本と精油と想像と。 #01
本を読んでいると、この本ってあの精油のイメージだなとぼんやりと浮かぶときがある。もちろん逆もある。
そして最近、ちょうどぼんやりと浮かんだ本があった。
つい先日本屋大賞を受賞した、我が道を行く中学生・成瀬あかりをさまざまな人の視点から見た『成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈著』だ。
天下を取りにいくだけあって、成瀬さんは少し変わっている。
その言動からして、万人に好かれるわけではないだろう。とくに学生時代は。
行動はエネルギッシュで、だけど行動自体は妙に淡々としている。
どんな変な行動をしていても説明されれば納得してしまいそうになる淡々さだ。
そして我が道を行くわりには人の話や意見にはきちんと耳を傾けている。
やはり天下を取るためには傾聴力も必要なのかと思わされる。
そんな成瀬さんの周りにいる人々は、成瀬さんに振り回されているわりにはなんとなく冷静だ。
それは成瀬さん自身が、少なくとも表面上は、冷静だからだと思う。
目の前にいる人が冷静だと、こちらもあまりテンションを上げられない。
だけど行動がエネルギッシュな成瀬さんに少し影響されるのか、周囲の人々は普段とは違う行動をとったりしてしまう。
だけどそれらの行動をとってしまう理由は、成瀬さんに影響されてテンションが上がったから、というわけではなく、自分の中にある無駄な部分がクリアになって普段とは違う行動をとっているような気がする。
つまり、我がままの成瀬さんに影響されて、周囲もいつもよりほんの少しだけ我がままの行動をとってしまっているように感じた。
本を読み終わって、本を閉じたときに浮かんだのはレモンの精油だった。
レモンの精油は皮膚刺激が強いので、トリートメントに使いやすい精油とは言えない。
だけどそのフレッシュな香りを嗅ぐと、目が覚めるような、クリアな感覚になる。
そしてレモンの精油には抗菌や抗炎症等の成分が含まれているけれど、今回とくに思い浮かんだ成分は促進。
レモンの精油には循環促進や消化促進など、促進に影響を与える成分が含まれている。
刺激は多少強い。
だけどそれによって周囲は目が覚めたり、気づいたりする。
そして何かを促進する。
まさにこの小説の、成瀬さんのイメージにぴったりだ。
そして周囲の人々こそ、成瀬さんが成瀬さんであるために欠かすことが出来ない存在だ。
アロマセラピーでは、香りや効能が強いものは他の精油と掛け合わせることで使用しやすく、また、より魅力的になる。
成瀬さんと周囲の人々の関係はまさにそういったものに思えた。
続刊の『成瀬は信じた道をいく/宮島未奈著』でもそういった場面が多く見られたように思う。
成瀬さんにはこれからもたくさんの人々と出会って交わって、その魅力をたっぷりと活かしてほしいなあと感じた。
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