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【読書レポ】とかげ / 吉本ばなな

「癒し」が共通のテーマになっている6の短編集。
(新婚さん・とかげ・らせん・キムチの夢・血と水・大川端奇譚)

孤独と前進を緩やかな時間の中に歩んでいく雰囲気がとても心地良い。はじめて文豪・よしもとばななの本を読んで、内省の機微を深く描きながらも止まることなく一気に読んでしまう抜けの良さに感動。

寂しさとか哀愁みたいなものに共感して本を読んでいると、それを抱えながら一人強く歩んでいくような在り方をどこか期待する。だから、たやすく絆や繋がりを誇張したようなハッピーエンドを描かれるとひどく違和感をおぼえる。

とかげでは、主人公とたちにとって誰かしら近しい存在がいて、それらの距離感を通して主人公の変化がある。プラスに気持ちが動いていき、かつ違和感がない。何でこんなに寂しげでありながら、落ち着き損なわれることなく清々しいんだろう。

それは、関係性や状況自体の変化よりも、それらに対しての主人公たちの内側に焦点が当てられ鮮明に繊細に描かれているからだと思う。だから読み手の投影が途切れることなく癒されることができる。

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