「No.11」「母の日に」伊藤若冲の《果蔬涅槃図》
こんにちは!かずさです!
今日は母の日でしたね。
今年はコロナの影響もあり、5月10日のみで「母の日」と限定するよりも、5月全体を「母の月」として花を贈ろうという動きがあるようです。
今日はそんな日に合わせて、画家とそのお母さんの関係性が見えるような作品を紹介します!
(今日はちょっと短めです(о´∀`о))
作品紹介
今回の作品は伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の《果蔬涅槃図》(かそねはんず)です。
18世紀後半 紙本墨画 181.7×96.1cm 京都国立博物館蔵
籠の上に横たえた大根を中心にして、カブや瓜、青菜などのなんと80種類ほどの野菜が描かれています。背景に見える竹のような植物はトウモロコシの茎です。
大根を取り囲む野菜たち…。ちょっとユーモラスな作品ですが、若冲がこれを描いたのには訳があるのです。
野菜の「涅槃図」
《果蔬涅槃図》という名前の通り、この作品は「涅槃図」という仏教美術のある1つのテーマを見立てた作品となっています。
「涅槃図」というのは、釈迦が死に際して沙羅双樹の下に横たわり、それを集まった弟子や神々、動物たちが嘆き悲しむ様子を描いたものです。
この形式の作品は、旧暦の2月15日に寺院で行われる「涅槃会」という行事に欠かせないものでした。
涅槃会では、涅槃図の前に供物が捧げられ、読経が行われました。
鎌倉時代以降、この涅槃会は全国的に広まったので、たくさんの涅槃図が制作されました。
絹本著色仏涅槃図 267.6 x 271.2 cm 金剛峰寺 11世紀頃
若冲と母
このように、今回の作品は釈迦が入滅する様子を野菜で見立てているという作品なのですが、若冲はユーモアだけでこの作品を描いた訳ではありませんでした。
伊藤若冲(1716−1800)は京都の青物問屋に生まれました。家は大店で、彼は40歳になると弟に家督を譲り隠居します。
彼自身、絵以外はあまり興味が持てない人だったようで、早めの隠居は当然の成り行きだったかもしれません。
若冲の作品で有名なものの中に《動植綵絵》(どうしょくさいえ)というものがあるのですが、この作品には高価な画材がふんだんに使われています。
《動植綵絵》より「群鶏図」 絹本着色 1761-1765年 142.1×79.5㎝ 宮内庁三の丸尚蔵館
比較的早い時期に隠居し、また(実家が金持ちだったので)そのような豪華で緻密な作品を制作することが出来たとされています。
そんな若冲が40歳頃の作品が《果蔬涅槃図》です。
これを制作した年に若冲は母を亡くしています。つまり、仏に見立てられた大根は母を表現しているのです。
また、背景のトウモロコシは沙羅双樹の、取り囲むたくさんの野菜は集まった弟子や動物たちの見立てです。
あまり商売に興味が無かったとされる若冲ですが、
野菜で涅槃図を描くというところを見ると実家や母の姿に心を寄せていたことが分かる気がします。
大根の優しい描かれ方には、若冲への感謝の気持ちのようなものが見えるようですよね。
今回は、ユーモアがありながらも、画家の優しい気持ちが垣間見える作品を選んでみましたが、いかがでしたでしょうか?
画家と家族をテーマにした作品は洋の東西を問わずたくさんあります。こういう家族を思う気持ちは画家に様々なアイデアを沸かせるテーマなのかもしれませんね(о´∀`о)
次回は、ヨーロッパのアートを紹介します(o・ω・o)!
画像はGoogle Art & Cultureとパブリックドメインより引用しました。
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