地方自治体が広報のプロを雇っても上手くいかないのは何故?
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地方自治体が広報のプロを雇っても上手くいかないのは何故?

私が広島県の広報総括官に就任した2011年以降、各地の地方自治体で「プロの広報官」が設置されるようになりましたが、全部が全部上手く行ってるとは言えないと聞きます。

理由のひとつは、広報の領域は農業から子育て、産業振興など幅広く、また業務も政策立案のサポートもあればチラシやポスターのデザイン業務、ホームページのリニュアルやSNSの運用まで『ごった煮』なので、いくらスーパーマンでも1人で全部手掛けるのは難しいからです。

政策結果が出ないのに、お化粧するような広報をしては元も子もないので、どうしても広報の手法だけではなく、政策の中身にまで突っ込んでアドバイスをしていかなければなりません。

ところが広報のプロでも地方行政の素人では、良いサポートが出来ないのです。単なる広報職員に対する「表面的なアドバイザー」で終わってしまうと、仕事の仕上がりがイメージ通りにいかなかったり、広報職員のスキルも思うように上がらなかったりします。
 

ですので、企業(プロチーム)に仕事を委託し、政策立案に強いメンバー、デザイナー、首都圏におけるPR業務担当、観光に強いメンバー、子育てに強いメンバーなど、その自治体の課題に応じてメンバーを組成してもらえる形がベストだと思うわけです。


それなら、「課題ごとに直接その分野のプロに委託すれば良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。

もちろん、そのやり方もアリですが、難点が2つあります。

ひとつはスピード感と煩雑さです。委託企業を選定するにはプロポーザルで公募をし、審査をし、契約をし、実務に入るまで最低でも3週間から1ヶ月はかかります。仕様書の作成や質問に対する返答、審査会のセッティングなど、委託企業の数だけ公務員の業務を増やすことになります。
 

もうひとつの問題は、変更のしづらさです。プロフェッショナルな方と個々に委託契約(担当業務別に任命)すると、「この人、イマイチかも」と感じても途中解約はなかなか大変です。そんなことをすれば議会から「どういう人選の仕方をしているのか?」と突っ込まれるので、ハズレの人に委託してしまった場合でも「成果が出ているように取り繕ってしまう」ことが多いと思います。
 

スキルの問題だけでなく、人間ですから相性の問題もあります。ですので、企業(チーム)に仕事を委託することで幅広い業務範囲を扱ってもらい、相性が悪かったり、新しい課題が出たりすれば担当メンバーをチェンジしてもらうわけです。

そうすると広告代理店などに一括委託するのが良いのか?という考えも出てきます。この形もアリですが、次のようなことができる前提です。
 

オンサイト、つまり県庁や市役所に半ば常駐のような形で机を並べて仕事をしてもらえることが必須です。業務はハンズオン形式で、山本五十六ではないですが、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」を毎日のように一緒に実践することで、似たような思考回路、解決策の出し方、動き方がプロから職員に移植できていくのです。
 

さらに、専門領域についてはプロポーザル(入札案件)の審査員などもお願いすることもありますが、A広告代理店が情報発信課に常駐しているとBやCの広告代理店は「出来レース」と感じて、コンペに参加してくれないでしょう。仮に参加してくれたとしても、自社Aに有利な審査をすれば公平性を疑われますし、他社に落札すれば帰任した際に大目玉を食うのは目に見えています(笑)。大型イベントのプロポーザルなどはA、B、C全ての広告代理店に参加してほしいわけです。そして、出来るだけ小さなコストで大きな成果を上げるように厳しい審査をし、業務発注しないといけないので、広告代理店的には「嬉しくない形」にしかなりません。
 

P R会社についても同様です。
これまで述べてきたように、マスコミへのP R営業は全体業務の一部でしかありませんし、PR会社も事業内容によって各社を使い分けたいのです。

それにPR会社も営業数字目標があるので、「なるべく多くの金額を地方自治体から獲得したい」という気持ちが働いてしまいます。

情報発信は逆です。

なるべく少ない予算でP Rを実現したいわけですから、目指す方向がずれるのです。テレビ局や出版社と話をつけてパブリィティを打つ場合は、マスコミ側担当者を広報課職員に紹介し、次回からは直接情報が流れ、仕事ができるように引き継いていくのが重要です。

つまり、専門家がいなくなっても業務が続くように「引き渡して」いくのと、P R会社のようにそのルートそのものが生命線で成り立っている会社とでは、スタンスに大きな違いが出てきてしまうのです。P R会社も情報発信にとってなくてはならないパートナーになりますが、例えば観光P Rはベクトル社、農産物のブランディングはオズマP R社など、業務ごとにP R会社を選定してお付き合いするのが、私はベターだと思いますし、PR会社にとってもその方が売り上げが大きくなると思います。


私は、地方自治体の広報コンサルティングに10年以上携わってきましたが、最初の取り組み方を間違えると、成果が上がらないばかりか、職員のスキルアップ、組織のレベルアップが向上しにくくなります。誰と、どのように組むか、この最初の2点がとても重要であり、ボタンのかけ違いが起こらないように気をつけてもらいたいと思っています。
 

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かしのたかひと

楽しんでもらえる、ちょっとした生きるヒントになる、新しいスタイルを試してみる、そんな記事をこれからも書いていきたいと思っています。景色を楽しみながら歩くサポーターだい募集です!よろしくお願いします!

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リクルート、福岡ドーム、メディアファクトリーを経て、映画プロデューサー、ベンチャー経営者、政治家、作家に。