韓国の人って温かいなぁと思った話。

韓国でバスに乗ったことがある方はご存知かと思いますが
韓国のバスの運転手さんは、バス停にどれだけお客さんが居ても
タクシーのように『乗ります！』というアピールをしなければ
止まってくれません。ドアも開けずに通り過ぎてしまうんです。

ソウルでは観光客の方も多いですし、バス会社の教育で
『止まるように』という指示をされているかもしれませんが…

とにかく私が住んでいるスウォンでは、乗りますアピールは必須です。
バス停のベンチに座っていたり、バス停に立っているだけでは
そのまま素通りされてしまいます。
ですから、自分が乗りたいバスが遠くに見えたら
車道ギリギリの所に立ち、バスに乗ります！という姿勢をとるか、
タクシーのように軽く手をあげて止めなければなりません。
（ 親切な運転手さんは、乗りそうな人が居ない時は念の為
クラクションを『プッ！』と鳴らしてバスが来たことを知らせてから
通り過ぎてくれたりもします。）

そして事件が起こったのは、今年７月のことです。
ある日の朝、私は出勤の為にいつもの最寄りのバス停で
いつも通りバスを待っていました。

その日のバス停には、私と、もう一人のお客さんしか居ませんでした。
もうすぐ、２台のバスが到着するとのアナウンスがあり
私も、もう一人のその人も、目的のバスだった為
車道側に立って待っていたんです。

２台のバスが、続いてバス停に近づいて来ましたが
先頭車両は私が乗りたいバスではなかったので、そのまま立っていました。
その間に、待っていたもう一人の方はその先頭のバスに乗り込みます。
さぁ、私は後方のバスに…と思っていたその瞬間、
先頭のバスを凄いスピードで追い越して行くバスが見えました。
まさか、と思った通りで、後方のバスは私たちが二人とも
先頭のバスに乗り込んだ＝バス停にお客さんは居ない、と
確認もせずに勝手に判断し、停車せずに通り過ぎてしまったんです。

私は一瞬頭が真っ白になり、追いかけようと体が動きましたが、
追いつけるはずもないのですぐに諦め、ショックとパニックで
『次のバスに乗ったら遅刻してしまう…』と焦っていました。
（タクシーに乗れば間に合いますが、やはりバスに比べると高いのでㅠㅠ）

そんな考えを走馬灯のように巡らせていると、
先頭バスの運転手さんが、ドアを開けて大きく手招きをしていたんです。
『急いで！！乗って！！』という言葉が聞こえ、考える暇もなく
ただただその言葉に反応し、運転席側の入り口から乗り込みました。

すると運転手さんが『前のバスに追いついてあげるから、
タイミングをみて前のバスに乗り込んで！途中まで路線同じだから！
全く、確認もしないで行くなんて(ごにょごにょ…)』
と優しく言ってくださったんですㅠㅠㅠ
『ありがとうございます‼︎‼︎』と何度も伝えましたが、
私は驚きと感動と、そしてそのバスには２~３人の乗客の姿もあったので
『これ、大丈夫なのかな…』という不安とで、
もう、心臓がバクバクしていました。

通り過ぎてしまったバスはと言うと、急ぐ事情があったのか
相変わらず物凄いスピードでどんどん進んで行きます。
こちらの運転手さんも負けじと、時折交通ルールを無視しながら(？)
前を行くバスとの距離を縮めようと一生懸命動いてくれました。
しかしなかなか追い抜くことが出来ず、私は終始焦っていたのですが
運転手さんは変わらずにこやかな表情で、『いや〜速いなぁ〜』
『次の次のバス停が最後のチャンスだから、
そこで追い付かせるからすぐに乗るんだよ』
と、ずっと声をかけてくださっていました。

そしてその言葉通り、最後のバス停までの直進の道路で
前のバスをぐいっ！！と追い抜き、
『すぐ後ろにバスがいるから、乗ったらいいよ！』
という運転手さんの声を聞きながら、私は無事に
当初乗るはずだったバスに乗り込むことが出来たのでした。

韓国だから、日本だから、と分けるつもりはありませんが、
こういうイレギュラーな事はやはり韓国らしさを感じますし、
日本では、なかなか遭遇することが無さそうな出来事ですよね。
こういうところも、韓国の方たちの『情』なのかなと…。

慌てていた為名前も聞けず、普段利用するバスではないので
それ以降その運転手さんと会うことは出来ていません。
バス会社に電話して、事情を説明するのも何だか気が引けて、
結局何も恩返しが出来ていないので心苦しいのですが、
その運転手さんが親切心でしてくださったこの行動は
私の韓国生活の中でも大きな思い出になっていますし、
これからもそのバスを見る度に、ずっと思い出すと思います。

５０代後半〜６０代前半でしょうか、
私の父と同じくらいの年齢の方かと思います。
あの運転手さんが、これからもずっとずっと健康で、
笑顔で過ごせたらいいなぁ、と心から願っています。

最後まで読んでくださってありがとうございます。
明日もいい日になりますように：）