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仕事でほとんど使わないのにフィルムで撮る意味

今日、カラーネガフィルムを自家現像した。

フィルムは高いし、現像には手間がかかる。スキャンまでするともっと時間もかかる。中判以上ならともかく35ミリだと、解像度でデジタルには勝てない。お金と時間をかけてやってみてもフィルムに傷がついていたり、スキャンでゴミが入ったり、あるいは原因不明の理由で画像に満足いかないこともある。とてもじゃないが依頼仕事をフィルムだけで撮ることはできない。

ではどうして自分はフィルムを使っているのだろう。理由をこの機会に考えてみた。

パッと思いつくだけでいくつか理由がある。まず、1)フィルムだと結果がすぐに見えないので、自分のイメージに画像を合わせていく作業をリアルタイムではできない。撮影に集中するし、撮影枚数は減る。2)ネガの場合は特にだけれど、デジタルにはない露出許容範囲の広さ、独特の色合いが出やすい。3)違うカメラを使うことで、依頼仕事とは違う心理状態になって気分転換になる。またフィルムを巻き上げる動作、自動巻き上げの場合でもその音にある種の気持ちよさを感じる場合もある。

もっと言えば、4)写真としてのデジタルが解像度を宿命的に追求するのに対して、フィルム、特に35ミリは逆のベクトルに自分の感性を向けることができる。つまり最新デジタルなら見えることを敢えてみないこともできる。暗い場所は映らないし、目に見えないものは写らないとでもいうような感覚。フィルムの時代にも敢えてハーフサイズを使ったり、粒子を荒らして情報量を減らした写真にそれなりの存在意義があった。また絵画でも3次元のものを2次元に落とし込み、精密な絵を実現することが写真にとってかわられ、近くで見ると筆づかいや色が現実とはかけ離れているのに、離れてみると説得力があり、人を惹きつける絵が存在する。フィルムにもこんな役割がもしかするとあるのかも知れない。

最後に、これはデジタルでも意識すればできることではあるけれど、撮影後の処理に時間がかかることで、編集の際には自然に少し離れた目で客観的に自分の写真を見ることができる。

自分を振り返ってみると、1、3が主な理由となっているように思う。2、4は頭で考えるほど生かしきれていない。インスタグラムで人気のアマチュアも含めた写真作家さんたちはこの辺りがうまくフォロワーが多いのも頷ける。

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