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ミライのキャリア#27 士業の実際(2)

【えりな】今回はですね、公認心理師って士業の中では、どういう業界なのか、というのを聞いていきたいと思います。

【Caol】何か答えにくい質問もありそうですがよろしくお願いします。

【えりな】振りかな。これは答えにくい質問をしてよいと受け取っていいのでしょうか。

【ホリデー】押すなよ、絶対に押すなよ、というネタですね。

士業につきものの職能団体


【えりな】公認心理師の業界ってどういう構造なのですか。例えば、同じ資格を持った人の中でも階級があるランクがあるとか?

【Caol】まず階級という話をするために、公認心理師だけじゃなくて、士業にはほぼ全てある職能団体というものの話をさせて下さい。
 これは、同じ資格を持っていて、同じような仕事をしている人たちが集まって、お互いに助け合う団体を作ろうというのが職能団体です。日本で最も有名な職能団体は日本医師会ですね。
 職能団体とは、何かあった時のために、ちゃんと保険に入ってくれたり、あるいは研修の主催をしてくれたり、あるいは法律を変えてくださいみたいに、政府に要請をしたり、などなど同じ仕事同じ資格を持って働いている人の為に助け合ったり、あるいは、外へ働きかけを行ってくれる団体のことを言います。

【ホリデー】なんか政治団体のイメージが強かったですけど、組合的な感じですね。

【Caol】政治の話をすると、職能団体の会員が2万人いると圧力団体として機能します。日本医師会のように10万人を超えるような団体だと、自民党から推薦されて参議院議員が出たりするわけですね。医療の世界だと看護師さんも議員さんを出しているところになります。
 公認心理師の方は、残念ながらそんなに会員数がいない上に、この職能団体が今、二つに分裂していて政治的には弱いかな。

【ホリデー】あーなるほど。そこ分裂しちゃうと、確かにそこから政治的な意見と言うのも分裂しちゃったりするから、意見が通せなかったりするのだ。そこ仲良くできないですかね。

【Caol】ここらへん答えにくい話でして。バックグラウンドが違う人が集まっている。所属学会というのが心理臨床学会というところと、日本心理学会というところが二大勢力で、どっちがメインかで分かれちゃう。
 また、公認心理師の職場っていうのは複数の場所にまたがっている。医療系もあれば、私のように教育系、あと前に言った法務省のように司法に関わる分野。会社で働く人の支援をする産業と呼ばれる分野、子どもや高齢者の施設で働く福祉分野の大きく5つの分野に分かれていて、それぞれ働く場所も違えば、考え方も違ったりするので、ここでもちょっとなかなかまとまりづらいところがあります。病院で働く人と、学校で働く人って必ずしも利害が一致しないですよね。多分よその士業でもあるのじゃないかな、と想像しています。

公認心理師は階級制?


【Caol】やばくない業務の話をすると、階級と言うのは、お医者さんと一緒で、ベテランとかちゃんと勉強した人には、専門という資格、肩書きがつきます。
 公認心理師自体は、国家資格で、とってしまえば一生持ち続けることができるものなのですけれども、ベテランになって年数が経ったり、あるいは研修とかを受けてより専門家になったよってことになると、専門資格というものがつきます。
 お医者さんでも、ただのお医者さんじゃなくて、皮膚専門医とか精神科専門医というのがありますよね。これは一定の年数だったり、学会で論文を出すとか、きちんと研修を受けて専門家になった、という風に、専門性が高まることによって得られる資格があるよね、ってことです。公認心理師の世界でも、それがあります。

【ホリデー】この専門というのは、自称とかじゃなくて、ちゃんと資格みたいな感じで取らなきゃいけないみたいな感じなのですか。

【Caol】そうなのですよ。公的な資格だから実は法律では罰せられないのだけども、調べたら嘘です、だとまずい。

【ホリデー】知らなかったです。

【えりな】あーなるほど、ということは階級などがあるかと言うとあるし、他の士業にもある。呪術回戦の何級呪術師みたいだ。ただこれは級ではなくって、専門何々とかの肩書がついてきたりしますよということで合っていますか?

【Caol】あっています。ビジネス系の資格だと英語で言うシニア、上級という風に名前がつくことが多いかなと思います。

臨床心理士の年収


【えりな】では次。 気になっている人が多いのではないか、って言うこと聞いちゃおうかな。公認心理師ってどれくらいの収入が得られるのですか 。

【Caol】公認心理師ではなくて臨床心理士、今もあるのですけども公的な資格の団体、心理職の人は、だいたい両方持っている人が多いのですけども、この臨床心理士会という職能団体が、所属する臨床心理士の年収はいくらかという調査をちゃんとやってくれています。その結果は、平均年収400万円です。

【ホリデー】そんなに高くない。

【えりな】倍くらいだと思っていました。

【Caol】この年収400万円という算術平均の数字は、医療系の技術者、理学療法士とか作業療法士、放射線技師などの平均年収とだいたい一緒ということになります。

【えりな】いろんな見方ができますね。

【ホリデー】こんなもんか。

【えりな】そうそう、こんなもんかでもあるし、周りの資格業と比べてみると、周りもそんなもんなんかとも思いつつ、でも他の職業に比べると安定した収入にも感じます。

【Caol】400万っていうのは算術平均であって、これは例えば0万円の人と800万円の人がいたら、平均400万円になるのですけど、本当に400万円の人っていないですよね。
 で、モード(最頻値)一番多い収入帯の人はどこか、と言うのはあてになるわけです。これだと320万円になっちゃうのですよね。

【ホリデー】モードだと下がっちゃう。

【Caol】理由として、比較的若い人が多い。あとキャリアに対して収入が上がっていかないという面もあるので、300万円ちょっとの人が多い、ということになります。

【ホリデー】ちょっと調べたら、2022年の年代別の平均年収だと20代が342万円、30代が435万円、40台で495万円みたいな感じなので、そう思うとかなり平均と一緒ぐらいか、少し少ないかなぐらいの感じのイメージですねそうですね。

【Caol】公認心理師、男女比は実はかなり偏っていて、8割が女性です。

【えりな】ちょっと意外。

【Caol】この公認心理師の多数派が、パートタイムでスクールカウンセラーをしている女性ってことになるわけですよ 。千葉県の例だと、週3回スクールカウンセラーとして稼働、フルタイムじゃないってことになりますよね。で、週当たり18時間の稼働で、300万円くらいの年収になる感じです。

【ホリデー】フルタイムじゃなくっていうとこで考えると確かに

【Caol】週三回18時間の稼働で年収300万円というのは、仕事として良い感じがしません?

【えりな】確かに、収入だけ見ると、なんか週5で元気に働いているイメージになっちゃっていましたけど、これ聞くとね、なるほどですね。

【Caol】こういう話をすると、Caol先生個人ではどうなのですか?と、学生から聞かれることがあるのですが、こういうときの言い方として、私は公認心理師の中ではかなり上の収入だと思います。ただ具体的な金額を言うわけにはいかないので、弁護士の平均より上で、勤務医、病院に勤めているお医者さんの平均のちょっと下の収入です、と言います。

【えりな】弁護士やお医者さんの収入平均って調べたらなんとなく予想が立てられちゃう。

【Caol】お医者さんも、病院に勤めている勤務医と自分で病院を持っている開業医では、相当に年収が違いますね。

【ホリデー】もらっていますね、飲みに連れてってもらおうよ。

士業のメリットとデメリット


【えりな】収入の話でもちょっと出てきたのですけど、気になるのが士業のメリットとデメリット、あと大変なところと楽なところのバランスが気になるのですけど、どうですか?

【Caol】専門職でプロフェッショナルな仕事なので、割と自分がやる仕事に関しては権限が大きく、自分でやることは自分で決められる自立性、キャリアアンカーのことで言うと、仕事が自立的にできるって言うところは非常にある仕事だと思います。
 大変なところとしては、プロフェッショナルは基本一人です。職場に一人、何千人いる大組織の中であっても、自分が公認心理師でメンタルケアをするっていうことで言うと、一人しかいないポジションであることが多い。で、一人で決めるというところがなかなか大変なところになるかなと思います。

【えりな】なるほど、メリットにもなりうるしデメリットにもなりえるところなんでしょうけど、まぁメリットは自立性があるところで、デメリットになり得るところは、全部一人でやらなきゃいけないっていうことですね。

【Caol】その組織の中で、公認心理師は私だけってことになるので、先生どうすればいいんですか、と聞かれても、本当は私にも分からんのだけど、なんかちゃんとしたことを答えなければならない、ということが起きます。

士業を目指す人へのメッセージ


【えりな】かっこいいですけどね。私かっこいいと思っちゃうけどなあ。でもそれを聞くとどんな人が向いているのかもうなんかなんとなくイメージできますね。最後に士業を目指す人にメッセージを送っていただいてもいいでしょうか。

【Caol】士業は選んだ時点で、なるべき姿というのが明確です。覚悟が必要になるよ。あと、なるまでも大変だよ。そして、なってからもずっと勉強しなきゃいけないよっていうことになります。なので士業を目指す人、私向いてるんでしょうか向いてないんでしょうかっていう事の一つのポイントは、好奇心があるか、新しいことにずっと興味を持てるか、ってところが一つポイントになるところです。

【えりな】ちょっと意外でもっと硬い印象はありませんでした?

【ホリデー】そうですね。今言った事って、正直、僕みたいに士業でもなんでもないデザインでも当てはまるんだけど、なんか士業って言うと、やることが決まってるから、なんか一回入っちゃえば勝ち組だね、というイメージで思っていたら、ちゃんとアップデートし続ける必要あるということですね。

【Caol】外からのイメージと違うところは、毎年アップデートしなきゃって言う必要に迫られる業界が多いです。たとえば税理士さんのことを考えれば、毎年税制が変わるんだから、去年の知識では、できないよってことになりますね。

【えりな】確かに。本当に自分の専門、一つの事をアップデートし続けて、極め続けることがプロフェッショナルっていうことですね。
 次回は、資格はキャリアに本当に役に立つのかです。お楽しみに。

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