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ディズニーアニメーションをたらしめるものは何か?映画「ウィッシュ」映画感想

こんばんわ!ハイエナのねいねいです。
字幕と吹替え両方見ました。現時点で思ったことを書き留めます。

全体的なクオリティが低くて、これがディズニー作品!?とビックリしているのが本音です。今日noteにまとめるのはマイナス意見です。以降読み続ける場合はご注意ください。


ディズニーアニメーションをたらしめるものは何か?

私がそう聞かれたときに答えるのは、
キャラクターに命が吹き込まれていること
・それを可能にしている圧倒的な表現力
です。

ウィッシュを見た時に、まず最初の感想は「命が吹き込まれていない」でした。

これを語るのに少しウォルトの話をします。ウォルトディズニーがアニメーション制作過程で何より大切にしていたことは、キャラクターに命を吹き込むことでした。

静止画しか作れなかった時代から映画用のカメラ技術が発展してアニメーションが作れるようになった当時、アニメーションに無限大の可能性を感じて人々に響くものは何か?ディズニーは分析と研究をたくさんしました。

「他のアニメーション作品」と「ディズニーアニメーション作品」の"違い"が、その後のディズニーの運命を大きく変えてるのですが、それは「命を吹き込むこと」でした。

「命が吹き込まれるってどういうことなのか?」順を追って説明していきます。

アニメーションは「芸術」

ウォルトはアニメーションは"芸術"だと言います。芸術は人々を惹きつける力があります。ディズニーアニメーションは"芸術的な魅力"があるのです。

でも芸術って生み出すのはそう簡単じゃない。アニメーションは何か一つでも変化を与えると大きく変わるものだし、タイミングの問題、キャラクターの良し悪し、脚本、音楽、音、台詞、カメラの位置や動き、アイディア、他にもたくさん、どれか一つではない全ての要素を総合したもの。ディズニーのクリエイターでさえも、何が正解なのかは分からないので、何度も書き直し、良い作品になるように努めてくれているのだ。

"芸術"は「心に語りかけるもの」

ディズニーでは、映画の中に観客を巻き込んで、登場人物たちと"同じ体験"させる仕組みを入れるように意識しています。

観客が経験していることや普遍的に持っている感情を取り入れば、あとは観客が自然に主人公の気持ちになって一緒に考えたり想像してくれる。

そして、その想像はアニメーションの力より遥かに訴えかけるものが大きい。何故なら、観客が頭の中で現実に置き換えてくれるから。ここが大切なのです。

イマジネーション!!!!!!ハハッ🐭
つまり、観客の想像力を掻き立てる仕組みを必ず入れるようにしています。

アニメーションは「非言語コミュニケーション」

ディズニーがアニメーションで伝えたいのは「感情」です。おそらくそれはウォルトが「子供時代の楽しいかったこと、嬉しかったこと、体験したことを観客にも感じさせたい」ところから来ているのかも知れません。

なので言葉で届けるのでは無く、あの頃の感情や体感というレベルで伝えたい、心に訴えかけたいんだと思います。

以降この記事では、表情とは記載しますが、悲しいという言葉も、"言葉"で受け取るのではなく、心で感じる"感覚"に置き換えてもらえると、共感という言葉も感じ方が違ってくるかと思います。

面白いですよね。言葉では説明しきれない感情や感覚、伝えたい相手の記憶や心に残っていれば、より深く理解や共感してもらえる、言葉よりも強いパワーをもっている非言語かも知れません。

「ある感情やある感覚を伝えること」がどんな芸術形式においてもコミュニケーションの本質です。

芸術は「心に訴えかけるもの」なので、あなたの心へ語りかけている"感情"なのです。

動物や人間は、非言語コミュニケーションがすることが出来てます。動物なら服従の姿勢や挨拶の姿勢があり、犬の場合は表情や態度、行動パターンで人間と非言語コミュニケーションで対話しています。言葉にしなくても感情や気分を伝えることができるのです。

台詞や文字を除けば翻訳作業も要らないので、どんな国の人でも基本的には伝わるものとなってます。

「命が吹き込まれる」ってどういうことなのか?

具体的にわかりやすく説明します。

①動物の絵を描く

②動物にちょっとした動きを加える(※アクションを用意する

③動物に感情を与える

「飛び跳ねる」というアクションを選んだ場合、何故飛び跳ねるのか?という動機や理由があります。

"嬉しい"から飛び跳ねる
虫を踏みそうになり"びっくりした"から飛び跳ねる

アニメーションは基本的にこのアクションを使いこなして作成していきます。

ディズニーの「命を吹き込む」というのは、③の”表情を与える”作業のことですが、ディズニーは一味も二味も加えているのです。

③の内容が薄いと結局は命が吹き込まれたように感じないのです。

ディズニーはここを1番大事にしていて、アニメーションとしてどう表現すれば良いのかをたくさん研究しているので表情を与える作業がすごくうまい!

ディズニーのキャラクターは、表情や個性、行動理念に繋がる精神面もしっかり描くように作られており、観客に理解される、伝わる、共感できるものが仕込まれています。そして与えた表情の見せ方もディズニーはとてもうまいのです。

ディズニーの素晴らしい表現力

アニメーションは非言語コミュニケーションと説明しましたが、アクションを並べるだけではあまり心に響くようなものになりません。より深く心に訴えかけるには、表現力はめちゃくちゃ大事です。

素晴らしいクリエイターは普段の会話もコミュニケーションがうまいらしいです。伝えたいことをちゃんと伝える能力があるんでしょうね。

わたしは映像や音楽がもたらす効果、そういった演出を楽しむことが好きなのでディズニー限らずここらへんを意識して鑑賞してます。

最近のアニメーションはどんどんクオリティが良くなってきていますが、やはり圧倒的にディズニーはレベルが高いと思ってます。

キャラクターに感情や表情を与えることは今や当たり前の作業ですが、アニメーションは大げさな方がより伝わりやすい。しぐさや癖など、細かい1つ1つの行動の見せ方や工夫も大切です。

ディズニーキャラクターの動きってとても印象強く記憶に残りません?そう言うことです。

悲しい時はただ悲しい顔すれば良いだけじゃない。その悲しんでいる気持ちをしっかり観客に届けて共感してもらってこそディズニーアニメーション。

表情が付いていてもカメラから遠かったり、表情がついてるキャラクターに注目させるようなシーンになってないと観客はよそ見して表情を見逃してしまう。(ウィッシュはこれがめちゃくちゃ下手くそだと思った)

キャラクターだけでなく背景も"表情"を伝える手段としていろんな工夫がもり込まれている。そして盛り上げるシーンは画面全体隅々まで心がグッと惹かれるような演出がある。それはディズニーが圧倒的な表現力があるからこそできることで、だからディズニーの世界観に魅了されるんだと思います。

ウィッシュの感想

ようやくウィッシュの話に戻れるのですが、これらを踏まえた上で、私が感じたウィッシュに足りないものは「命が吹き込まれていない」です。今回の感想はこれに絞って書きます。

ウィッシュの中でどの表情を共感させるべきだったのか?というポイントに絞って、どこが悪かったのか具体的に書くとしたら、

マグニフィコ王は「自分の夢を失ったから悲しい」と台詞で言っていたけど、「悲しいから下を向く」という表情はあるものの、精神面や心の痛みを描いてないから表面上だけでしかなく、それ以上観客を惹きつけるものがない。

また、悲しみってより心に届けないといけない感情なので、いつものディズニーなら時間が止まったかのように尺をたくさん費やします。観客が悲しみを共感できるような時間をくれるのです。※これアニメーションにおいてだいぶ大事です。

ウィッシュのこのシーンは切り替わりが早く、マグニフィコ王の気持ちは頭で理解できても、マグニフィコ王の気持ちにしっかり共感するところまでいかないのです。

精神面を描くためにマグニフィコ王のタペストリーの背景説明は必須だったように思います。その後のマグニフィコ王の行動理念や信念につながる重要な要素です。しかも信念が描けているとマグニフィコ王の正義感もより強く感じるはずです。

そして、マグニフィコ王の精神面を見せることで、"夢を失う痛みの共感"が出来ていれば、その後マグニフィコ王が"町の人の夢を壊したとき、痛みもどれだけ痛いのか"想像できたかもしれない。

とてつも無い消失感だったかな、アーシャのママさんがそんなような台詞で説明してたけど、ただ痛がってるように見えて、心にまでグッと痛さが伝わらない。夢を失う痛さというのは精神的な痛さなので、しっかりと描き込む必要があったと思います。

アーシャについても映画冒頭「孫とおじいちゃん」という関係性の説明はあるものの、おじいちゃんが「100歳だから夢を叶えてほしい」というだけで、物語が突き進むような動機としてはちょっと弱いです。仮にも主人公なので、行動理念はしっかり描く必要のあるキャラクターだったと思います。

個人的に命を吹き込んでほしかったのはサイモンです。裏切ることに葛藤はなかったのか、友達を裏切るほど夢を失ったまま生きる辛さなど、サイモンの心の痛みが全く共感できませんでした。

感情をしっかり観客へ伝えることができてない、人形のように脚本のためにそういう行動させられているキャラクターになってしまってる。謝るシーンはあるものの、サイモンの気持ちに深く入りこんで「分かるよその気持ち!!私も同じ状況ならサイモンと同じことをしてたかもしれない!!」とまで同情できないのです。みんなはサイモンの心の痛みどれぐらい感じ取れましたか?

民衆がたくさん集まってるシーンで、サイモンが意味深な表情を浮かべている時、画面の中央にいない、切り替わりが早くサラッと流れてしまうので、サイモンの表情を見逃してしまう人もいたかもしれません。もしくはその瞬間に気がついても、その伏線になんの疑問も思わない、印象に残らない。

もうちょっとその瞬間のサイモンに注目度を与えられなかったのか?表情が付いていても観客に届かない可能性がある。※サイモンのシーンだけではなく全体的にこういったキャラクターの表情の見せ方が弱いです。

主人公って葛藤して悩んで苦しんで決断して行動を起こすけど、アーシャもそんな葛藤して苦しんでるのが強く伝わるようなシーンになってないから、アーシャ一人だけで完結してて、観客が置いてけぼりになって、一緒に悩んだりする隙間がない。気が付いたら最後のみんなで夢を取り戻すシーンになってる。ここは感動するんだけどね。笑

ディズニーといえばミュージカル。視覚的にも聴覚的にも、より記憶に残してもらうため心へ訴えかける重要なシーンですが、視覚的に素晴らしいというものがないです。

「輝く願い」という曲、人々の夢(青い丸いボール)がくるくるしてるだけで、背景も無表情、エフェクトも弱い。曲はいいのにもったいなさ過ぎる。今までの圧倒的な表現力はどこいったし!!!!!!!!

最後の夢を取り戻すシーンはいつものディズニーの表現力なら多分もっともっと視覚的に心に訴えられるような演出になっていた、いいものが出来てたと思う。クライマックスだしもっと豪華にエフェクトも焚きまくればいいのに、本当に控えめです。

脚本のベースは良くて、一般的にみんなが好むような王道なもので、わかりやすいメッセージ。それをディズニーアニメーションとして組み立てないといけないのがいつものように組み立てられてない、ウォルトが大切にしてきた命を吹き込む作業、ディズニーとしては確実に描ないといけない事だと思いますがそれが出来てない。

この作品ほんと「命を吹き込む」作業といつものクオリティがあったら、評価結構高かったんじゃないか?と思います。だからこそ本当に勿体無い。

ただ、そもそも全体的に心配になるほどクオリティが低い。細かいところを言い出すとキリがないけど、あれだけディズニーが過去に馬を描いてきたのに、馬や鹿のアニメーションがおかしすぎる、ぎこちない。

音楽と映像が合ってない。窓を閉めるシーンと太鼓をたたいてるシーンでカメラにまだ太鼓が収まっているのに楽譜と映像が合ってない。粗探しのように細かいところの指摘をごめんなさいだけど、でもこんな細かいところも抜かりなかったと思うぞディズニーアニメーションって。

人物もたまにカクカクしてる(なめらかではない)表情も動きも全体的に硬いし、機械的に動いているように見える、今までのディズニーのアニメーションとは思えないぐらいひどくて、裏で一体何が起こっている????何かがおかしいです。

今回初の2Dと3Dの融合!初挑戦でシェーダー(表面の質感)を変えていてそれにあった魅せ方を全然研究されてないように思います。

2Dから3Dに切り替わった時は(塔の上のラプンツェル)はクオリティは維持、髪の毛の表現など申し分ないほど研究されていたし、他の作品も流石ディズニーだなと思わせるぐらい表現の研究していたと思います。

アニメーターやクリエイターの技術力を指摘しているのではなく、研究やクオリティアップの時間を何故費やしてないのか?そっちです。

アナ雪3と4にアニメーター全勢力つぎ込んでてウィッシュのクオリティ維持が出来なかったとかなら…今のディズニーの状況として絶対失敗できないアナ雪は成功させないといけないから、ウィッシュはしょうがないで終わるんですが、何か別の問題がおこっているとかなら心配です。

最後に

そもそも大前提として脚本が甘く説明がもっと必須だと思いますが、ディズニーアニメーションとして、これはディズニーの芸術的な良さがあるのか?と問いただしたとき、私は認め難い気がします。

とマイナス意見は言いましたが、実は結構ハマってる。楽しめるところはあるので、まだまだ映画館へ足を運びたいと思います!

最後までお付き合いありがとうございます。
また別の視点での感想は書くかも?それでは~

スターかわいすぎる

参考:The The Illusion of Life 生命を吹き込む魔法


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