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母との日々

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2021年3月の記事一覧

初めてのフェリー(3)コーランを買う

初めてのフェリー(3)コーランを買う

ロンドン行きの飛行機は、キャセイパシフィックで、台北と香港、そして地名は忘れてしまったのだが中東のどこかの都市に寄港して、片道20時間以上かかった。帰りもまったく同じ航路を戻ってきた。

中東の寄港地で、アラビア語のコーランを買った記憶がある(今でも手元にあるが、未だに一言も読めない)。聖書とは異なり、アラビア語で書かれたものだけが真正のコーランだと聞いていたので、もしかしたら売っているかもしれな

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初めてのフェリー(4)フィッシュアンドチップス

初めてのフェリー(4)フィッシュアンドチップス

フェリーが出るのは夜中だったから、時間は十分あったが、初めての外国でどこをどう探せばいいのかもわからなかった。そもそも同行者の妹はフィッシュアンドチップスなんてまったく食べたがっていなかった。というより、むしろ嫌がっていた。

実は、ロンドンに着いて初めての食事のとき、よくわからないまま入った簡易食堂のようなレストランで、メニューが理解できず、パイだから良いだろうと思って、キドニーパイを注文すると

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レンジ卵 ~或は、人生は爆発だあ~

レンジ卵 ~或は、人生は爆発だあ~

土曜日の朝、少し遅めに起きて朝食に階下へ降りると、食卓の上に卵がなかった。

年が明けてから、母は、ゆで卵が面倒くさいと言い出して、耐熱カップに卵を割り入れて、レンジで1分間加熱する方式に変えていたが、ご存知のように、生卵はそのまま電子レンジで加熱すると爆発するのである。母は、毎日加熱時間を微妙に変えてなんとかうまくできないものかと工夫していたが、長ければ爆発するし、短いと黄身が生のままで残ってし

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ひとりで幼稚園(3)ドラゴン怒りの金槌

ひとりで幼稚園(3)ドラゴン怒りの金槌

幼稚園に通った記憶はもうほとんど残っていない。というより、かなり早い時期から幼稚園の記憶は断片的であった。なんでなのだろう。今まで考えたこともなかった。小学校以降の記憶も断片的ではあるが、数十秒続く短いエピソードをいくつも覚えているのだけれど。

たとえば、小学校のときの、思い出せる限り古い記憶は、二年生の時に担任の女教師に、左手に金槌を括り付けられたことだ。この記憶は数十秒も続かないが、それでも

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