介は鼻をつまむ、あまりの臭さに顔を背けると、イラッとした男は服の襟元を掴み殴りかかるが、「おい、やめろよ。イーライ。」後ろの方から鎧を身に着けた男が現れ、肩に触る。「ドラス、チッ、お前顔覚えたからなぁ、覚えてろよ。」酒場から出ていく、イーライ・カゲンの後ろをついてく、ドラスと女性と帽子を被った老人。一人の村人が近寄ってくると「大丈夫か?君」「ありがとうございます。さっきの奴らは。」溜息をつく村人
は「あーーー、あいつらは勇者とその仲間だよ。」
首を傾げる、勇者?仲間?なにを言っていると思っているが真面目に話している姿に、何か違和感を感じた。その時酒場に村人が入ってくると、「大変だぁ、勇者が、勇者が、」息を荒くして話す村人
酒場にいた人たちが外に出る、戸川・陽介も外に出ると、モンスターの集団と勇者と仲間たちが
戦っていた。その光景に愕然する、ここは異世界なんだと知り尻もちをつく。数分後モンスターを倒し終えると、勇者と仲間たちはこちらをふり返ると「しけてんなぁ、もっと強い敵いないのかよ。」剣を鞘に収めるイーライ、「つぎの村に行くかぁ、イーライ。」話している途中、後ろに一匹のモンスターが現れる。「カゲン、モンスターあらわれたぞ。」帽子を被った魔法使いの老人がいうと
イーライ・カゲンは顔を青ざめる。「おい、逃げるそ。こいつには勝てない。」イーライ・カゲンは逃げ出すと他の3人も逃げだ出すが、モンスターの魔法により3人はどこかに飛ばされると、モンスターは消えてしまう。勇者のイーライ・カゲンは地面にへたり込むと数人の村人が集まり、勇者を担いでどこかへ連れて行く。今のは何が起きたんだ?3人はどこへ消えた?突然の出来事に頭が混乱する、とりあえず戸川・陽介は自分の車に戻り。仮眠をしていると、
村人がやってくる。「あの、すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」申し訳無さそうに言うと、何かを察して外に出て話す、戸川・陽介は村人の話を聞くと、今イーライ・カゲンは仲間を無くして
酷く落ち込んでいるらしく、どーにかしてほしいと言ってきた。なんで俺が?あいつを励まさないとならないんだ?断ろうと考えたが、しつこく
言ってくるので、仕方なく村へ戻ると数人の
村人が待っていた。「さぁ、こちらへ。」老婆がイーライ・カゲンのいる部屋へ連れて行くと。イーライ・カゲンはベッドで横になっていると、物音で気付くとすぐに
起き上がる。「なんだお前、勝手に入ってくるな。」溜め息をつくと、「なぁ、なんで助けにいこうとしないんだ?」その言葉に真顔になる。
「なんだと、勇者の俺にそんな口を叩けるなんていい度胸してるじゃねえか?」またイーライ・カゲンは胸を掴もうとしたその時、「なぁ、いい加減に勇者を名乗るのはやめろ。偽勇者がぁ。」
イーライ・カゲンを背負い投げする戸川・陽介、床に倒れるイーライ・カゲンを見下しながら「お前、勇者のそっくりさんだろ?なぁ、知ってんだよ。最近勇者を語って、金を巻き上げてる連中がいるって話。それってお前だよなぁ?いなくなった3人もグルだろ?」その言葉に目が泳ぐイーライ・カゲン、ビンゴ、大正解、観念したのかイーライ・カゲンは「あぁ、そうだよ。俺は勇者じゃない。勇者の弟のイーライ・カゲンで、ホントの勇者はイーライ・クレイだよ。」
勇者の弟?嘘だろ?いきなりの爆弾発言に頭が混乱する。勇者の弟が詐欺まがいのことをしてるなんて、頭を抱える。「なんでそんなことをしたんだよ、イーライ答えろ。」言いにくそうな雰囲気の中
ゆっくりと口を開く、「兄貴が病気になったんだよ。旅立つ2日前に、」怪訝な顔でイーライを見る戸川・陽介「で?それが原因で詐欺まがいなことをしたのか?病気を治すために金が必要だと?」
「そうなんだよ。金が必要なんだよ。」力強く力説するイーライに、戸川・陽介は「だ、そうですよ。」ドアが開くと病気なはずの兄、イーライ・クレイが入って来た。「お前、いい加減にしろ。さっきから適当なこといいやがって。」もう嘘がつけないとわかると、兄にタックルしようとするが華麗にかわすと足を引っかける。勢いよくすっ転び外へ飛び出すと話を聞いていた、村人に取り押さえられる。「この嘘つき野郎。」「金返せ。」周りを数十人の村人に取り囲まれ、罵声を浴びせられる。
「村の皆さん、好きにしてください。」
イーライ・クレイがそう言うと、殴る蹴るの絶叫を聞きながら二人は、宿屋へと向かう。
「陽介ありがとう。弟をようやく懲らしめられたよ。」「いいよ別に、君には助けてもらってばかりだから、これぐらいさせてくれよ。」宿屋に入り、二階の部屋に入ると、椅子に座るクレイと陽介。
水の入ったコップを渡すイーライ・クレイ、渡されたコップをもらうと、水を一気に飲み、コップをテーブルに置く。「なぁ、この世界に来てどれくらい経つんだ?」「もう、一週間ぐらいかな?君に出会ったのは3日前だけど。」異世界に迷い込んで3日頃、右も左分からないこの異世界で、イーライ・クレイに出会った。自分がモンスターに追い回されているところをイーライ・クレイとその仲間に助けてもらい、旅に同行していたが、理由をつけてパーティを抜けた。そこから1人元の世界に戻る方法を探していたが、まさかまた出会うなんて。しかもクレイの弟がいたとは。「なぁ陽介。俺と一緒にまた旅しないか?陽介も元の世界に戻りたいだろ?」イーライ・クレイの優しさに泣いてしまった。「どうした、陽介?なんで泣いているんだ?」「いや、なんでもない。」涙を拭くと考え込む。「今、仲間はどうしてる?」黙り込むイーライ・クレイ、何かがあったのかと思う陽介、「それが、仲間が行方不明なんだ。」
「なんだって、それ本当なのか?」イーライ・クレイの両肩を持つ、目線をそらすイーライ・クレイ。「あぁ、君と別れて数時間後、謎のモンスターが現れて急に飛ばされた。くそ、あの時は何も出来なかった。」深く落ち込ち頭を抱える。その様子を黙って見る陽介。
「クレイ、捜しに行こう。仲間を。」膝をついて
覗き込む。涙でくしゃくしゃになった顔を手で拭くと、「ほんとか?ほんとに旅についてきてくれるのか?」「あぁ、またよろしくなぁ。」立ち上がると頭を下げる。頭を掻く戸川・陽介は照れ臭そうな顔をしていた。「なぁ、お前の弟のことだけど」
そういい出すと、「あいつはここに置いていく。」
コップに入った水を一気に飲み干すと、コップをテーブルに置いて窓際に立つ。「あいつは少し、反省して貰わないとなぁ。窓の外がなにかやら騒がしいので窓を開け覗くと、イーライ・カゲンは今だ、数人の村人に詰め寄られていた。
「や、やめてくれ、頼む。金は返すから、許してくれ、」土下座して許しをこうが、村人達は許さなかった。窓を閉めると、酒場に行って酒を飲み交わし、いろんなことを話した。深夜
酔っ払いながら宿屋に戻ると、すでにイーライ・クレイは寝ていた。自分も部屋で就寝する
翌朝、ニワトリの声と共に朝が始まる。眠い目をこすり、階段を降りると朝食を食べてるイーライ・クレイ「おい、早く食べろよ。」クレイか手招きする。口いっぱいに卵焼きを頬張っている、幸せそうなイーライ・クレイの隣に座ると、店の主人が朝食を
運んでくる。「さぁ、食べてね。」持ってきたプレートにはパンと卵焼きと野菜とフルーツが乗っている。昨日呑んだ酒が身体に残っていたが、残さず食べることが信条の戸川・陽介は、全部胃に流し込むと、両手の掌を合わせ・ごちそう様でしたと心の中で言うと、イーライ・クレイに「そろそろ行くか。」「あぁ、そうだなぁ。」 食器を片付けて外に出ると、村長と村人が集まって、なにやら探してる様子だった。1人の村人が近づいてくると、あの男を見ませんでしたか?あの男?まさか・・・・逃げたのか?二人は顔を合わせる。
「どうする、クレイ。」「もういいよ、逃げたなら今頃モンスターの餌食になっているはずだ、仕方ない諦めよう。」あっさりと諦めたクレイに、自分もこれ以上言うのをやめて、タクシーの元へ歩き始める。イーライ・クレイがトランクに道具や武器を入れると、助手席に乗り込み、戸川・陽介が運転席に座るとバックミラーに人影が映る。「誰だ?そこにいるのは。」声に気づいた人影は車の外に出ると、ダッシュで逃げるが、戸川・陽介はすぐに追いかけ
捕まえる。「痛い、痛い、離せよ。」両手を後ろに回し、イーライ・クレイのところまで連れてくる。
「カゲン、お前何をしてる。」ニヤニヤしながら、「なぁ、頼むよ。俺を連れて行ってくれよ。」
土下座して懇願すると、後ろに黒いローブを着た魔法使いのモンスターが現れる。その顔を見てすぐに気付く。お前はあの時の、モンスターは3人を見ると、「まだ封印してないやつがいるとは、ええい、全員まとめて封印してくれるわ。」魔法使いのモンスターは手に持った杖から黒いエネルギー波を3人の方へ放つ。「危ない、クレイ」戸川・陽介はクレイの首根っこを押さえ、草むらへ投げる。自分も草むらへ隠れるが、カゲンは逃げ遅れ黒いエネルギー波の中へ、タクシーも飲み込まれる。「おい大丈夫か?いない、嘘だろ?」草むらから出て周りを見ても、イーライ・カゲンの姿はない。魔法使いのモンスターは困惑、2人を見ると
再び杖を振り魔法をかけようとしたその時、誰も乗っていないタクシーが、魔法使いのモンスター一直線に走り出し、勢いよくぶつかって行く。
「うぎぁぁぁぁぁ。」モンスターは吹っ飛ばされ
絶叫しながら姿が消えていく。草むらからタクシーを見ていた2人、啞然としながらタクシーへゆっくり近づくと運転席を覗き見て驚く戸川・陽介「誰もいない、なんで動いたんだ?」イーライ・クレイが隣に来ると、「タクシーが動いた?まさか、さっきの魔法は、おいカゲン、カゲン、」
タクシーに呼びかけるイーライ・クレイ、その行動を不思議そうに見ていた。「クレイ、タクシーになんで話しかけてんだ?」深刻そうな顔で戸川・陽介を見ると「さっきの魔法で、カゲンはタクシーに閉じ込められた。肉体と一緒に、」タクシーに閉じ込められた???自分の乗っているタクシーに???信じたくはなかったが、この一週間、この異世界で経験した出来事を思えば納得できたが、今目の前で起きていることは、受け入れることはできなかった。「さっきの魔法で、そんな、じゃあ、さっき無人で動いたのは・・・」タイヤを軽く足で蹴ると、クラクションが数回鳴ると「おい、痛てーーーだろ。」どこから声が聞こえる、タクシーの運転席にある無線機から聞こえてきた。
「おい、聞こえるか?カゲン。」イーライ・クレイは話しかけると、「なぁ、俺はどうなったんだ。今くらい場所に閉じ込められているんだが?」弱々しい今にも消えそうな声で言うイーライ・カゲン、言いにくそうに説明を始める「よく聞け、さっき魔法使いの放った魔法によって、お前は閉じ込められたんだよ。」少し間を置いて笑い出す、イーライ・カゲン「なにを言ってんだよ。そんな訳・・・・・」
そっと鏡をタクシーにうつす、その姿に驚き、後ろにバックするが、鏡を見るためを前に進み、止まるとじっと鏡を見る。
「おい嘘だろ。まさか、さっきの魔法で?あのモンスターは?」互いの顔を見て、ゆっくりと口を開くイーライ・クレイ、「お前が倒したよ。ぶつかって。」
「嘘だろ、俺が倒した?じゃ俺は元に戻れないのか?一生、うわぁぁぁぁ。」ヘッドライトを左右点滅させ、クラクションを鳴らしながら、ぐるぐると円を描きながら回る。止めようと大声で言うが、まったく止まらない。手を出そうにも相手は車、下手に手を出したらこっちが怪我をする。
どうしたいいか悩んでいると「なぁ、陽介。車を傷つけるがいいか?」何か止める方法を思いついたのか、イーライ・クレイは剣を引き抜き構える。
「あぁ、わかった。」戸川・陽介が後ろに下がると
クレイほなにやら呪文を唱え始める。風の精霊よ
我が声に耳を傾け、我に力をあたえたまえ「ウインザー」そう叫び、剣を振ると強い風が暴れているタクシーに憑依したイーライ・カゲンの横っ腹を直撃しながら、そのままの勢いで木にぶつかるとピクリとも動かない。
剣を鞘にしまうと、タクシーの側へ歩いていく。
戸川・陽介はすぐさま、ぶつかった場所を見ると
たいしてへこんでなかったことに、ほっと胸をなでおろすと、いびき声が聞こえてきた。
なんて肝の座った野郎だぁ。隣にいたイーライ・クレイは
呆れていた。心配していた戸川・陽介も呆れていた。「どうする。こいつ置いていくかぁ?」
「そうだなぁ。村に戻って馬を借りてくるかぁ。」
2人は踵を返すと、寝ているイーライ・カゲンを置いて村へ戻るため歩き始める。村へ向かって歩いている途中、騎士の集団が村の方へ歩いていくのを見かける。指を指し、あれは何だと?と戸川・陽介はイーライ・クレイに聞くと「あれは、この辺りを治めている、グラス王の配下の騎士団で名前は、スペクトリアス。」「スペクトリアス?」「先頭にいるのは団長の、アガレスト。」
見るからに、百戦錬磨の騎士の風貌を漂わせていた。アガレストの後ろにいる騎士達も、村の中へ入っていく騎士団、その後ろを歩き村の中へ入ると、騎士団長と村長が話し合っている。
「今すぐ勇者をここに呼んで来い、ここに居ると聞いていたんだが。」アガレストが
村長に詰め寄る、今にも殴りそうな勢いで、
村長は毅然とした態度で「勇者様はここにはいない、残念じゃったなぁ。」村長は飄々とした態度で髭を触りながら言う「このジジイがぁ。勇者はどこに行った。」胸ぐらを掴もうとした瞬間、イーライ・クレイが2人の間に割って入る、「おい、やめろ。」村長と村人達は驚く、旅に出たはずの2人が
ここに居ることに、「この私になんの用だ?要件によっては、」剣を抜く態度を見せる。戸川・陽介は
村長に話を聞いていた、アガレストは視線を勇者から戸川・陽介に目を向ける。何だコイツは?
この異世界にはない服装と、みたことない種族に
興味と嫌悪感が入り交じる、「キサマは何者だ、どこの国の出身だ?」恐る恐る聞いてくるアガレストの言葉に振り返る戸川・陽介。「あっ、俺のことかぁ?俺になんの用。」うざそうに答えると、アガレストは両手で襟元を掴み、軽く上に持ち上げると「キサマは何者だ、どこの国の出身だ、答えろ。」「日本から来たんだよ。日本、」日本?その言葉に顔を歪め手を離す、後ろの騎士達もザワザワと騒ぎ出す。「日本?あいつも日本人だよな。「嘘だろ?やばくないかぁ。」アガレストの後ろにいた
副隊長が目の前に出ると「貴様、あの日本人とグルなのか?」「あの日本人?何を言ってるんだ?」
戸川・陽介の頭にクエスチョンマークが浮かんでいたのと、自分以外の人間が、この異世界に迷い込んでいるという事実に驚きを隠せずにいた。1人じゃないんだと、他にもいたんだと、「おい、お前は黙っていろ。とにかく名前は?」顔を目と鼻の先で喋る。息が直接顔にかかると、鼻を指でつまみ、顔をそむける。生ゴミのような匂いが五感を刺激すると同時に、吐き気を催すと
「戸…….川….陽.. …介….オエ・・・・・」あまりの口の臭さに、食べた物を吐いてしまう。突然の嘔吐に戸川・陽介を投げ飛ばす。「お前、私の大事な鎧に、許さんぞ。」腰にぶら下げた剣を引き抜き
戸川・陽介に突き付けると、「隊長、落ち着いてください。」騎士2人が後ろから羽交い締めにするが
頭に血が登って、冷静な判断が出来なくなったアガレストは剣を下に振るおうとした瞬間、村の門にいた村人が叫ぶ。「ゴブリンだぁーーーー。ゴブリンが来たぞ。」緑の肌をした化け物の集団が村の中へなだれ込んでくる、突然の襲撃に村人達はパニック。蜘蛛の子を散らし四方八方に逃げる村人を追いかけるゴブリン達、リーダーらしきゴブリンと部下数人が、アガレストの方が向かってくる。「殺せ、魔王ヴァーラ様に逆らうものは殺せ。」ボスのゴブリンが命令を下すと、あちらこちらで戦闘が始まる。戸川・陽介は道具置き場に隠れる。そっと覗いてみると勇者とアガレストと騎士達は、ゴブリン達に応戦、クレイは炎の魔法・
ファイアを唱える、ゴブリン数人は炎に包まれると、阿鼻叫喚の声を上げながら倒れる。効果は抜群だった、ファイアはゴブリンにとって弱点であり、ゴブリン達は一瞬たじろぐ。「くそ、魔法を使える奴がいるとは、引くぞ。」リーダーの一声により、ゴブリン達は逃げていく。村の広場は荒らされ、数人の村人は怪我を負っていた。ゴブリンがいなくなったことを確認すると、アガレストとクレイの場所に走って戻る。「なんなんだ、さっきの緑の化け物は?」「あいつらはゴブリンだよ。ここら一帯を縄張りとするモンスター、ただ頭はそんなに良くはないが。」アガレストがクレイに言う。
「お前ら、最近ゴブリン達の勢力が日に日に増している。我々だけではどうにもならない、力を貸してはくれないか?」
アガレストはさっきまでの余裕はなかった、クレイの魔法が効くのがわかった途端、戦力になると確信、我々だけの力だけではゴブリンを一掃できないことを悟ったアガレストは、クレイを仲間にしようとしていた。「わかりました。ゴブリン討伐に参加しましょう。ただし、彼も一緒に参加させてもらえませんか?」アガレストと部下達は腹を抱えて笑い出す。「何を言ってるんだ。さっきの戦いで、道具の物置き場に隠れてる奴を連れて行くとでも?」その言葉にクスクスと笑っている、アガレストの部下達と、俯いている戸川・陽介。
「わかりました。陽介、行こうか。」
「おい、どこへ行く。」
その場から離れようとする2人を
引き留めようとするアガレスト。
「私の友を馬鹿にするなら協力はできない、あなた達だけでやればいい。」
歩こうと一歩を踏み出すと、「わかった。頼むから一緒に来てくれ。」振り返るとクレイの顔はニコッとしていた、戸川・陽介は黙っている。
クレイは口を開く「あのいいですか?もう1つ条件があります。」
「なんだ、条件?言ってみろ。」ニコッとしていた顔が真顔になると「我々は旅をしていくのに、今お金がありません、だから、ゴブリン討伐を手伝う代わりにお金をくれませんか?」
「わかった。幾らほしいんだ?」
右手を広げると「50ガレ欲しい。」
アガレストは苦い顔をする。50ガレは、約6ヶ月働かなくても暮らせるほどのお金であり、アガレストの3ヶ月分の給料に値する、この2人に3ヶ月分の給料が渡るのは納得できないが、「わかった、国王に相談する。それでいいか?」それを聞くと、真顔からニコッと笑い。
「交渉成立。それじゃゴブリン討伐するための
作戦会議をしますか。村長、宿屋借りてもいいですか?」クレイの言うことに、ただただ頷く
クレイとアガレストと部下達は宿屋へと歩いていく。戸川・陽介も宿屋へと歩く。宿屋のドアを開け中へ入ると、すぐに声が聞こえてくる方へ歩き、様子を見てみると、食堂にみんな集まっていた。そこではゴブリンがいる場所の地図が壁に貼られ、あーだこーだ良いながら作戦会議をする。自分は角の部屋に入るとベッドにダイブ、仰向けになり天井を見つめる。異世界にやってきて一週間、どうにかこうにかやってきたが、それも難しい局面に来ていた。コンコンとドア叩くとクレイが部屋に入ってくると、「明日、ゴブリンの住処に行く。危険は覚悟しろよ。」すっと起き上がると、
「なぁ、クレイ、俺が使えそうな武器はあるか?」突然の言葉に驚く。「陽介、何を言ってるんだ?お前は戦わなくていい。」クレイは言うが「いや、自分の身は自分で守る。だから、俺に武器をくれないか?」真剣に言う陽介に、クレイは道具袋から1本の小型ナイフを陽介に渡す。装飾が施されたナイフをじっくり見る。「そのナイフは魔法の効果がある、特別なナイフだ。」「魔法ってなんだ?」「それは使ってからのお楽しみだ。それじゃあ俺は寝る、おやすみ。」ドアをゆっくりと閉めるクレイ。誰もいない廊下を左右見て鍵を締めるとベッドまで歩き、ゆっくりと座り身体を倒すと仰向けになり。さっきもらったナイフをじっと見る。ナイフなんて果物を切るときぐらいしか使わない、ましてやナイフで戦うなんて尚更ない。
だがもう、明日のゴブリン討伐への準備は着々と進んでいた。一人の騎士が馬を走らせ、夜の闇へ消えていく、たぶん増援を要請するためだろ。
さっきの戦いを道具置き場で、ゴブリンの戦いを見ていた戸川・陽介は、あんな化け物と明日は戦わないとならない、もうさっきみたいに隠れる場所もないだろう。戦う決意はあるのに戸川・陽介はまだ踏ん切りがつかない、こんな緊張感と不安が入り交じるのは中高の受験以来、久しぶりだった。なんか変なテンションになりそうな気持ちを
抑え、寝ようと横になるとクラクションの音が聞こえる。まさか!窓を開け外を見ると、タクシーが止まっていた。急いで部屋を出て廊下を走り、階段を降りて外に出ると、騎士達がタクシーの周りを囲んでいた。「ちょっとどいて下さい。おい、
カゲン大丈夫か?」「大丈夫じゃねえよ。ここに来るまで、どんなに大変だったかぁ。」見たこともない異様な光景に、騎士達もアガレストも戸惑う。
「すみませんが、彼もゴブリン討伐に参加してもいいですか?」「おい、ちょっと待て、この鉄の箱はなんだ。説明しろ、」少しキレ気味に言うアガレスト。説明するのが面倒くさいと言わんばかりの
顔で「この鉄の箱はタクシーと言う乗り物です。」
「乗り物だと?こんなに鉄の塊が?」アガレストと騎士達は隅から隅まで調べる。ジロジロと見られるストレスから、クラクションを鳴らして警告
驚いて尻もちをつく。「おい、ジロジロと見んじゃねえよ、こら。」ライトをチカチカと点滅させ威嚇
「おい、今喋ったよな?こいつ。」ニヤニヤしながら戸川・陽介はアガレストにこう言う、「ええ、コイツは強力なモンスターですよ。もしふざけたことしたら・・・保証はしませんよ。」意味深な言葉にその場にいた全員が凍りつく、戸川・陽介とクレイを除いて。クレイがやりすぎだろと言わんばかりの態度でいたが、少しぐらいいいだろう。
「アガレストさん、いいですよね?さっきの話。」
「わかった、わかった、勝手にしろ。」そう言うと
全員部屋へと帰っていく。いなくなると3人は話しを始める。「おい、さっきのあれはなんだ?俺はモンスターじゃねえ。今すぐ謝罪しろ。謝罪。」
腹を抱えて笑う。「いやいや、そういう設定にしとけば、あいつらは迂闊に手を出せないだろ?俺らが有利に立ち回るには、これぐらいしないと。」
なるほどなぁと戸川・陽介を見るクレイ、「あと、ゴブリン討伐ってなんだ?、そんな話聞いてないぞ俺は。」「そりゃ、勝手に決めたからなぁ。」
「お前ら、何も知らないのか?ゴブリン討伐って言っても、ゴブリンだけとは限らない事を。」
そう言って黙り込む。意味深な言葉に慌て始める
「おい、最後の意味はなんだ、ゴブリンだけとは限らないって。」クレイは肩をポンと叩くと、「明日は早い、もう寝よう。」そう言って宿屋へと歩いていく。その後ろ姿をチラッと見て、タクシーをジッと睨む、「もう一度聞く、さっきの話、」
そう言いかけて、「もういいや、悪かった。」
「ん?なんだよ?はっきり言えよ、おい、待てよ。」
背を向けて歩き出す、一週間前の自分なら
諦めていたか、怖気づいて逃げ出していただろう。でも、今は違う。異世界に来て様々な経験をして、少しは成長出来たのかなぁと、自分なりに
思っていたが、それは大きな勘違いと気付くのは
まだ先の話だか、この時の自分は自分なりに、
この異世界を生き抜こうとしていた。、階段を上がろうとした時、食堂で酒を飲むクレイを見かけるが声をかけず部屋に戻る。ベッドに入り、目を閉じる。明日が来なければいい、そう思いながら。

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