「多国籍人材雇用で強い組織をつくる」グローバルパワー竹内幸一社長へインタビュー
テーマ「外国籍社員と共に創る強い組織づくりとは」
先進国では当たり前になりつつある「多国籍人材による組織体」。しかし日本企業で取り組めている企業はまだ少ない。そんな外国籍人材雇用に若干遅れをとっている日本において、率先して外国籍人材を雇用し、飛躍する(CareerFly)企業の組織作りの秘訣を伺う。
キーパーソンへインタビューを行い、グローバル時代を生き抜く組織づくりの考え方を深掘りしていく。
株式会社グローバルパワー
代表取締役社長 竹内幸一氏にインタビュー
1974年東京生まれ。群馬県藤岡市育ち。群馬県立富岡高校卒業後、アメリカに渡りサクラメント・シティ・カレッジに留学。カリフォルニア州立大学サクラメント校へトランスファーし、その後中退。1998年、外資ワイン商社へ就職。2003年には大手人材会社フルキャストへ転職。2005年、社内ベンチャーとして外国人の留学生採用支援事業部の設立に参画。4年後には事業部のMBOを経て、グローバルパワー設立に参画。2010年12月代表取締役に就任し、現在に至る。2016年4月より(一社)外国人雇用協議会を発起人の一人として、元内閣府官房参与の堺屋太一氏、A.T. カーニー日本法人代表の梅澤高明氏などと共に設立。昨今では、外国人雇用の第一人者としてテレビ等のコメンテーター出演や各種講演など多数登壇。ガイアの夜明け・WBS・スーパーニュース・Nスタ等の報道番組から、日経・日経MJ・日経ビジネス・日刊工業・ダイヤモンド・各地方新聞等の新聞雑誌にも多数掲載実績あり。
目次
「日本をぐちゃぐちゃにしたい」そんな動機があった
外国籍人材サービスの伸び行く市場で戦う!
ダイバシティ実現は”理念と将来の市場”を描き推進する
人の役に立つ”利他の想い”を持ち旅立つ社員を見送る
遠慮なし伸びしろを感じる外国籍社員がジョインするチーム
「日本をぐちゃぐちゃにしたい」そんな動機があった
Career Fly大野理恵(以下、大野):人材派遣会社の先輩であり、外国籍人材サービス会社の経営者先輩の竹内さんにこのようにインタビューさせていただけるとは大変光栄です。色々なところでご講演されていますので、本日はできる限りまだ表にでていないことを訊けたらと思っています。
グローバルパワー 代表取締役竹内幸一氏(以下、竹内氏):はい、何でもお答えします!
大野:竹内さんは外国籍人材サービス業に携わり約15年経っています。そもそも、外国籍人材サービスを始めたのはいつですか?
竹内氏:外国籍人材サービスを始めようと決めたのは、27歳のときです。
大野:貴社で外国籍社員を採用したのはいつでしたか?
竹内氏:2005年に初めて外国籍社員を雇用しました。
外国籍人材サービス事業を始めるために、自社に外国籍社員がいた方が良いと判断しました。
当時、国内の留学生を対象にフロムAナビへ媒体を出しました。たった、一週間で100名ほどの応募があり、東大早大など選りすぐりの大学から集まってきました。留学生に対するオフィスアルバイト求人のない時代ですから、とにかく超がつくほどの優秀層をアルバイト採用することができました。
その中から新卒採用した社員もおり、現在も活躍しています。
大野:累計何カ国となっているのでしょうか。
竹内氏:派遣事業の登録スタッフも合わせると100カ国以上です。アジアからアフリカまで世界各国から弊社に参画してもらっています。
大野:どのようなビジョンをもとに現事業を始めたのですか?
竹内氏:「日本社会をぐちゃぐちゃにしたい」。この想いのもとスタートしました。
私はアメリカで大学時代を過ごしました。その時、日本とアメリカそれぞれの良い点と悪い点を感じていました。日本は安心安全で緩い。アメリカはエキサイティングで面白い、でも危険。そこで思いついたのは、日本が安心安全で且つ”面白い”国になるとより魅力的になるはず、と。そのために、ないものを他国から学び取っていく必要があります。
そのために、ダイバーシティを実現させていくこと。それを通じて、意外性と多様性のある日本を作り出していくことが私の使命であると考え、現事業を推進しています。
意外性と多様性がない日本社会は、閉塞感があり何より”つまらない”。
日本をぐちゃぐちゃにして、面白味のある社会を作っていきたいです。
外国籍人材サービスの伸び行く市場で戦う!
大野:アメリカの大学へ行かれたりなど海外ご経験をされています。現事業を始める原点とは一体何だったのでしょうか?
竹内氏:十代のとき、身近に外国籍の方がおり、深く交流していました。それを機に、高校のときに短期留学をし、大学はアメリカへ進学するなどのきっかけになりました。
大野:やはり若いときに外国籍の方々と交流することは、海外に目を向ける後押しとなるのですね。
竹内氏:そうですね。異文化交流を国内にいながら体験できたことは、刺激的で楽しかったです。
一方、弊事業を始めるもう一つの理由は、「市場ニーズが拡大していく」ことがあげられます。
私がこのビジネスを始めた15年前と比べると、外国籍人材サービス市場は1000倍以上になっていると思います。
伸び行く市場で勝負をしていくことは、何より魅力的です。頭打ちである、あるいは今後伸び悩むであろう市場の中でいくら頑張ったとしても限界が出てきます。市場が伸びる=ニーズがある、そうすれば誰かの役に立てる、ことだと考えます。
また、競争優位性も追求できる、そう思っていました。
外国籍人材採用に必要なことは、偏見を取り除くこと。残念ながら、これがなくならない限り、受入が進みません。日本人の私たちが無意識に思っている”外国人”に対する考え、これを変えていかないといけない。正直、高い壁です。ただ、そこに競争優位性を見出せれば、強く面白いサービスになるはずと確信していました。
大野:受入側の価値観や考えが変わることで、市場拡大のスピードが格段に上がるでしょうね。ただ、人の価値観を変えることは容易でないです。ここはどのようにお考えですか?
竹内氏:確かに外国籍の方々と交わるプロセスは、面倒に感じることもあるかもしれません。でも、裏を返せば”面白く刺激的”である、またその先に見出せるポジティブなことが必ずあります。
本音を言うと、私自身外国籍社員を受け入れ始めた時期に、「とても大変だな」と思う時期もありました。今でも記憶に残っていることがあります。
ある外国籍社員に「頑張れ」と投げかけたところ、「頑張れ、という言葉はマネジメントとして無責任極まりない」と言われました。いつまでに、何を、どのような状態にすれば良いかを具体的に伝えることこそ、社長のいうべき言葉であると。この時、若干面倒だなと思ってしまった自分がいました。
それは、自分自身が社会人初めの頃に受けてきたマネジメントスタイルとは異なることが原因です。上司先輩に言われたことは絶対、残業上等の企業文化が当たり前の環境に身を置いていたため、この投げかけに対してあまりポジティブに思えなかったわけです。
ただ、その時、それではいけないと思い、自分自身のマネジメントスタイルを変えていく工夫をし始めました。
多様性ある環境を生み出そうと思うと、これまでのやり方や考えを変える必要があります。多くの企業はそれを面倒だと思うでしょう。ただ、それを乗り越えた先に楽しさや良い成果が見出せます。多様性を生み出す先に、面白さや楽しさがあると信じて取り組むのも一つだと思います。
ダイバシティ実現は”理念と将来の市場”を描き推進する
大野:2021年の外国人活躍支援サミットでの梅澤さんのコメントも痛快でした(笑)!
竹内氏:はい(笑)。
「多様性が受入られない企業はそのまま滅びていってください」と一言おっしゃっていました。私がファシリテーターとして、「ダイバシティ実現に躊躇している企業へアドバイスお願いします」と投げかけたところ、この一言でした。進行している立場として、もう少し広げてくださると思っていたのですが、シンプルなメッセージでしたね。
大野:大変にわかりやすく明確なお考えで、私としては一番印象に残っています。
ちなみに竹内さんのアドバイスは何ですか?
竹内氏:どんな企業も外国籍人材採用は必ずできる、と思っています。
理由は、過去を振り返ると、日本企業には似たような実績があるからです。
例えば、”女性活躍推進”です。
これまで、同質の人材が集まり成り立っていた組織のなかで女性に活躍してもらおうとすると、制度の見直しからマネジメントスタイルまで見直す必要がありました。見直しの中で一番の壁となることは、受入側の意識の変容です。女性に対して、ジェンダーを意識せず平等なマネジメントができるか、特別扱いではなく一人一人の特性に合わせた対応ができるか。様々な課題がありましたが、そこに対して意識も言動もアジャストしてきたわけです。
この一連のプロセスを体験している。これを反復することで、外国籍人材採用も同様に上手くいくのではないかと考えています。
大野:確かに!女性の方も外国籍の方も、企業において少なからずマイノリティ人材という共通項があります。女性活躍推進の経験を重ねるとイメージしやすいかもしれませんね。
竹内氏:今では、「寿退社」なんて死語ですよね。20年前は当たり前に使っていました。現代では女性も当たり前に働きます。夫婦の場合、共働きが当たり前になってきている。そう考えると、少し時間はかかるかもしれませんが、外国籍社員とともに働くことが普通になってくるでしょう。
大野:どのようにすればダイバシティは実現はできますか?
竹内氏:とにかく、諦めないこと!これにつきます。
ダイバシティ組織形成は、一朝一夕で達成できません。トライ&エラーを繰り返します。
なぜならば、違いある人材が集まり一つになっていくからです。女性活躍推進の文脈を振り返っても、そこにはジェンダーという違いがあります。外国籍人材ですと、国籍も価値観も違います。違いが混じり合い良い方向へ行くこともあれば、失敗してしまうこともあります。失敗したときに、これまでと同じような似たもの人材を入れるのは容易いでしょう。ただ、それだと今の時代通用しません。市場ニーズが多様化しているため、サービス提供側もダイバシティチームで臨むことで初めて、多様性あるニーズに応えていくことができます。
「理念と将来の市場を考えて」取り組んでいくことが成功へのロードマップです。
大野:長期的視野を持ち、理想のダイバシティ組織とは何かの理想を考えなくてはなりませんね。貴社のダイバシティ組織としての現在地は?
竹内氏:いまだトライ&エラーを繰り返していますが、ある程度のことは乗り越えてきました。
私自身、外国籍の〇〇さんと、社員に対して思っていない。国籍関係なく、一人の社員として接しています。多国籍社員が入り混じるグローバルパワーのチームづくりが良いかたちで進んでいます。これからも進化し続けます。
人の役に立つ”利他の想い”を持ち旅立つ社員を見送る
大野:チーム作りの視点で考えると、一番タフなことって何でしたか?
竹内氏:やはり退職するときです。誰が辞めても心が痛いし、自分にとってタフなことです。
外国籍社員の方々のキャリアに対する考えとして、「キャリアアップ」「チャレンジ思考」が強いです。決して安定思考ではない。一社に長く留まる価値観を持っていることを、もちろん理解しているものの、辞めてしまうのはとても残念に思います。
そんな時、利他の心を持ち、辞める社員の成長と今後の活躍を願って送り出す、これにつきます。彼ら彼女らが、次のステージで誰かの役に立つことは私の喜びでもあります。
大野:そんなふうに気持ちよく送り出せる竹内さんが、マネジメントで工夫していることは?
竹内氏:社員一人ひとりの誕生日と血液型は必ず覚えています。誕生日に一言、「おめでとう」と伝えることを欠かしません。また、常日頃社員の変化を察知して伝えることを徹底してます。髪型一つとってもです。「髪型変えたね!」と伝えたりしています。
大野:とてもまめで、細やか。社員の方も嬉しいでしょうね。
話を戻すと、辞めてしまう問題、多くの企業の頭の中に、「外国籍人材はすぐ辞める」そんな意識があると思います。その点、どのようにお考えですか?
竹内氏:そのように他社さんから言われたときに、「え?ほんとうにそうですか?」と返すようにしています。そして、日本国籍の方と変わりないと伝えています。
恐らく、外国籍社員の方が辞めてしまう企業では日本国籍社員も辞めてしまっているはず。
ポイントは、「会社として、長く働き続けてもらうことが本当に良いことなのか?」それを今一度考えることです。何が一番大事なのか、そこを追求した方が良いです。
長く勤めていてもパフォーマンスを出さず居続けることは、果たして意味があるのか?短い期間でも、集中的に企業へ貢献する社員を雇用した方が良い影響なのでは?などです。
もちろん経営視点で考えると、できるだけ長く自社で活躍してもらいたい気持ちは十分に理解できます。
先述しましたが、外国籍社員のキャリアに対する考え方は日本国籍社員と異なります。受入時に確認すべきことは、上述した期間の考え方も然り、雇用の考え方についても明確にすることです。メンバーシップ型、あるいはジョブ型雇用のどちらが自社に適しているのか、という点です。
大野:多様な人材を受け入れる企業さんは特に再定義した方が良いですね。
竹内氏:その通りです。メンバーシップ型社員がよりフィットする社風であれば、その傾向が強い外国籍人材を受け入れた方が良いです。逆も然り。どちらの考え方がより合うか企業がまず理解していないといけません。
遠慮なし伸びしろを感じる外国籍社員がジョインするチーム
大野:ちなみに貴社採用においては、何を大切にしていますか?どのような点を見て採用しているのでしょうか。
竹内氏:「遠慮しない人」を選ぶことです。 配慮はするけど、遠慮はしない。それができる、できそうな社員を採用しています。何か発言するときも、”すいません”を前置きに使わないよう伝えます。”有難うございます”と言いなさいと。意見はどんどん言うこと、すいませんと言う時間すらもったいないですから。
大野:どうやって見極めるのでしょうか?
竹内氏:自分を卑下する「ヒゲマン」は、対話の中でそのような言葉を使う傾向にあります。ですので、その言動を面接中に感じ取ったら少しマイナスな評価になってしまいます。
大野:貴社の前向きで建設的にコミュニケーションが取れる風通し良い社風が容易に想像できます。素晴らしい組織を作り上げている竹内さんにとって、ずばり「外国籍社員雇用で強い組織をつくる」バリューとは?
竹内氏:イノベーションは、同一化された組織で生まれない。
だから、意外性と多様性溢れるチームを作り上げること。そうしないと、全てのスピードが上がらない。未だ大企業において、新規プロジェクトのために綿密なプランをたて、それの稟議を通し、却下され、振り出しに戻り1-2年経過してしまう、こんなことがザラにあると思います。弊社でも、早期段階で意思決定し、できるだけ多くのDoを重ねていくこと。これくらいのスピード感でやらないといけません。
もう一つは、国籍に拘る方がすごく損です。1億人の中から選ぶのか、74億人の中から選ぶのか、火を見るより明らかです。国籍に関係なく、その人たちの持つ専門性を評価して採用するべきです。自社採用において、何を大切にしているか、それを今一度日本企業は考えた方が良いです。国籍という条件は本当に必要不可欠なのか?日本語能力も本当に必要な条件か?などです。
大野:おっしゃる通りです。最後に、外国籍人材雇用で強いチームをつくることを目指す方々へメッセージをお願いします!
竹内氏:「意外性を楽しんでほしい!」
ダイバシティ組織だからこそ、意外性が生まれます。
ゲームを好きでよくやっているのですが、全て決まったキャラクターや設定でずっと続けていても楽しくない。それは想定したことしか起こらないからです。これまでのキャラや設定を変えることで、予期していないことが起こる。そして、ステージも上がり今まで見たことのない景色が広がるわけです。どのような結末となるか予測はできないが、それを楽しむくらいの気持ちでぜひチャレンジしてみてほしいです!
大野:意外性を生み出すにも、多国籍チームを組成することは良い方法になりますね。とても詳細にお話をいただき有り難うございました!たけさんのパッションをたくさん感じとることができました。
撮影中ユニークな竹内さんに仕掛けられ、
笑かされてしまった!豚鼻作戦です。笑
*この記事は、大野の個人アカウント(https://note.com/careerfly_rie/n/n79cd6d445eee)で過去書かれた記事をリメイクしてお届けしています。
<キャリアフライ株式会社>
「雇用ボーダレス」社会実現を目指す人材サービスエージェンシー。
https://career-fly.com/aboutus/
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