「No.15」「スーパー・スペシャル・マルチ・アーティスト兼プロデューサー」本阿弥光悦と俵屋宗達の《鶴図下絵和歌巻》
こんにちは!かずさです!
なんか今日のタイトルはめちゃくちゃ長いです。「スーパー・スペシャル・マルチ…」なんて、その内「LIFE」の某キャラクターがやって来そうです笑
ですが、今日の主人公「本阿弥光悦」(ほんあみこうえつ)の凄さはこれくらい長くても足りないくらいなんです!
作品紹介
今回の作品は、《鶴図下絵和歌巻》(つるずしたえわかかん)です。
17世紀前半(江戸時代) 紙本著色 H34㎝×W1356㎝ 京都国立博物館蔵
たくさんの鶴が飛び立つ光景の中に、何やら文字が書いてあります。それにこの作品の長さを見てみてください。なんと13m以上!巻物なので一気に全部広げるなんてことはありませんが、全部広げてみたい気持ちになります。
本阿弥光悦が書いた部分は文字の方で、鶴の絵の方は《風神雷神図屛風》でもおなじみ俵屋宗達が描いています。
17世紀 169.8㎝×154.5㎝ 京都国立博物館蔵
《鶴図下絵和歌巻》は背景が特に無く、ほとんど銀泥で塗られた鶴だけが描かれているのですが、その配置のためにアニメーションのようにも見えます。そんな感じで、絵の方は分かりやすいのですが、文字の方は何と書いてあるのでしょうか?今回の画像で分かる範囲内で見ていきましょう!
歌!歌!歌!
《鶴図下絵和歌巻》の中には、藤原公任の撰による三十六歌仙の和歌が18首ずつ書かれています。三十六歌仙の歌人たちはこんな人たちです。
柿本人麿 紀貫之 凡河内躬恒 伊勢 大伴家持 山辺赤人 在原業平 僧正遍昭 素性法師 紀友則 猿丸大夫 小野小町 藤原兼輔 藤原朝忠 藤原敦忠 藤原高光 源公忠 壬生忠岑 斎宮女御 大中臣頼基 藤原敏行 源重之 源宗于 源信明 藤原清正 源順 藤原興風 清原元輔 坂上是則 藤原元真 小大君 藤原仲文 大中臣能宣 壬生忠見 平兼盛 中務
尾形光琳《三十六歌仙図》18世紀 メナード美術館蔵
百人一首でも選ばれている歌人もたくさんいて、有名な歌人ばかりです。余談ですが、私は壬生忠岑の百人一首と古今和歌集に選ばれている歌がとても好きです。
『有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし』
相手の女性につれなくされるという意味もありますが、夜明けを惜しんでいるような気がして、そこがロマンティックでグッとくるんです…!
さて、上に挙げた《鶴図下絵和歌巻》の中の歌を少し紹介します。
伊勢 「三輪の山いかにまち見む年ふともたづぬる人もあらじとおもへば」
三輪の山でどのようにして待ちましょうか、何年経っても訪ねてくる人などいないと思うと
山部赤人 「あすからはわかなつまむとしめしのに昨日もけふもゆきはふりつつ」
明日からは若菜を摘もうと、しめを結っておいた野に、昨日も今日も雪は降り続いて。
僧正遍照 「すゑのつゆもとのしづくや世中のおくれさきだつためしなるらむ」
葉の先にとどまっている露と根元に落ちてしまった雫とは少し遅いか 先に死ぬか 世の中の無常を表す例であろうよ
私は古典にあまり明るくないのですが、この並びってどうなのでしょうか。あまり、それぞれの歌に繋がりが見えないというか…。どのような理由で光悦がこのように歌を並べていったのかちょっと分からないです…。
本阿弥光悦と俵屋宗達
本阿弥光悦(1558-1637)は今回の作品のように、書を書く「能書家」であり、近衛信尹(このえのぶただ、1565-1614)、松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう、1584-1639)と共に「寛永の三筆」に数えられる人です。
本阿弥光悦
光悦のスタイルは時期によって徐々に変化していくのですが、《鶴図下絵和歌巻》は慶長期のものだとされているので、この頃のスタイルは弾力に富み、筆線の太細などを誇張した装飾的なものでした。なので、宗達のデザイン的背景にとてもマッチするのだと思います。
他に書では、典籍や謡本を雲母刷りした料紙に書いて印刷した、豪華なひらがな活字本である「嵯峨本」の刊行でも知られています。
また書だけでは無く、蒔絵や作陶にも才能を発揮するマルチアーティストでした。
本阿弥光悦 楽焼白片身変茶碗 銘「不二山」 長野、サンリツ服部美術館蔵
さらに自身のアーティスト活動だけでなく、才能あるアーティストを発掘する名プロデューサーでもありました。俵屋宗達も才能を見出されたその1人です。
元和元年(1615年)には、徳川家康から京都の洛北鷹ヶ峰の土地を与えられ、そこに自分の一族、職人などを集めて工芸村のようなものまでつくっています。これには、王朝文化に明るく、朝廷とも距離が近かった光悦を都の中心から引きはがしたいという家康の思惑があったとも言われていますが、真相はどうなんでしょうか…?
ともかく、古典の復興期にあった桃山時代から江戸初期に活躍した光悦の功績はとても大きなものがありました。琳派の話の中では、俵屋宗達の天才さと尾形光琳への繋がりがクローズアップされがちですが、光悦の話ももっとしてほしいのにな…というのが個人的感想です。
今回はスーパーマルチクリエーター本阿弥光悦と作品について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?大河ドラマで文化人が主人公ってあまり見ないので、いつか取り上げて欲しい人でもあります。(文化人が主人公って本当に少ないですよね。「春の波濤」くらいしか思いつきません)
まだまだ魅力的な作品を数多く残しているので、また作品を紹介したいです!
次回は、ヨーロッパのアートを紹介します(o^―^o)
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今回参考にした本、おすすめの本を紹介します!ぜひ、おうち時間に読んでみてください!
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