美は不幸を駆逐する
YouTubeチャンネルを新しく作って,そちらにばかりかまけていたら,1か月くらいnote更新を怠っていた。
YouTubeって,映像だけどやっぱりテキストがいる。
台本書いて,動画を撮って,編集して,文字入れして。
ブログは,テキストを書けばいいのに対して,動画編集って,プロセスがさらに3行程増えるのだから,シロウトのわたしの作業量は,例え8分の動画であっても結構な労力なのだ。
でも,楽しい。
で,気づいたのだ。
あの仕事、もう卒業してもいいんでねぇか。
国家資格を取るために「心理の仕事してますよ~」の承認が必要で,始めたあの仕事だけど,もう国家資格(公認心理師)合格して4年経つ。
職場の環境は悪くないし,スタッフもよい。ボーナスも出た。
でも,仕事の内容があまりに理不尽になってきて,わたしがやる意味が全く見出せない。
それ,わたしがやる仕事じゃないですよね。
「臨床心理士の国家資格化があるから,細々でいいから現役で臨床の現場にいなさいね」
昔勤めていた精神科の病院で,ベテラン臨床心理士の先生がわたしに教えてくれた。
その先生は,精神保健福祉士(PSWと言うソーシャルワーカー)の資格も持っていて,PSWの国家資格化が決まった時,現認者扱いでスルッと合格できたという。
わたしもPSWの資格を持っているけど,取得のきっかけは,臨床心理士試験に「そりゃないわ~」な理由で,1度落ちたからだった。
大学院の同期も同様の理由で落ちていたし(二人とももちろん翌年合格),合格足切りラインも開示されない不透明な試験に腹が立って,公明正大な国家資格をとることにしたのだ。
PSW受験の専門学校に1年10か月通って,実習もしたり,スクーリングしたりして,無事に一発合格した。
「試験は初年度が一番通りやすいから,初年度に一発合格。もしくは試験ができて数年の簡単なうちにとっておきなさい」
これは,専門学校の先生たちの教え。
そんなかんじで,わたしは,20代は大学院修士課程の入試に始まり,臨床心理士,PSWと毎年何かの試験を受けていたけれど,すんなり合格できた。
トイレと食事以外はすべて勉強に費やす司法試験と比べたら,こんなの試験の内にも入らないけれど……。
弁護士の夫はよくまぁ,受けていたものだなぁ。
弁護士や医師など士業の人は,それなりに社会的地位(ステイタス)が未だに高い(収入も多い)けど,血のにじむような努力を重ねている。
それは,エンターティメントの世界も同じだ。
というのも,唐突な話題展開で申し訳ないが,こないだ「宝塚歌劇団(ヅカ)」のミュージカルを観てきた話につながる。
2週間前,わたしは,前述した国家資格受験のために始めた仕事があまりにもやっぱりやってられない限界に来たことに気づいてしまった。
わたしは疲れ切って,職場から駅に向かっていた。
朝,仕事場に行く気力がわかず,ズルズルと始業時間を引き延ばしているほど,全身で拒絶していた。
「こんなに毎週,体が緊張してバリバリの人いません。何があった?」
パーソナルトレーナーの先生がわたしのガチガチの体をみて,言った。
うん,もうこれは末期だな。辞めよう。
「ああ,もうやってられない!これは美のチカラを借りるしかない!」
駅構内に貼ってあった,ヅカのポスターを観て,やっぱり思った。
そして,すぐさま,スマホでヅカのチケットを取った。
「あと2週間すればわたしは,何もかも忘れてショービスの美の殿堂に行けるのだ」
ヅカの完成されたショービズの世界に心が飛んだ。
だって,宝塚歌劇団の世界ってよくできているんだもの。
阪急の宝塚駅を降りたら,劇場までは5分でいけるのだけど,宝塚駅に向かう電車から見える風景がもうお城。キャッスル。
舞浜駅に近づくにつれて,シンデレラ城が見えて,ビックサンダーマウンテンが見えて,ワクワク度がMaxになる京葉線みたいものだ。
舞浜駅に直結している,ディズニー管轄のイクスピアリを歩くだけでも,楽しいのと同じ。
(ええ,わたしはディズニー好き。学生時代アルバイトしていた)
ヅカも同じで,花の道という劇場までの道の両側は,レンガ色の中世のお城みたいなこった造りのお店や宝塚ホテルが並ぶ。
劇場の中に入ると,グッズのお店が連なるし,宝塚ホテル直営のカフェもあるし,ジェラードもあるし,歌舞伎座みたいに一日遊べる。
ショウビズの世界って,ほんとよく経済が回るようにできていて,至れり尽くせりのサービスなのだ。
そして,もちろん,トップスターさんが率いる組の演目も凝っている。
1部はミュージカルで,30分の休憩を挟んで,2部のショー。
これは明治座の商業演劇の構成と同じだな。
結婚してすぐに,夫の母からチケットをもらって行った明治座で,「ものまね芸人コロッケの劇」をみたのだけど,感心するぐらいよくできた構成だった。
歌舞伎,明治座,ディズニー,ヅカ。そして,ジャニーが,エンタメの世界で人気なのもよくわかる。
実によく,わたしたち観客を完成された様式美の世界に誘い,酔わしてくれるのだ。
若い頃は,妙齢の女子の先輩たちがこれらのエンタメにハマっているのを「ケッ。作り物の世界に酔うなんてばかみたい」なんて,思っていた。
けれど,歳を重ねた今ならわかる。
やっぱり,様式美は人生に必要だ。
作り物の世界だから安心して酔える。
舞台が終わって,足早に駅までの道を歩きながら,わたしはヅカに誘ってくれた仕事に感謝し,卒業を先方に告げたことに自信を持った。
「美しさは不幸も償う(つぐなう)」
言葉をはしょったけれど,フロイトは言った※。
美しさは不幸を凌駕するのだ。
※フロイトのもとの言葉は,こちらの30秒動画に書きました。宝塚大劇場の雰囲気もお楽しみください。
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