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俺通信

『俺通信』を受け取ったことがある女性はきっと多いと思う。

俺通信とは、”オレ”の出来事を一方通行の通信のように送ってくることを指す。
女性が聞いてもいないのに、今日の出来事や感想などを日記のように送ってくる。
好きでもない男から送ってこられても、女性にとってはただの迷惑でしかない。

俺通信を送ってくる人って、オジサンが多いのは気のせいだろうか。
しかも過剰、且つダサい絵文字といったいわゆるオジサン構文とセット。

「今日は○○を食べました(^ ^)」
「いま仕事終わってサウナに来ました(^_^)」
「○○なう(^.^)」(死語すぎて白目)

酷くなると、写真までセットである。

シンプルに興味ないんだわと言える関係性でもない人から送られてくると尚更きつい。



また個人的には、昔の男から送られてくる連絡も俺通信の中に入る。

こちらが忘れた頃に送ってくるのも特徴の一つ。

文面は決まって「元気?」とか「久しぶり」とか一見当たり障りない一言から始まるわけだが、
直訳すると「俺のこと忘れてないよね?」となる。

そしてこちらが返事をしようものなら、無意味なやりとりに満足してまた消息不明になるというオチまでセット。

女性には知られていないだけで、実は男性だけに秘密結社からマニュアルでも発行されているのかと疑うほどお決まりのパターンな気がする。





『女は上書き保存、男は名前をつけてフォルダー毎に保存』とはよく言ったもので、きっと男性は過去の女であっても、オレのことまだ好きだよねと本気で思っていそう。



女性は男性に比べると、記憶力が良い。
子どもを産み、そして育てる責任があるから。
右も左もわからない初めての育児であっても、過去の自分の記憶や経験を総動員させて、育児に役立てる必要があるから本能として備わっているらしい。

なぜ、男性には備わっていないのかと神様を呪いたくなる。





それに別れた後の男女の反比例はとても興味深い。

別れた直後の女性はこの世の終わりというほど傷付き落ち込んで、目をお岩さんのように泣き腫らす。
中には友人に散々愚痴ったり、ドカ食いしたり、うまく憂さを晴らす人もいるだろう。

一方で男性は、開放感に満ち溢れ、自由を満喫し、別れてよかったと心の底から思う。


これが数ヶ月後には、面白いほど逆転する。


女性は新たな出会いの場に参加するほど元気を取り戻し、なんなら失恋をバネに女磨きに精を出し、女性としてのレベルアップを果たしたりする。

一方、男性はなんとなく寂しい気持ちになってきて、元カノがレベルアップしていようものなら逃した魚は大きかったと大後悔。
やっぱりオレのことを理解してくれる人は元カノしかいない、失ってから大切なものに気づいたといった典型的なパターン。


一般的に記憶力がいいとされている女性に対して、自分にとって都合の悪いことはすっかり忘れているからこそ、男性は俺通信なんて送れるのだろう。


ワタシ(女)通信なんて聞いたことがない。




長期にわたる俺通信

早いもので2020年の新型コロナによる緊急事態宣言から4年近くの月日が流れた。

ちょうどこの時期に別れた男性がいるのだが、まさに”俺通信”男であった。

通信パターンは様々で、LINEでお決まりの文面を送ってきたり、SNSでDMやリアクションを送ってきたり。

先述した通り、別れた直後はこちらも心揺らぐ局面があったりしたものだが、流石に別れて1年以上経った頃には、女子会での鉄板ネタと化した。

「お盆休みはいつまで?」ときた時には、オカンかよ。とついツッコミ返してしまった。


だがこの元カレの不思議なところは、通信だけに留まらい点であった。

通信に紛れて、たまーに食事やドライブ等に誘ってきたりする。
しかも何度も。


昨年、2023年も本格的に冬入りしたかというタイミングで、いつもはスルーするようなSNSのリアクションが来たが、なんとなく気が向いて返信をしてみた。

そこから少しやりとりをするうちに、
「久々に一杯行きますか」と誘いがきた。

誘ってこられると面倒くさくなるという天邪鬼っぷりを発揮して、
「お酒飲まない(絵文字なし)」
となんとも可愛げゼロの文面で返したにも関わらず、

「ドライブでもいいけど」とダメ押しが返ってきた。


ここまでくるとメンタル鬼つよ。と感心すらしてしまった。

それと同時に、塩対応している張本人の私が言うのも違うが、なんだか可哀想にもなってきた。

とはいえ、スーパー気分屋の私なので全く乗り気にならず、会うことはなかった。



しかし、後日ふと思った。

気づけば別れてから3年半もの歳月が経っているにも関わらず、定期的にくる俺通信は果たして何目的なのだろうと流石に知りたくなった。

いや正直に打ち明けると、こんなに面白いネタはないと思った節もある。(ゲスの極み)


思い立ったら吉日とばかりに、いつもの俺通信のタイミングとは別で、こちらから連絡した。


決戦は金曜日

履いていますか〜履いていませんか〜安心してください、履いてます!! By安村のノリで、

会いますか、会いませんか〜〜〜いや、会いません!!!!みたいな関係をだらだらと数年続けていたにも関わらず、こちらからアポを押さえにいったら、2日後の金曜日に会う運びとなった。




決戦、当日。


待ち合わせ場所に向かう道中にふと思ったことは、どんな顔してたっけ?であった。

別れてから3年半もの間、全く会っていなかった。
しかも付き合っていた期間も長くはない。


なんなら付き合う前の初対面時、まず最初に思ったことは、
「タイプの顔じゃないな」
だったのである。(普通に失礼)

タイプの顔ではない男の顔を本気で覚えていなかった。


そして3年半もの期間を経て会ってみると、

「やっぱりタイプの顔じゃないな」
と、再会して思ったことも同じであった。
(めちゃめちゃ失礼)



そうはいっても、やはりなんとなく懐かしい気持ちがした。

照れ臭さも相まって、
席に着くやいなや開口一番に私から

「え、声変わりした?」

とアホ丸出し発言で、ひと笑いかっさらうことに成功した。(?)



気づけばあっという間に3時間半近くの時間が経過していた。

気心知れた仲なので楽であるのはもちろんのこと、話していてシンプルに楽しく、涙が出るほど大爆笑する場面もあり、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせた。



だがしかし、この楽しさって恋愛の楽しさではないのである。

男友達のノリのような楽しさ。

No ドキドキ。



交際中も別れた後も全てを知っている親友に顛末を話したところ、
「会っていない期間の恋愛の話とかしなかったの?」と聞かれハッとしたが、
恋愛のレの字も全く出ていない。

「むしろ元恋人という関係で、他に何話すの?」と聞かれた。


思い返してみると、

仕事、健康、投資、不動産、旅行、老後。。

・・・じいさんたちの会話かよ。



以前コラムでも書いたが、思いつきで韓国へ一人旅をしていた私であるが、彼も同じくらいのタイミングで海外一人旅をしていた。

国内で行きたい(ややマニアックな)場所を挙げたら、彼も訪れていた。

韓国ドラマ、ガイヤの夜明けといったニッチな番組まで2人共観ていて、その話で盛り上がった。
(ガイヤの夜明け観ている女ってどうなん)


他にも挙げるとキリがないのだが、思考回路というか趣味嗜好がすごく似ているのである。

だからこそ昔は楽しくて付き合うことになったような気がする。


これほど共通点が明るみになると、
普通ならときめきトゥナイトしそうなところであるが、

不思議なことに、トゥンクのトの字も一切起きなかった。



「あんなに好きだったのにね。」と、親友に3回は言われた気がする。



また、別の友人からは
「気心知れてる仲だし、そんなにノリが会う人ってなかなかいないよ。
恋愛っていう関係じゃなくて、それこそパートナーって関係性で考えたら?」とまで言われた。




女は上書き保存。

この言葉がこれほど沁みた日はない。



昔の男が小さく見えた


再会しているとき、ぼんやりと何故だか隣に座っている元カレが小さく見えた。

これは何なんだろうと思っていたが、帰りの道中にピンときた。


久々に帰省して両親をみると、小さく見える現象。

元カレに会って感じた感覚はまさにこれなのである。


両親が小さく感じるのは、シンプルに親の老いと、自分が身体的にも精神的にも成長した証と言えるであろう。


では、元彼が小さく見えるのは・・・?



まず先に謝罪しておくが、
日本人男性、30代に突入すると一気に老ける人多くない?

女性は美容に気を遣ったり、メイクをしたりしてカバーできる。
近年は美容男子たる者が増えたものの、今の30代以上で美意識高い男性って本当に稀。


食事やお酒もダイレクトに脂肪となり、ぶくぶく太った中年男性の多いことよ。
それにも関わらず、「本気出したらすぐ痩せる」と代謝のいい20代の時の感覚のままでいる不思議。
男性陣には口が裂けても言わないが、頭の薄さも気になってきたりする。



あと超個人的意見なのだが、老いのパターンって極論2つに分かれると思っている。
太るパターンと痩せこけていくパターン。


元カレは、完全に後者のような気がする。
前からスマートな体型であったものの、年齢を重ねて痩せていると、老いというか不健康さが露呈する。

同じ歳なこともあって、自分にもブーメランのように返ってきそうだが。




気になって本人にも会っていない期間に何かあったのかと聞いてみた。

本人曰く、「付き合っていた当時は東京から戻ってきたばかりなのもあって、まだ尖っていた部分もあったのかもね。丸くなったのかも。」的なことを言っていた。


確かに交際当時は、もっと覇気があって刺々しい印象だった。
交際相手というより、ライバル視されているような感覚があったほどである。


成長して、いい意味で丸くなっていた。

会っていない期間に勝手に想像が膨らんでいただけに、再会をして現実を知れたことはよかったと思う。



余談だが、
ずっと地方にいるにも関わらず、どんどんパワーを増して強くなっている私って一体・・・。


三十代の男性は、同世代の女を軽々しくババア扱いして女から総攻撃を受けるので、この時期はお互いあまり近寄らないのが良いかと思います。上手に距離を取るのです。
四十路に入れば、否応なく助け合う関係になるので、この時期(三十代)は同世代異性というだけで嫌悪対象にならないうちに、逃げろ!」

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 
ジェーン・スー


別れた直後に、この本を読んで大納得したのが懐かしい。




もしかしたら、あと数年経てば親友になれるのかもしれない。


それまでは俺通信を楽しむことにしよう。

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