そこから私は変わっていく

授業中、急にそれは現れた。
窓一面の大きな目玉。これは夢だ。

あまりにも現実離れし過ぎた状況で理解した。と同時に夢の中と理解してても恐怖が襲ってきた。

窓に収まらない程の大きな目、黒い目玉が何かを探す様に動いている。

見つかってはいけない。食べられてしまう。怖い。隠れ逃げた。
誰かが叫んでいる。その声に反応するかの如く校舎がそいつの腕で潰された。

「目が合った!」と言った女の子が摘まれそいつに食べられた。

瓦礫の中で声を潜め隠れている。
それが早く何処かに行くように願いながら。
辺りを見渡すと、見知らぬ人が8人程私と同じように瓦礫の中に隠れていた。

安心する。武器も持たないちっぽけな人間が何をしてもそれには勝てないけど私と同じ状況の人はまだいる。

破壊音、振動、それの鳴き声がだんだんと静かになってきた。
それは町の方へ移動したようだ。
ここには、もう誰も居ないと思ったらしい。
一安心だ。私はもう大丈夫。

数年後、再びそいつの夢を見た。
これはあの時の夢の続きか。

学校から帰って家でテレビを見ていた。私の家はマンションの14階。
鳥肌がいきなり立った。
慌ててソファの後ろへ隠れる。ソファの影から窓を見るとそれはいた。
窓一面の大きな目玉、黒い目玉が何かを探している。

隣に住む何かといつも騒がしいおじさんの怒鳴り声が響いたと思ったらそいつがおじさんを食べた。
そして、響く叫び声。近隣のマンションに住む人達全ての人が異常事態に気が付いたらしい。
そいつが窓から離れたのを見計らって外を見た。
逃げ惑う人々をいたずらに踏みつけ握り潰し叩き潰すそいつ。

怖い。見つかりたくない。死にたくない。
私はそいつを知っている。だから声を潜め極力音を消しそいつの死角に常に気を付けていた。

そう言えば、隣の住んでいるのかも分からない程いつも静かなお婆さんは大丈夫だろうか?
気になって窓越しに覗いた。
カーテンはかかっているが窓が開いていたので入ってみた。普段、人見知りな私では決して有り得ない行動だ。

お婆さんは、目が悪くて足も悪い。立つのも歩くのも一苦労なお婆さん。仲のいいご近所さん程でも無くただのご近所さんより親しい不思議な縁のお婆さんはそいつに見つかって欲しくなかった。

いつもと同じように座椅子に座りお茶を飲んでいるお婆さんがいた。
良かった。
お婆さんが無事な事、いつもと変わらないお婆さんの様子に私は心から安堵した。
ずっとここにいたい。
でも、お婆さんは私がここに居てはいけないと言う。「直にここも外のやつに見つかる、私は足が悪いから静かにその時までここで過ごすわ。だけど、貴女は健康な身体があるんだからもっと安全な場所まで逃げなさい。」と

泣きながらお婆さんに別れを告げて
外へ逃げた。走った。
隣を走っていた人が犠牲になった。
その人のお陰で逃げ延びた。私は家族と一緒に走った。
私の家族の横には知らない人達が一緒に同じ方向へ走って逃げている。

どんどん、人が減っていく。
私達家族にも危機が来た。
父親が私達を守ってくれた。

泣いて泣いて、私達は走った。
母親が私達を守ってくれた。

泣いて泣いて、私達は走った。
妹を私が守った。
でも、そいつはいつの間にか増えていた。
妹が私の目の前で消える。

絶望した。
泣いて泣いて、叫んで私は走った。
そして気が付いた。

私以外の人間が見つからない。
そいつは数を増やして生活をし始めていた。
私以外、生きている人間が居ない。

今までに感じた事の無い恐怖だった。絶望を知った。
自分の死を覚悟した瞬間より、大切な人がいなくなるより、私は世界に私しか居ない状況がとてつもなく恐怖だった。
怖い。死ぬ事よりも怖い。

そして私は恐怖と絶望の中そいつに食べられた。


数年が経った。
目の前にそいつがいる。前回の夢の続きか。
私は理解したと同時に忘れていた恐怖を思い出した。

怖い。私しかまた生き残らなかったらどうしよう。
だから、逃げるよりも前に人を助けた。感謝より何より私の為だけに人々を助けた。

多くの人を助けたけど、結局私はそいつに潰された。

恐怖心から人を助けたけど、恐怖を作り出す元をどうにかしない限り安心は手に入らない。
そして、私は戦う勇気を身に付けた。


昔、小学生の頃に見た夢の話です。
6年間かけて見た夢で1番怖かった話です。

普段から不思議と夢の続きを見ることが
多いのですが夢の中で
ふと「あ、これあの時の夢と一緒だ」と
気付いて行動や言動を変えてみたり
現実で絶対に出来ないような事をしてみたり
する様になったきっかけの話でもあるんです

前回、「鬼」を書いていた時に
鬼を倒そうって発想になった
原因はこれだったなと
思い出したので書いてみました。
私は元々人見知りで
引っ込み思案で
意地っ張りな性格をしていました。

でも、夢で多くの事を経験していく内に
私にとって大切なモノは何なのかを知って
より大切に思えたり
人見知りだからと逃げないで声をかけてみたり
少しづつですが
嫌いだった自分が好きになれる様になりました

人間、多くの事を経験しないと
良くも悪くも変われないんだなって思います。

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