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【句集紹介】現代俳句文庫 茨木和生句集を読んで

・紹介

 最近、奇をてらった言葉遣いの俳句に疑問を感じている自分がいる。初めのうちは「おお、こんな言葉も俳句になるのか!」「その視点の俳句は面白い!」などと感動した句たちが、同じ構文をぐるぐる回しただけの、ただの言葉遊びの羅列にしか見えなくなってきた。

 もちろん、面白く感動するような、トリッキーな句もたくさんある。しかし、小生がかつて「俳句ってスゲー」と感動したものとは何かが決定的に違うような気がする。

 そのもやもやしたものの正体は、今回紹介する茨木和生氏の句集を読んでなんとなく掴めた。それは「共感性」なのだと思う。

 言葉使いや構文が斬新な俳句には目新しい面白さはある。しかし共感はされるかどうかは別の問題である。新しい世界像を提示できても、「それで?」と終わってしまえば、それ以上の感動や余韻は広がらない。

 茨木和生氏の句には気負いがない。言葉の意外性がない。それゆえ、日常がある。平凡な光景の平凡な17音の言葉が、読み手の共感を誘って、イメージを増幅させる。

 俳句の真新しさを模索して、妙に気負っていた小生にとっては、一つの気づきになった句集であった。当たり前のことを当たり前に感じられる尊さ、ありがたさ。今後はこれを句作の一つのテーマにしていきたい。


・厳選10句

屋根の雪掻きて地上の雪増やす
学校が平地の最後雪の峯
牛小屋をガレージがはり草いきれ
分校は大きな巣箱小鳥来る
蟇の声殺し文句をいふならむ
日傘さし海美しとひとことを
山桜もみぢのときも一樹にて
松茸をこれほど採つて不作とは
冬の鹿フランスパンを引き合へる
本尊は粗末な如来山桜

・作者略歴

昭和14年奈良県大和郡山市生まれ。昭和31年右城暮石の「運河」に入会。昭和31年山口誓子の「天狼」に入会。「運河」編集長を経て、平成2年12月「運河」主宰。句集に『木の國』『遠つ川』等。平成9年『西の季語物語』で第十一回俳人協会評論賞を受賞。平成14年第七句集『往馬』で第四十一回俳人協会賞を受賞。平成26年第十一句集『薬喰』で第十三回俳句四季大賞を受賞。公益社団法人俳人協会副会長。大阪俳人クラブ会長、大阪俳句史研究会理事。日本文藝家協会会員。(本句集略歴より加筆)


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