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「海外で孤独を感じる」という結果に納得。駐在帯同5年目。私たち駐在帯同者の実体験を語ります!

外務省が公表した「海外における邦人の孤独・孤立に関する実態把握のための調査」を読み、心が動いたので記事に書きたいと思いました。

私は、夫の海外駐在に帯同して早5年になろうとしている駐在帯同者、いわゆる”駐妻”です。シンガポールに3年、そのままアメリカにスライドしてもうすぐ2年が経つところです。

本調査につき、NHK等のニュースで報道されていたのが、「海外の日本人「孤独を感じる」45% 」でした。私はそれを見た瞬間、「そりゃそうでしょ」と思いました。「海外に出て、孤独を感じない日本人っているの?!と。

ちょうど今は夏休みシーズン目前で、周りでも日本に一時帰国される方も多く、自分自身もこの夏の日本への一時帰国を楽しみにしているタイミングなので、余計おセンチな気持ちになっているのかもしれません。

当地にお友達はいるけれど、長年仲良くしてきた日本の友達に生身で会えないのは、やはり、寂しいものです。そういう寂しいと思う気持ちも、普段の生活では考えないようにしている自分は、正直いると思います。LINEのやり取りだけで全ては満たされませんから。

さて、駐在帯同者の私の目線から、本調査で気になったところをピックアップしてみたいと思います。まずは調査内容のサマリーからです。

1. 調査の内容(対象者、質問項目)


調査名は、「海外での滞在や生活等に関する基礎調査 令和5年度 外務省 海外邦人安全課」です。

調査の対象は、海外に3ヶ月以上在留している、日本国籍を有する者です。

私も、この調査の対象者の条件を満たします。

質問項目は、以下の通り。

  • あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか。

  • あなたは、自分には人とのつきあいがないと感じることがありますか。

  • あなたは、自分は取り残されていると感じることがありますか。

  • あなたは、自分は他の人たちから孤立していると感じることがありますか。

この質問回答において、海外で暮らす邦人で、孤独感がある(「しばしばある・常にある」、「時々ある」、「たまにある」を合わせたものを孤独感とする)人の割合は、在留邦人の孤独感を上回ると報告しています。

続いて、本調査で気になった個別項目をピックアップします。

2. 現地語の能力別の孤独感

報告書の「(20) 現地語の能力別 孤独感」では、

  • 孤独感が最も高いのは、現地語で片言での意思疎通が可能な層

  • 孤独感が最も低いのは、現地語が流ちょうな層

とのこと。

海外で暮らすなかでの孤独感には、現地語が喋れるかどうかが関係しているということです。

これについては、「確かに。」と思います。駐在帯同のモヤモヤを解消すべく、色々動きたいと思われている方でも、なかなか身動きがとれない理由の一つに言葉のハードルを挙げられる方は多い印象です。

3. 収入のあるなし別の孤独感(ドキっ!駐妻の多くがこれに該当!)

報告書の「(24) 現在の仕事別 孤独感」では、

  • 孤独感が最も高いのは、収入をともなう仕事をしていない(仕事を探している)

と示しています。

この項目については、ドキっとしました。なぜなら、我々駐在帯同者の一番センシティブなところを突いているポイントだと思ったからです。

日本でバリバリ仕事をしていた人が、突然、キャリアが中断される感覚に陥るあの感じ

日本では夫婦共働きで、自分も家計に大貢献してきた自負がある中で、夫の収入だけに頼る心細さやるせなさ社会に居場所がなくなった気がする喪失感。自分の職業アイデンティティの喪失感

そしてそれらの想いをぶつける先はなく決めたのは自分だからと言い聞かせる。夫は駐在員として忙しそうだし、仕事の邪魔をしてはいけない、愚痴ってはいけないとグッと我慢するも、それが溜まると耐えきれず爆発。夫婦喧嘩も増えたような。

同じような想いを抱えた駐妻友達を見つけて喜ぶのも一瞬、結局は傷の舐め合いで、前に進めずにいる自分に自己嫌悪

仕事を探そうにも、そもそも仕事ができない環境にいることもあるし、就職するまでには相応に時間はかかる

こんな状況で、孤独を感じないはずはないんです。

本調査では、この質問項目が一番ドキッとしました。

3. 居住環境別の孤独感

報告書の、「(26) 居住環境別 孤独感」では、

  • 孤独感が最も高いのは、農村・漁村地域

  • 孤独感が最も低いのは、都市圏内

と報告されています。

これも「確かに。」と思いました。なぜなら、これは私の肌感覚でしかないのですが、シンガポールにいた時と、アメリカに来てからの自分の孤独感は種類が違うのです。

シンガポールは国もコンパクトですし、公共交通機関も便利なので、島内に住む友達であれば、すぐに会いに行くことができましたし、何かイベントがあっても、何の障壁もなく行くことができました。

一方のアメリカ生活は、なんせ広い!車がないと生活できない生活で、”近所”に住んでいる友達に会いに行くにしても、車で30分、1時間の移動は当たり前ですし、何か行きたいイベントがあっても、移動距離数十キロと駐車場と周囲の治安と…をいちいち気にしなければならず、私は「よっこらしょ」の意識が拭えません。それに、運転に苦手意識のある日本人女性は多いですし、それらが、いつでも好きな時に、自分が好きなことを自由にできる感覚を奪われているようで、孤独感に繋がっている気がするのです。

日本、特に東京のような超都会の暮らしと比べちゃダメでしょ、『郷に入っては郷に従え』でしょ、と言われてしまうかもしれません。それは仰る通りなのですが、だからといって、自分の気持ちを無視する必要なないと思うのです。寂しいものは寂しいのですから。

4. 経済的な暮らし向き別の孤独感

報告書の、(29) 経済的な暮らし向き別 孤独感では、

孤独感が最も高いのは、暮らし向きが大変苦しい
孤独感が最も低いのは、大変ゆとりがある

と報告しています。

要は、経済的に余裕があるかないかが、孤独感に影響を与えていると。経済的に苦しいと孤独感は高くなる、と。

これも駐妻として心当たりがあります!(声を大にして!)

確かに、住居手当など、ありがたい制度はあります。しかし、我が家の場合、現地での生活に余裕があるほどの余分なお給料は出ていません!

これは会社の考え方で、いつかは日本に戻るのだし、現地通貨が余るよりも、日本円でもらいたいでしょ、というご配慮があるのも重々承知です。

遥か昔の、駐在員はおいしい思いをしているという幻想は、もはや現代社会ではないのではないでしょうか。

やりたいことがあっても、行きたいところがあっても、経済的なことを考えると、躊躇ったり、一瞬立ち止まる自分がいるのも事実です。そうすると、なんかだ自分の選択肢を奪われたような自由が奪われたような、そんな気になるのです。

それもあって、自分も働きたいと思う駐在帯同者も多いと思いますが、それも簡単なことではありません。そうした側面もあって、孤独感は募っていくのでしょう。このように、孤独感と、経済的な関係も見逃せないと思います。

さいごに

私は、本調査をきっかけに、海外で暮らす自分が孤独であると認めることができた気がします。なんとなく感じていたことでしたが、本調査を見て、「だよねー」という確信に変わりました。

「海外に行くことを選んだのは自分でしょ」と言われてしまえばそれまでなのですが、「そうはいっても」の世界があるのも事実です。

今回私は駐在帯同者という立場から本記事を書きましたが、調査対象者の中には、それぞれのお立場による、それぞれの背景があります。国際結婚をされている方、お子様の教育のために自力移住をされた方、医療や治療目的で当地に残る方、私の周りにも色々な方がいらっしゃいます。それらの方々にとって、本記事の内容がお心を害すものであったら申し訳ありません。

ただ、同じく海外に暮らす日本人同士、日本を想う気持ちは同じだと思いますし、海外で暮らすことが日本の生活と比べて大変な点があるところは同じだと思っています。そのような私たちを想い、今回外務省さんが調査をして下さって、純粋に嬉しく思いますし、私たちのことを忘れないでいてくれて、スポットライトを当てて下さってありがとうございますとお伝えしたいです。

以前、「駐在帯同5年目。私の心のモヤモヤを乗り越えてきた方法とは?」という記事をNOTEで書きました。読んで下さった皆様、ありがとうございました。「いいね」も頂き、ありがとうございます。私と同じような気持ちを抱えた方々の存在を感じて嬉しかったですし、世界中のどこかにいらっしゃるどなたかと繋がることができて、なんだか救われた感覚でした。この場を借りて、御礼申し上げるとともに、心から私たちにエールを送りたいと思います!

お付き合い頂き、ありがとうございました!

「海外における邦人の孤独・孤立に関する実態把握のための調査」はこちら↓


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