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学生アルバイトによる、TWELITEを用いたワイヤレス通信学習の報告

はじめまして。CASTでアルバイトをしている中村眞子です。私は熊本大学大学院修士2年で、CASTの代表取締役社長でもある中妻先生の研究室に所属しています。

学会時の様子

来年度からは博士後期課程に進学し、小林先生のもとで研究を進めていく予定です。学部4年で中妻研究室に配属になり、そのときからCASTでアルバイトをやらせていただいています。成膜や分極処理、上部電極作成などを行っていました。

今回は、私がアルバイト期間に学んだ無線通信についてや、学びを活かして挑戦したことをお話しさせていただきます。



アルバイトによる学習のきっかけ

CASTでは、非破壊検査測定のための圧電デバイスの開発が行われています。

その中でも、化学プラントや発電プラントなど高温環境下での使用を目的とした圧電デバイスの開発を考えたとき、配線の工夫をする必要があります。


その理由として、圧電膜と電極は何百度という高温にも耐えられますが、一般的に配線は、圧電膜や電極ほどの耐熱性は有しないからです。白金線のような配線を用いると信号の取得は可能ですが、高価なため工業的な利用は現実的ではありません。また、高温に耐えうる配線の固定方法も課題です。

そこで配線の工夫のひとつとして、「磁界共振」を用いた信号の伝送が挙げられます。磁界共振とは、圧電膜上の電極をコイル状にすることです。外部からコイルを近づけると、高温の測定対象に接触することなく信号の取得が可能になります。磁界共振の例のように、非接触での信号の伝送は非破壊測定で応用できます。


そこで私は、CASTでのアルバイト期間に、非接触での信号の伝送を含む無線通信(ワイヤレス通信)について基礎的な内容を学習しました。その導入部分を、分かりやすくまとめたサイトを参考にしながら紹介します。また無線通信を利用した電子工作を行ってハッカソンに挑戦したので、その様子も紹介します。


ワイヤレス通信の学習

まず、電気通信において音声・画像などの信号を遠方に伝送するには普通変調という操作が用いられます。変調は信号の伝送に適した便利な形に変換するための操作です。

例えば、信号を電磁波に乗せて遠方に送る無線通信では、送信側で信号に応じて周波数の高い正弦波振動の「振幅」「周波数」「位相」のいずれか一つを変化させて電磁波として伝送し。受信側でその中から元の信号を取り出すというのが通常の手順となります(田崎三郎他、通信工学、朝倉書店、2017、P41)。ここでは、この変化電磁波について私が学んだことを紹介します。


まず、送信側信号に対して変化させる手順について、信号に応じて搬送波のパラメータ(振幅、周波数など)の一つを変化させる操作を「変調」、変調された搬送波から元の信号を取り出す操作を「復調」といいます。変調の対象が搬送波の「振幅」「周波数」「位相」のいずれかによって変調の種類が異なります。

変調の対象が「振幅」の場合「AM」(amplitude modulation; 振幅変調)、「周波数」の場合「F」(frequency modulation; 周波数変調)、「位相」の場合「P」(phase modulation; 位相変調)といいます。特にAM・FMは、AM放送・FM放送などのラジオの名称でもなじみがあります。


次に電磁波についてです。電磁波は以下の表1のように周波数帯によって呼び名が変わります。上記で取り上げた「無線通信」は、電波による通信のことを指しています。

表1:電磁波の中の電波の位置づけ(出典:Tech Web無線通信|基礎編


また、無線通信に用いられる電波の種類を周波数別に分類すると表2のようになります。上述のAM・FMはそれぞれ「中波」「長短波」に分類されています。人の可聴域はおおよそ20Hz~20kHzであり、普段私たちが会話をするときの音声信号もこの帯域に含まれています。

表2:電波の種類(出典:Tech Web無線通信|基礎編


ですので、音声信号(ここでは、音声の振幅変動をそのまま電圧変動に置き換えた音声信号のスペクトル)をそのままの周波数で電波として伝送するのはむずかしいことが、表2からも分かります(このとき音声信号は、上述の変調により電波に変換して伝送されます)。

この電波が伝わる仕組みは、送信側の高周波電流によって磁界・電界を交互に生じさせながら、受信側のアンテナまで伝わっていく「電磁誘導」を利用したものです。様々な電波が飛び交っている中、特定の周波数に共振して大きな電流を誘起できるものがそれぞれのアンテナとなります。


ハッカソンへの挑戦

無線通信学習の実践として、表2のUHFの一つであるTWELITEというマイコンモジュールを用いた製品の提案に挑戦し、ハッカソンに応募しました。

ハッカソンとは、プログラムの改良を意味するハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語です。一般的には、特定のテーマに対してプログラマーや設計者などソフトウェア開発の関係者がチームを組み、一定期間集中的にプログラムの開発やサービスの考案を行いその成果を競う催しを指します。

今回私が参加したのは、計測自動制御学会システムインテグレーション部門とソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の共催によるハッカソンで、学生を対象に開催されたものです(アイデアソンも同時開催されていました)。


一次審査で提案書を提出し、二次審査では提案書を基にソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社で開発されたSpresense を用いてアイディアを実装し、そのデモンストレーション動画を提出します。

私は同じ熊本大学自然科学教育部の修士1年の学生と2人でチームを結成し、応募しました。私たちのチームは2次審査で落選しまいましたが、今回のアイディアをよりブラッシュアップして来年もまた挑戦できたらと考えています。

ここで、ハッカソンで提案した製品について簡単に紹介します。


私は幼少期にダンススクールに通っていて、大学生になってからもときどきスタジオのレッスンに参加しています。そこでダンスに関連した製品を提案したいと考え、添付ファイルのような内容の製品「自動でシャッター押せるくん」を提案・実装しました。

提案書の一部

↓続きはこちらをご覧ください。


「自動でシャッター押せるくん」の提案背景としては、近年、中学校保健体育の一環として武道・ダンスが必修化され、武道やダンスの経験者は増えており、武道における型やダンスコンテストでは複数人でそろったキレのある動きが求められていることにあります。

本提案では、一連の動きを動画で撮影するのと並行して、全員の動きがとまった瞬間に静止画像を自動的にとるシステムを開発しました。全員の動きが止まったこと判断するためには、加速度センサーを用いました。

踊るメンバー全員に加速度センサーを付けてもらい、静止状態を検知したら加速度センサー側のマイコンからカメラ側のマイコンへ、静止の情報をTWELITEで飛ばします。その後、全員分の静止データが集まった場合には、画像を保存します。

このシステムにより、練習中の動画の巻き戻しや停止の手間が省けて、チーム全体で動きを合わせやすくなり、より効率的な練習が見込まれます。またコンテストや大会などの審査にも、応用が期待されます。


今回のハッカソンへの挑戦で、無線通信の学習を深めることが出来ました。また実装をするうえで、製品がコンパクトになるよう工夫して基板に配線を固定していく前に、以下の動画のようにブレッドボードでつなぎ方の確認するという基本的な実装の手順の大切さを学ぶこともできました。

実装の様子

↓実際に実装した動画はこちらです。


この動画で行っている実装では、右側のブレッドボード上にある加速度センサーで、静止したという信号をTWELITEによって飛ばし、左側のブレッドボード上にあるTWELITEで受信しています。静止の信号を左側のTWELITEで受信すると、LEDが光るというプログラムです。

これにより、TWELITEでの送受信のプログラムが機能するか確認を行いました。また最終的な配線に関しては、はんだ付けの技術の向上を図ることが出来ました(提案書の中に実際に作成した基板の写真を載せているので是非見てみてください!)。


今後も、電子工作の経験を積みながら通信の学習を続けていき、その経験をCASTで取り組まれている非破壊検査の研究開発に役立てられたらなと思っています。




CASTでは引き続き、一緒に働く仲間を募集しています。エンジニア・営業・マーケティングなど多方面で募集中です。CASTで働くことに少しでも興味を持った方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

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