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恩田陸さん新作バレエ小説「spring」を読んだ感想

※出来るだけネタバレを避けますが、ネタバレが入る可能性が大いにあります。まだ読了されていない方は気をつけてください。


何気なくSNSを眺めていたら新国立劇場バレエ団の吉田都さんと恩田陸さんのツーショットが出てきて驚きました。
恩田陸さんといえば大人気の小説家で、中学時代の親友が恩田陸さんの大ファンで「六番目の小夜子」をいつも読んでいました。私は長年図書館で働いていたのですが恩田陸さんの本、特に「夜のピクニック」などは人気で目にする機会が多かったです。そんな恩田さんがバレエの小説を出版されたと知り、慌てて本屋に駆け込みました。

「spring」を読んだ感想

恩田さんは作家というだけあって、ダンスシーンや人物の描写が分かりやすく、普通の人には思いつけないような素敵な表現がふんだんにあり、読んでいてとても楽しかったです。例えば、録音した音源で踊るとダンサーの力量が分かるという描写は、恩田さんの考えに触れられた気がしてとても興味深かったです。

この小説は4章に分かれていて、色々な人が主人公の春について語ります。面白いことに、各章それぞれキャラクターが春について語っているのですが、頭に浮かんでくるダンサー像が毎回変わるのです。
例えば1章の春と純はお互いダンサーでもあり、でも振付家とダンサーという存在でもあるという意味では、パトリック・ド・バナとマニュエル・ルグリの2人を思い浮かべますし、指の綺麗さという面ではポールドブラが綺麗な森本亮介さんや晃介さんが思い浮かびました。2章では長野の生活描写が分かりやすく、読んでいるうちに中性的な美しさや圧倒的な存在感を持ち、かつ長野に縁がある二山治雄さんが春として私の頭の中に現れました。
残念ながら3章は全くイメージが浮かばず、4章については、ジャン・ジャメはジョン・ノイマイヤー、フランツはフリーデマン・フォーゲル以外思い浮かびませんでした。どんなダンサーを知っているかによって浮かんでくる春像は様々だと思いますが、各章で様々な春の姿を思い浮かべることが出来るのではと思います。

ちなみに私が一番好きなキャラクターはユーリエです。小説、そしてバレエというファンタジーの世界において、ユーリエは非常に人間的で惹かれるものがありました。

最後に素人意見ですが、気になった部分も少し書きます。
正直に言って、この小説はバレエを知らない人が読んだらちょっと難しいかもしれないと感じました。「パ」や「プリンシパル」など、バレエを知っている人が当たり前に知っている単語もおそらく一般の人には馴染みがないですし、バレエ界の人間なら描写を見てすぐにイメージが湧く内容も、普通の人にはモヤモヤした映像にしかならないかもしれないと思いました。
また、人物が妙に幼く見えた部分が気になりました。春だけでなく、ハッサンや七瀬など、彼らを外から描写している分には面白いのですが、彼ら自身が喋り出すと途端に幼く見えるのです。作者の恩田さんにとって、ダンサーは幼いイメージなのかもしれないと感じました。

「#spring私の推し文」ハッシュタグについて

紙の書籍に挟まれているしおりと共に、気に入った文章をSNSに投稿しようという企画が行われています。私も早速投稿しましたが、人によって気になった文章が本当に違い、このタグはとても面白いです。著作権などが色々厳しい世の中でこのような楽しい企画を立てて頂き、筑摩書房さん、恩田陸さん、ありがとうございます。

恩田陸さんの出演情報

なんと明日3月30日(土)放映のTBS「王様のブランチ」で恩田陸さんのインタビューが放映されます!

TBS「王様のブランチ」 午前の部
2024年3月30日(土)
TVer見逃し配信は4月6日19時まで

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