児童養護施設職員の給与

児童養護施設職員の待遇


この話は、ある意味禁断の話です。あまり大っぴらに給与の話をすることは下品だと思われるかもしれないです。


しかし、大切な話だと思います。


私が学生の頃、児童養護施設に初めて見学に行った際、対応してくれた職員に、「児童養護施設職員の給与で、家族を十分に養えますか?」と聞きました。


その職員は、「どの程度が養える基準かにもよりますが、私は養えていますよ。」と真摯に答えてくれました。


後に、見学した施設に入職し、結婚し、子どもも生まれ、自宅も購入しました。


私より後に入職した職員を家に招き、数年後にはこのように、自宅を構えて生活出来るんだよ、という前向きな話をしました。


私が学生の頃、「児童養護施設職員は給与が安い。」と思い込んでいたのは、単純に営利目的の組織ではないという認識があったためです。


もちろん、営利目的ではありませんので、児童養護施設職員の給与の頭打ち感は否めません。


しかし、私が見学した時に対応してくれた職員が言った通り、10年以上経った今、児童養護施設職員として家族と安定した生活を送ることが出来ています。


待遇を気にして児童養護施設職員を志せない学生がもしいたら、このブログを読んでもらいたいと思います。

東京都の児童養護施設


まず大前提に、私が今からお伝えするのは、あくまで東京都内の児童養護施設に限定した話であることをご理解ください。


東京都とその他府県ではまったく違います。東京都は、都加算と呼ばれる運営費を国費を別に支給されるので、人件費も他府県と異なります。


これは、実は児童養護施設に限った話ではなく、障害者のグループホームでも同じことが起こっています。


これを読んだ他府県の児童養護施設の職員さんは、とても驚くかもしれません。それでも、ひとりでも多くの方が希望を見出せるように、書かせていただきます。

東京都の児童養護施設職員の給与


私たちのような福祉職員は、基本給がやや低めに設定されています。その代わり、各種手当があり、総合的な給与が決定する仕組みになっています。


児童養護施設の求人を確認された方ならわかると思いますが、新卒1年目の基本給は、16〜18万円程度だと思います。


ここに、宿直手当、扶養手当、処遇改善加算などの各種手当がつきます。


基本的な勤務は宿直が主なので、毎月2〜3万円の宿直手当が入ります。

そこから所得税などの社会保障費が引かれ、最終的な手取りとなります。


私の肌感では、基本給プラス2万円程度が、手取り額になります。


なので、新人1年目でも手取りが20万円程度にはなります。


ちなみに、私は10年経った頃、年収は500万円を超えました。この時、基本給は21万円ほどでしたが、子どもが産まれたことにより扶養手当が付きましたので、この金額になりました。


当時の30代平均給与をやや下回る程度の水準をキープしていたのを記憶しています。


児童養護施設職員の給与は、経験年数や役職によって異なります。仕事の成果は運営層の印象値で判断されるため、やや公平を欠く場合もあるでしょうが、それはどの仕事でも同じです。


それでも、年々経験年数は蓄積されるため、経験給は少しずつ上がっていきます。


勤続20年を超える主任クラスになれば、年収600万円も夢ではないのが児童養護施設職員なのです。

残念なのは、頭打ちだということ。


一方で、施設長でも600万円を超える人は多くはありません。


施設の人件費は措置費と呼ばれる運営費から賄われるので、施設によって給与が大きく差が出るということはありません。


しかし、給与の割り振りに関しては各施設の運営事情に依りますので、管理職が高い給与の施設もあれば、職員全員を平均的に高い水準にキープする施設もあります。


また、措置費における人件費の割合を80%にしている施設と、75%にしている施設では差があります。


そういった僅かな差は、ホームページでは確認出来ませんので、面接の際に実際に支払われている給与は確認しましょう。


私も転職する際には、きちんと自分の給与がどのぐらいいただけるのか、確認しました。


給与について聞くことは、誠実に長く働こうと思えば大切なことですので、きちんと確認しましょう。将来設計にも影響するので、遠慮する必要はありません。


しかし、どんなに頑張っても、年収が1000万円を超えることはまずありません。


施設長クラスでも、600万円を超えるかどうかというのが現状です。


これは、この分野で大きく成功したとしても、それ以上は貰えないという現実です。


この金額を、それでも大満足と捉えられるか、それでは足りないと捉えるか、その人それぞれだと思いますが。

児童養護施設職員は、今後も必要


給与は頭打ちとお伝えしましたが、児童養護施設職員は他の一般企業と違い、業績悪化で給与が下がることはまずありません。


職員個人が労働規定に違反するような行為を行い減給処分になれば、当然給与は下がります。それは、どの職業でも同じでしょう。

多くの子どもたちは今も一時保護所で入所する施設を待っています。


施設内で職員による暴力事件が起きても、翌月には児童の入所を受け入れた例もあります。


それだけ、施設に入所するのを待つ子どもたちの現状は厳しいのです。


私は、今後も20年以上は、この状況が続くと思っています。


児童虐待が行われないことを心から望んでいますし、施設に入所せざるを得ない子どもがいなくなることを願っています。


自分の仕事がなくなることを祈りながら働く、難しい職業です。


児童虐待の認知件数は年々増加し、今でもどこかで子どもたちが保護を待っています。

児童養護施設が運営できなくなる時、それはこの日本が倒れる時です。


その時は、どの仕事をしていても同じだと思います。


実際、新型コロナウイルスの影響で社会が混乱する中、私たち児童養護施設職員は、今までと変わらず勤務し続け、給与をもらっています。


そういう意味では、社会で養護を必要とする子どもたちがいるうちは、国がしっかり子どもたちのための環境を整備してくれるだろうと、私は信じています。


だからこそ、私たちのような児童養護施設職員は必要なのです。

終わりに


私は、児童養護施設職員の給与が安定していることや、意外に高いということを言いたかったわけではありません。


また、東京都が恵まれていると言いたかったわけでもありません。


私が学生時代に施設見学でお世話になった職員さんが言ったことを、次の世代に伝えたかっただけです。


「家族を養えるかどうかは人それぞれですが、私は養えています。」


これからは、夫婦共働きが当たり前になるのでしょうから、養うという言い方も古いかもしれません。


子どもを授かった時、妻は退職することを決めました。妻が退職して、子育てに専念したいと言った時、それが出来る状況であったことはありがたいことです。


児童養護施設職員を志す人たちが、期待を持ってこの業界の門を叩いて下さることを、心よりお待ちしております。


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