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認知症の捉え方~行動・症状とその原因という分類から~

今回の投稿は、これまでの認知症についての連載のまとめです。

これまで、認知症とそれに関連する知識を並べてきました。
それらを「行動・状態」と「その行動・状態の原因」という分類から整理して、認知症を捉えてみるということが今回の投稿の目的です。

それでは早速いきますよ!!

中核症状について

記憶障害

認知症になると記憶障害が起こります。
アルツハイマー型認知症は特に近時記憶(数秒、数分前の記憶)の保持が難しくなります。
ついさっきご飯を食べたのに、「ごはんはまだ?」と繰り返し質問するという姿は、介護の仕事をしているとよく見受けられます。

また、認知症の物忘れと、年相応の物忘れは違うという話もしました。
年相応の物忘れであれば、「ご飯を食べたことは自体は覚えているけど詳細なメニューまでは覚えていない。」「ど忘れしてしまった!」という状態です。

しかし、認知症の物忘れは「ご飯を食べた」という数分前の出来事を記憶することが出来なくなってしまう、質問をしたことも忘れてしまうという状態なので、繰り返し同じ質問をするという行動に。

記憶障害についてはこちらの投稿を


認知機能の障害

認知症になると、記憶の障害だけではなく認知機能もうまく働かなくなってしまいます。
認知機能とは、知覚から判断に至る全ての情報処理の過程のことをさしています。

それに障害が出るということは、知覚から思考、判断力に至る広範囲の複雑な能力が働かなくなってしまうということであり、以下の例ような状態になってしまいます。

・時間や季節、場所の見当がつかなくなってしまい、ここはどこなのか?と不安そうに聞く。(見当識障害
・言葉を理解することや、流ちょうに言葉を発することができなくなってしまう。(失語
・それまで手際よくできていた料理などの作業が途中で止まってしまう、出来なくなってしまう。(実行機能障害

などといった状態、行動になってしまいます。

認知機能の障害についてはこちらの投稿を


中核症状の原因

この記憶障害と、認知機能の障害が起こってしまう原因は、病気(アルツハイマー病、レビー小体病等)の影響により脳の一部が萎縮、変性したり、血の巡りが悪くなってしまうためです。

この脳の萎縮などが原因で、脳の機能がストップすること等によって引き起こされる症状、行動のことを総称して中核症状と呼んでいます。
この中核症状は、程度や種類の差はあれど認知症の方にほぼ共通して現れる症状です。


BPSD(行動・心理症状)について

徘徊

目的も意味もなく歩き回ること。と辞書にはあります。

しかし、認知症の方は何か目的や理由があって徘徊していると考えられています。
長年住んでいた家に帰ろうとする、家族のご飯を作らないといけないから帰るといった徘徊の行動・言動は、例えば今自分のいる場所が落ち着かない、自分の居場所ではないと感じている可能性があると捉えます。


攻撃的行動

不快なことを他人からされた時や、かつてはできていたことが、できなくなってしまっている自分自身への焦りや苛立ちなどにより、言葉による攻撃や暴力に出てしまう場合があります。

頭で分かっていても、実際に暴言を言われたりしたら介護職員といえども萎縮しちゃいます…。


妄想

そもそも、妄想とは「根拠のない主観的な想像や信念であり、事実の経験や論理によって容易に訂正されることがないもの」です。
家族に見捨てられる、見捨てられたという妄想は聞いていて、胸が痛いです。

この見捨てられ妄想の例で言えば、ご家族が面会に頻繁に来ていても「見捨てられた」という想像は変わらりません。
「私は見捨てられたダメな人なんだ…。」と本人が思い込んでしまうという状態になってしまいます。
いくら介護スタッフが「そんなことないですよ。ご家族さんは〇〇さんのことを思っていますよ。」とお伝えしても、納得されることはないのです…。

BPSDの例についてはこちらを


BPSD(行動・心理症状)の原因

上記の例は中核症状とは異なり、BPSD(行動・心理症状)と呼ばれています。
記憶、認知機能に障害を持った認知症の方が現実の生活に対応しようとしたときに引き起こされる症状のことをBPSDと呼んでいます。

攻撃的や徘徊といった行動のことや、妄想によって落ち込んでしまうという心理状態のことを指しています。

このBPSDが引き起こされる原因は、大きく内部環境と外部環境の2つの不調、変化にあります。

内部環境も2つに分類でき、脱水や不眠、発熱、血圧などの変動といった身体的なもの。不安、ストレスなどの心理的なものがあります。身体的、心理的な不調が起こると、BPSDを引き起こしてしまいます。

外部環境とは生活する際の周囲の音や光、活感、部屋の広さや温度などです。また、認知症の方に関わる周りの人たちも外部環境の1つとして捉えています。

このBPSDは中核症状と異なり、認知症の方全員に必ずしも発症するわけではありません。
内部環境と外部環境を適切に保つことによって、誘発することを防げます。

BPSDの出現原因はこちらを


まとめ

・認知症には、中核症状とBPSD(行動・心理症状)と呼ばれる2つの症状が出る。

・中核症状は認知症になると、程度の差はあれど必ず発現する。
・中核症状の原因は病気の影響による脳の萎縮、変性。
・中核症状は記憶障害と認知機能の障害の2つに分類されている。

・BPSD(行動・心理症状)は必ず発現する訳ではない。
・BPSD(行動・心理症状)の原因は、内部環境・外部環境の変化。
・内部環境は身体的なものと、心理的なものがあり、それが不調を起こすとBPSDを引き起こしてしまう。
・外部環境は、生活環境や関わる周りの人たちで構成されており、それが変化するとBPSDを引き起こしてしまう。


次回予告

今回で認知症についての連載は終了です。
いかがだったでしょうか?
認知症へのイメージ、理解が深まったのであれば幸いです。

さて、次回からは介護職に求められるコミュニケーションをテーマに連載をスタートしていきます!

介護職のコミュニケーションの第一回は「認知症の方とのコミュニケーション」です。
あれ?認知症のことは終わりじゃないの?

今回までの内容を踏まえて読んでいただきたいなあと思い、「基本的な介護職のコミュニケーション」ではなく、「認知症の方とのコミュニケーション」をテーマに書きます。

それでは^^

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