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広告担当者が押さえておくべき基礎知識②どうしてアフィリエイトのイメージは良くないの?

  言葉は聞くけどいまいち説明ができない・・・そんなアフィリエイト広告について前回石谷さんに教えてもらったカラッコ。その仕組みやメリットに興味がわきつつあるようですが、1つ疑問が浮かびます。
  「認知も購買促進もできて、無駄な広告費用が発生しない。使い勝手が良くてお得な広告なのに、どうしてアフィリエイトに良いイメージがないんだろう?」

(カ)前半までのお話を聞いて、アフィリエイト広告良いかも!という気持ちになっているのですが、検索すると「=怪しい」「危ない」と関連キーワードにでてきてぞっとしちゃいました。何かトラブルが起こってイルカくんに怒られるのはぼくなので、クリアにしておきたいです。
(石)広告担当者だけでなく、アフィリエイトと聞いて抵抗感を抱くインターネットユーザーも少なくなさそうです。それでは、アフィリエイトの安全性運用上のポイントというテーマで今回も網羅的にお話しさせていただいます。

アフィリエイト広告の悪質行為とは?

 アフィリエイト広告で起こりがちな違法、悪質行為として代表的なものが虚偽・誇大広告です。根拠もないのに「業界No.1」と謳ったり、健康食品を医薬品と同様の効能効果があると宣伝して薬機法に抵触してしまうケースが発生しています。「消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為」として、今年3月にも消費者庁から注意喚起が行われました。

 クローズアップ現代では「ネット広告の闇」という特集が組まれおり、インターネット広告全体の健全性・信頼性が今まさに問われているような状況ですが、ネットの黎明期から活用されているアフィリエイト広告の虚偽・誇大広告は今に始まったものではありません。過去から現在に到るまで、ユーザーを騙すようなアフィリエイトサイトが手を変え品を変え存在し続けてしまっていることが、「アフィリエイト広告は危ない」というイメージ形成に繋がっていったと考えられます。

原因①成果達成への追求が行き過ぎた行為に

 悪質行為が起きてしまう原因に、アフィリエイト広告のメリットである成果報酬型という取引手法が関係しています。

前回のおさらい
成果(=何に)に対して広告費(=いくら払う)の支払いが発生する取引手法を採用した広告のことをアフィリエイト広告、もしくは成果報酬型広告と呼びます。CPA(商品購入や会員登録などの利益につながる成果)をアフィリエイターが達成した場合にのみ広告費用が発生するため、広告主にとっては費用対効果が高いというメリットがあります。

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 広告主はアフィリエイターと事前合意したCPA(成果)が達成された場合に限り広告費を支払います。これが成果報酬型と呼ばれる所以で、広告主にとっては無駄な費用が発生せず高い費用対効果を望めますが、アフィリエイターの立場からするとCPA(成果)を達成しないと報酬を得ることができない仕組みということになります。
 せっかく手間暇かけて良い記事を書いても、成果に届かなければ一銭にもならない可能性がある。そういった特性から記事で紹介する商品・サービスをユーザーにとって魅力的かつ効果的に見せようとし過ぎた結果、虚偽・誇大広告となってしまうのです。それで成果達成したとしても、嘘の情報を信じてお金を支払ったユーザー、嘘の情報を掲載された広告主、嘘の広告を掲載して信用を失うアフィリエイター、結果的に関係者全員に不幸な結末を招くことになります。
 本当におすすめしたくて書いた記事が法に抵触してしまうケースも中にはありますが、悪意や善意に関係なく、定められたルールの中で成果を出さなければいけないという前提を忘れてはいけません。

原因②第三者視点の功罪

 もう1つが「第三者視点」であるが故の広告管理の難しさです。
 アフィリエイターはメディアという第三者の立場からユーザーへ情報発信を行います。商品のメリットをまとめても良いし、逆に必要があると判断するならデメリットについて記事にまとめても良い。たとえアフィリエイト広告の案件であったとしても、その表現方法はアフィリエイターの判断に委ねることになります。客観性と中立性をメディアが保っているからこそ、ユーザーもアフィリエイターを信頼して商品を購入することができるようになるのです。
 この第三者視点を守り抜くためにも、PR広告と違い、広告主がアフィリエイトの記事に対し一言一句までを指定したり、文面構成を指定することは出来ません。広告主は記事作成に当たっての事前ルール(NG表現等)を定め、そのルールが正しく履行されているかをチェックし、必要に応じて記事修正を依頼すると言う流れになります。
 とは言え、この「事前ルール」というのをあまりに締め付け過ぎてしまうとコンテンツに第三者視点が入る要素が全く無くなってしまうことも。アフィリエイトメディアの表現方法も日々進歩しているので、「事前ルール」と「第三者視点のメリット」、それぞれに応じたルールを用意する必要があります。そのバランスをどの様に取るか、というのが難しい部分です。

広告掲載の判断をするのはアフィリエイター

 ここで「信頼できるアフィリエイターにだけ広告を掲載してもらえば良いのでは?」と思う方もいるでしょうが、それ以前に広告掲載してくれるアフィリエイターを集めることが難しいという事情があります。
 アフィリエイト広告はASPという広告主とアフィリエイターを仲介する会社を通して出稿されるということは前回お話しました。このとき、広告主が広告掲載を依頼するアフィリエイターを選定することは可能ですが、依頼を受けるかどうかを判断するのはアフィリエイターです。成果達成の難易度、報酬額、メディアとの親和性、現在取り組んでいる案件との工数の兼ね合い・・・といったような観点からアフィリエイターは広告を選択していきます。
 当然、影響力のあるアフィリエイターは競合企業と取り合いになるため、広告掲載してもらうために成果報酬の条件設定や取り上げやすい広告内容にするなどの調整が必要です。依頼するアフィリエイターを絞りすぎて1件も掲載されないということはざらにありますし、それ故に露出量のコントロールも難しくなります。

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悪質サイトと接点を持たない対策

 トラブル発生の可能性が1%でも残っているならアフィリエイト広告の活用を見送る、その判断は間違っていません。しかし、無数にあるアフィリエイトサイトの中でも大半は信用できる優良サイトであり、対策を講じることで数少ない悪質サイトとの関わりを断つことができるというのが私の考えです。 
 この対策の中で最も基本的であり重要となるのが、広告掲載してもらうアフィリエイトサイトを選ぶ際のルール作りです。アフィリエイトサイトを選定する際、ブランドを守りながら広告宣伝をしてくれるサイトであるということは大前提。その上で全ての健全なメディアに広告掲載を許可してしまうと、「自社には望ましくないスタンスをとるメディアに掲載されてしまいブランドイメージを損なう」「掲載メディアが多すぎて記事確認が追いつかない」なんてことになってしまう可能性も。
 そうしたことを防ぐために、アフィリエイトサイトが属するジャンルや得意領域、実績などはもちろん、広告主が達成したい目的も考慮しながら、どのようなアフィリエイトサイトに掲載していくかルールを作り込んでいきます。定まったルールの作り方があるわけではなく、ターゲット、広告主の目的、商材の認知度、競合の状況、商材に応じて様々な視点で細かくカスタマイズしていくのが一般的です。
 広告主にとって望ましいメディアに意図した露出を行うためにも、掲載メディアを程よく絞り込むルールを事前に作っておく必要ことが大切です。

アフィリエイターは「外部マーケター」?

 広告主がまず取り組むことは、商品と相性の良いアフィリエイターに広告を掲載してもらい購入なりの成果に繋げることですが、アフィリエイト広告はこの他にも新たな需要を掘り起こすという活用方法もあります。
 アフィリエイターは単に商品メリットを発信するだけではなく、広告主が見落としているターゲットはいないか、どのような訴求方法であればユーザーに響くか、ということを客観的な視点で捉え実行に移す、いわば外部のマーケターでもあるんです。
 アフィリエイターが広告主でも気づかなかった商品の魅力や、新しい訴求方法を提案することも少なくないんですよ。

■事例:カードローン
金融関連情報を発信するアフィリエイターが、とある返済方法のキーワードでサイトに流入したユーザーがカードローンに申し込みを行っていることを発見します。それまでカードローンに興味のあるユーザーは「カードローン 比較」「お金 すぐ借りたい」といった検索すると考えられていたので、アフィリエターにとっても広告主にとっても予想外のキーワードでした。
そこでアフィリエイターはそのキーワードで流入してきたユーザーを返済方法や調整の仕方、それに伴った最適な借入希望額などを解説するコンテンツを作成することで、新規申し込みを獲得するに至ります。カードローンを初めて利用する人の場合、借入可能かどうかと同じくらいに返済方法や利用後のイメージに対し敏感であり、その点に配慮した記事が有効だという発見もありました。結果的には広告主にとって望ましい、滞納しない良質なユーザーであることが多かったことからも、アフィリエイター・広告主双方にとって満足のいく結果を得ることができたのです。

長期的にコツコツと、が基本原則

 アフィリエイト広告はある日を境に大量にメディア掲載され、即日成果がでるような広告ではありません。広告出稿を始めてから3ヶ月くらいまではじっくりと掲載サイトを増やし、競合にメディアを奪われないようコミュニケーションを続けていく。それ以降はサイトの中で目立つ場所に広告をおいてもらったり、商品をプッシュする追加の記事をかいてもらったりなど、成果に直結するような施策を打つことができるようになります。「長期で運用していく広告」という認識を持っておくと、焦らず運用ができるかと思います。

おわりに

 2018年頃に検索エンジンのアルゴリズムが変わり、ユーザーにとって利便性・有用性の高いサイトが検索上位に表示されるようになっています。特にGoogleが定める検索品質評価ガイドラインに登場する「YMYL」※に該当するサイトに適応されるEAT※を基準とした品質評価は非常に厳しく、内容が薄かったり、エビデンスのない情報を発信する全てのWebサイトへの風向きは悪くなりました。

※YMYL:Your Money or Your Life
「将来の幸福、健康、経済的安定、人々の安全に潜在的に影響を与えるページ」を示すGoogleの検索品質評価ガイドラインに登場する言葉。具体的には医療・健康、お金、法律・公共サービス、国際問題や政治などを扱うニュースサイトなど人の生活や人生への影響が大きいジャンルを指す。
※EAT
Google の検索品質評価者向けガイドラインに記載されている、Webサイトやページの品質評価に用いられる評価軸のこと。専門知識(Expertise)、権威(Authoritativeness)、信頼性(Trustworthiness)の頭文字をとった概念であり、EATが高いと評価されたWebサイトやコンテンツが検索上位に表示される傾向にある。

 その他にもアフィリエイトの業界団体が健全化に向けた取り組みを積極的に行っていますが、違法行為に手を染めてまで生活者に接近していく悪質なサイトが淘汰されていないのは冒頭でお話した通りです。
 アフィリエイト広告を活用するにあたり、悪質なメディアと接点をもたないためにいくらでも対策を打つことはできます。しかし、万全にやろうとすればするほど運用・管理の手間がかかるのも事実です。初めてアフィリエイト広告を活用する場合には、知見を持つ代理店などと手を組み、ルール作りやアフィリエイターとの付き合い方、記事チェックの方法などを学ぶことをおすすめしたいです。

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(石)かなりざっくりとアフィリエイト広告について説明しちゃったけど、これで全体感はつかめたかな?
(カ)はい!イメージと違うところがたくさんあって驚きました。実際に使ってみると運用とか、まさにルール作りとかでやること、考えることってもっとたくさんあるんですよね?
(石)はい、専門的だったり細かすぎてしまうので説明しませんでしたが、目的設定、競合調査、ASPの選定、成果報酬の決め方、クリエイティブ制作・・・などなど、フェーズに応じてやるべきことというのは多岐に渡ります。アフィリエイト広告に限ったことではなく、他のWeb広告にも共通することなんですけどね。
(カ)そうしたこともこれから教えてほしいです!
(石)わかりました、カラッコの悩みによっては僕より適任の人がいるかもしれないので、その時になったら紹介します。
(カ)おねがいします!


「そうだったのか!アフィリエイト~広告担当者が押さえておくべき基礎知識編~」おわり

picture:ニッパシヨシミツ