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連載中の月刊ショパン7月号発売中です‼️

連載7回目は、ヨーロッパの教本として、ウクライナ出身の作曲家、教育者、ピアニストのマイカパルの教本に焦点を当てました。ペダルのための20のプレリュードOp.38です。

サムイル・モイセーヴィチ・マイカパルは1867年ウクライナのヘルソン市に生まれ、ロシアのペテルブルク音楽院で学びました。卒業後は1910年くらいまでドイツやロシアで演奏家として活躍し、その後は1930年までペテルブルク音楽院の教授を務め、1938年レニングラードにて亡くなりました。
教育者として活躍中に、初級者向けの音楽教育を研究し続け、沢山の作品を残しています。
この教本は、ペダリングの学習に特化した教本で、鍵盤楽器の進化によって、楽器のサイズや鍵盤の数、見た目だけではなく、その発音原理や出せる音量や音色など音世界が広がったこと、ペダルの機能も多様化し、その技術を磨くことがピアノ学習に求められるようになったからこそ、誕生した教本と言えます。
まるで、マイカパルの講座を拝聴したかのような気分になる、ペダルの基本についての解説から始まり、
彼自身の作品20曲によって、様々なペダリングについて学べるように考えられています。
ウクライナ以外の国々にも、ロシアで音楽を学んだ人々はたくさんいます。ロシアはチャイコフスキーをはじめ、偉大な作曲家をたくさん輩出している歴史と伝統ある国です。また、リヒテル、プレトニョフやキーシンなど素晴らしいピアニストもたくさんいます。その歴史ある音楽教育は、ピアノ教本にも現れています。写真左は1979年に日本に初めて紹介された旧ソヴィエトのピアノ教本で、中央はその原著。右は1981年に次いで日本に紹介された旧ソヴィエトの教本です。この教本の翻訳に関わった寺西昭子氏は、その後、旧ソヴィエトの幼児のためのピアノ教本「小さなピアニスト」の翻訳、校訂、監修にも関わっています。とてもわかりやすくてよく考えられた教本ですが、日本語版は全て絶版になっていて残念‼︎
マイカパルのペダルのためのプレリュードOp.38の翻訳に携わった村手静子氏は、ロシア奏法によるピアノ教本 はじめの一歩の翻訳にも携わっていらっしゃいます。この教本は、現地のガッチナ市立児童音楽学校のピアノ.特別クラスで用いられ、教育的に成果のあったものが集められ、編集されています。
悲しいことですが、ヨーロッパでは、今日に至るまで様々な戦争や革命が何度も繰り返されてきました。伝統を築いてきた世界の芸術史の中で、ロシアが果たしてきた役割は大きく、旧ソヴィエト時代の音楽教育の方法や考え方は、ヨーロッパ諸国、さらには遠い日本のピアノ教育にも影響を及ぼしてきました。現在、ロシアのピアノ教育法を取り入れたり、影響を受けて出版されている日本のピアノ教本は、全て旧ソヴィエト時代のピアノ教育法に基づくものなんですね。この写真の本は、1983年に出版されたものですが、アメリカの幼児音楽教育の考え方が、ロシアに影響を与えているという記述があります。
興味深いことです‼︎
この連載をお引き受けした際の執筆する内容の年間計画の中に、マイカパルの作品は当初から予定していました。ところが、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まり、現在も大変な状況が続いています。残酷な報道を目の当たりにする度に、ロシアやウクライナの教本について書くのがだんだん辛くなってきました。結局、出版社にお伺いした上で、予定通りお願いしますとのメッセージを頂き、執筆いたしました。
心から平和を祈らずにはいられません。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。


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