痛み




長らくその存在に気が付かなかった。



多くの人に出会い、支えられ、助けられ、迷惑をかけてきた。



迷惑の数だけそれは痛みとなった。



それは次第に無視できないものとなっていた。


それは自分の中で反響し、あるいは誰かと共鳴し、肥大していった。


分かち合うことで輪郭は濃くなり、やがて自分の範囲を超えていった。



それは私のすべてを覆い尽くし、深い闇へと誘った。



深い闇では藻掻き様がなかった。


闇では右も左も、前も後ろも、上も下も確かめようが無かった。



その闇から掬い上げてくれたのもまた誰かだった。


多くの人に出会い、支えられ、助けられ、また迷惑をかけた。


迷惑の数だけそれは確かさとなった。



それは私がかけた迷惑ではなく、


私が勝手に死んだら迷惑だった。



この人達は、


私がひとりで蹲っていたら放って置かない。


私が「頼む」と言ったら、「わかった」と言う。


『助けて』と伝えたら、駆けつける。


私がひとりで勝手に苦しむのを決して許さない。




その痛みは、愛を知った痛みだった。



だからもう隠さない。


隠すと忘れるから。


忘れるとまた繰り返す。


忘れないで生きることが償い。



完全に蓋をせずに共にある。



私は痛みと共にある。


私は愛と共にある。











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