「No.10」「ミュシャとサラ・ベルナール」アルフォンス・ミュシャの《ハムレット》
こんにちは!かずさです!
昨日、NHKで「転・コウ・生」というドラマが放送されていたのですが、皆さんはご覧になりましたか?柴咲コウさん、ムロツヨシさん、高橋一生さん(と猫)の中身が入れ替わるという物語で、とても面白かったです!
タイトルに「こんな時だからこそ新作ドラマを」とありましたが、撮影も大変な中こんなに面白いドラマを制作してくださって本当にありがたいなあと思いました!今日は、そんなつながりで(?)アートに登場する女優さんについて紹介します!
作品紹介
今回の作品はアルフォンス・マリア・ミュシャ《ハムレット》です。
1899年 リトグラフ H205.7㎝×W76.5cm
細長い画面の中にシェイクスピアの「ハムレット」に扮したサラ・ベルナールが眼光鋭く描かれています。画面上には、「TRAGIQUE HISTOIRE D'HAMLET / PRINCE DE DANEMARK / SARAH BERNHARDT」(ハムレットの悲劇 / デンマークの王子 / サラ・ベルナール)とあり、画面の下には、「THÉÂTRE SARAH BERNHARDT」(サラ・ベルナール座/現在のパリ市立劇場)と上演会場の名前が書かれています。
また、サラの頭の上にはケルトの組紐文様が、上半身の後にはハムレットの復讐心を感じさせる描写があり、サラの足下にはオフィーリアと思わせる花に囲まれた女性が描かれています。このポスターには所々にケルトの文様が用いられ、シェイクスピアが活躍したイギリスやハムレットの世界観を感じさせる作品となっています。
ミュシャとリトグラフ
ここで制作者のミュシャについて簡単に解説してみます!
アルフォンス・マリア・ミュシャ(1860-1939) チェコ出身のグラフィックデザイナー、画家です。アール・ヌオーヴォ様式が流行していた19世紀末のパリで、サラ・ベルナールの《ジスモンダ》のポスター制作をきっかけに時代の寵児となりました。精緻なデッサンを活用したデザイン的な植物文様や耽美な女性像がその特徴です。
1900年以降は絵画の方へ徐々に重きを置いておき、1912年からチェコの歴史を描いた大作《スラヴ叙事詩》を制作し始めました。この連作は1926年に完成し、1928年にチェコの首都プラハに寄贈されました。
ミュシャを取り上げた番組ってよく見ますし、展覧会もたくさん開催されていますよね。輪郭線を黒で縁取りしたイラストを思わせるポスター作品は、とても魅力的で、高い人気を誇っています。
上の《ハムレット》を含めて、ミュシャのポスター作品はリトグラフという方法で作られています。このリトグラフとは19世紀に登場した技法で、版画の一種なのですが、板や石板を彫る必要がないものでした。この方法で作られた作品は平坦な色面を描くのに向いていたので、大胆な色合いや構図で見る人に訴えたる必要があったポスターにはとても合っていました。
ベル・エポックのポスターとしてよく紹介されているスタンランの《ル・シャ・ノワール》のポスターもリトグラフで制作されています。
アレクサンドル・スタンラン《ルドルフ・サリスの「ル・シャ・ノワール」の巡業》1896年
大女優サラ・ベルナール
ミュシャは1895年の《ジスモンダ》を制作してから、1900年までサラ・ベルナールと契約を結び、彼女が出演する公演のポスターを制作しました。《ハムレット》はその最後の作品となります。
《ジスモンダ》 1895年 リトグラフ
このサラ・ベルナール(1844年-1923年)という女優は19世紀末では知らない人がいない程に有名人でした。ヨーロッパやアメリカをまわるツアーをし、「劇場の女帝」とも言われていました。フランス出身の彼女ですが、その活動範囲の広さから国際的女優の第1号だとも言われています。
とても綺麗な方ですよね!彼女はコメディエンヌでしたが、ハムレットのような男役やトスカや椿姫などの悲劇的な役も演じていました。
またミュシャだけではなく、当時の様々な文化人と交流があり、劇作家のオスカー・ワイルドとも仲が良かったと言われています。彼女がワイルドに注文した戯曲が「サロメ」(1892年)です。
オーブリー・ビアズリーによるイラストレーション《サロメ》1894年
この絵はいつ見てもゾクゾクします…!あまり今まで考えたことは無かったのですが、どことなくサラ・ベルナールの面影がありますよね。
ちなみに、1899年に出演したハムレットの映像の一部があります。白黒なので分かりにくいですが、ミュシャの《ハムレット》と同じ衣装を着ていることが分かると思います。
19世紀後半は、ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』のように、交通機関の発達によって徐々に世界が小さくなってくる時期でした。その国際的な潮流の中で彼女は自身の名声を高め、大女優へとなりました。
そんな大女優である彼女にとって、ミュシャの「ヌードル様式」と呼ばれた縦長のポスターの繊細で大胆な世界は自分の公演を分かりやすく、また美しく観衆に訴えるのにうってつけだったのかもしれません。
今回はミュシャの作品を通して、19世紀末のミューズ、サラ・ベルナールについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか?自分が主人公の戯曲を作らせてしまうほどの影響力は凄いですよね。
ミュシャの作品は、堺市の美術館でも見ることが出来るのでぜひ訪れてみてください!
次回は、アジアのアートについて紹介します(o^―^o)
画像は全てパブリック・ドメインのものを使用しています。
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今回参考にした本、おすすめの本を紹介します!ぜひ、おうち時間に読んでみてください!
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