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高校の後輩

 私は高校の部活の後輩が、親に楽器を買ってもらったらしい。
国試に受かったら買ってもらうと約束していたそうだ。

 私が高校2年生の春、部室である音楽室で新入生歓迎ムードのなかニコニコしていたとき、彼女はそこへやってきた。
 その時のことをそんなに覚えているわけではないけど、バイオリンに興味を持ってくれていて、楽器の体験をしていたと思う。
第一印象はシャイな子っていう感じだった。

 私も高校で楽器を始めた初心者だった。2つ上の楽器がとても上手な先輩に憧れて入部して、必死に練習をしてどんどん難しい曲を、素敵な曲を弾きたいと思っていた。ちなみに今も思っている。
 でも、部活内ではたくさん練習をしてレベルの高い演奏をするというよりは、練習よりまったりお喋りメインで演奏会の前だけ頑張るという雰囲気があった。
 1度も自主練せずに合わせで譜読みが当たり前のメンバーも多かった。しかも、この部活では楽器だけじゃなく合唱もやっていて、練習時間と先生の取り合いが日常茶飯事。

結果、がっつり練習したい人(私含む)vsまったりお喋りしたい人という対立と、楽器(私含む)vs合唱という対立がある部活になってしまった。

 私はまったりお喋り組を置いて練習室にこもり1人でもくもくと練習をしていた。
 だから、私は部員の誰よりも上達したと思う。
 先生にも常に努力を褒められていた。
 演奏会でソロの曲も演奏できるくらいになった。
 初心者ではじめて、楽器をソロで弾けるようになった人は私が入部してからは私が最初だった。

 今回楽器を買った後輩は、まったりお喋りをしたい人で、かつ合唱をメインでやりたい子だと思っていた。合唱メインの私の同期(私は彼女と微妙に仲違いしていた)と仲良かったし、あまり練習は好きではないのかなと見ていてそう思っていた。

 私が3年生の時、彼女を泣かせた事がある。
実は何で泣いたのかわかっていなくて、彼女を泣かせた事でパニックになって私もその場にいられなくなって逃げた。
あまり詳しくは覚えていないけれど、喧嘩とかではなくてたぶん練習への姿勢の違いとかだった気がする。(違ったらごめんね)
 そんなこともあって、私は彼女に嫌われていると思っていた。そして、私のせいで彼女は楽器も嫌いになってしまったかもしれないとも思った。

そう思ったまま、私は高校を卒業した。

大学1年生の2月、高校の演奏会に、OGの出演者として誘われて、久しぶりに音楽室へ行った。
その時、彼女が楽器でソロの曲を演奏していた。しかも、私がちょこっと弾いていた曲を。

とても驚いたけれど、とても嬉しかった。しかも、彼女は驚くほど上手だった。練習嫌いだと思っていたのに、きっとかなり練習したのだと思う。
 そして、先生から「遠藤が演奏する姿を見て、それに憧れてる後輩もいる」と言ってもらえた。それを聞いたとき、彼女のことだと思った。(自意識過剰かもしれない)
 私が頑張って練習していたことが、後輩の意識を変えたのかもしれないというのはとても嬉しかった。

 少したって高校を卒業した彼女からLINEで楽器を買いたいとの相談を受けた。私も詳しくはないけれど、初心者が買いやすいものを紹介した。
 実はこのLINEが来たときもとても嬉しかった。
 私を頼ってくれたというのが嬉しかった。

そして、それからさらに少し時間がたって、楽器を買ってもらったと報告をうけた。

練習が好きでは無さそうだったのに、そして私の事も好きではないと思っていたのに、
楽器を買ってその報告までしてくれた。

凄く嬉しい。
教えてくれてありがとう。
頼ってくれてありがとう。
今度一緒に演奏させてね。

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