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よく考えよう、名前は大事だよ。 〜 映画『おもいで写眞』に学ぶ、顧客視点とネーミング 〜

こんにちは。1日1本映画を観るため、定時退社を宣言しているQAZです。映画をヒントに、仕事や生活をちょっと良くしようというnoteを書きはじめました。

今回は、映画『おもいで写眞』から「商品やサービスの“いい名前”」について考えます。


遺影を撮りませんか?

たった一人の家族だった祖母が亡くなり、メイクアップアーティストになる夢にも破れ、東京から富山へと帰ってきた音更結子。祖母の遺影がピンボケだったことに悔しい思いをした結子は、町役場で働く幼なじみの星野一郎から頼まれた、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける。(映画『おもいで写眞』公式サイトより)

主演は乃木坂46を卒業した後、女優としてのキャリアを着実に築いている深川麻衣さん。苛立ちが顔だけでなく行動にまで出る、触るものみな当たり散らす女性・結子を演じています。

その結子に遺影撮影の仕事を依頼する町役場の職員に高良健吾さん。結子の不機嫌を嫌な顔一つせず受け止める、行列のできる町役場なハイスペ公務員を演じています。



ある女性の一言に人生を狂わされ、ある一言に人生が報われる、ベッドの下で息を殺すストーカーを演じた高良健吾さんが観たい方には『アンダー・ユア・ベッド』がおすすめです。

“遺影”写真ではなく、“おもいで”写真

そんなことはどうでもよくて、撮影のため高齢者が住む団地を訪問しはじめる裕子ですが、“遺影”と聞くなり「縁起でもない」と迷惑がられ、門前払いが続きます。ケースワーカーの助けが転機となり、一人の高齢女性・和子が「ある場所で撮影すること」を条件にようやく承諾してくれます。

そこは和子が長年働いていた仕立て屋でした。和子は、メイクアップアーティストの資格を持つ裕子にメイクされ、色とりどりの糸が並ぶ棚の前で撮影された写真を見て、「遺影写真じゃなくて、おもいで写真だね」と満足気につぶやきます。

この言葉をきっかけに「遺影」ではなく「『おもいで写真』を撮りませんか?」と伝え方を変えたところ、撮影の依頼がみるみる集まりはじめたのです。

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画像引用:映画『おもいで写眞』公式

「誰に」「どんな魅力となりうるか」

このエピソードで思い出したのが、10年ほど前に知った無印良品のとある商品の話。通常販売の売上が鈍く大幅値引きの在庫一掃していた商品でしたが、「顧客視点」で見直しを図り、計画の3倍を売り上げるヒット商品になったのだとか。

その商品は「たためるジャケット」

見た目はちゃんとしたジャケットなのに、ナイロン素材でたたんでもシワにならず、楽に着られる。肩パットが入っていないため、カジュアルウェアにもよく合う着回し万能な一着。・・・のはずが、ヒットには至らなかった。

その理由を「“たためる”のメリットが消費者に伝わらなかった」と結論づけ、改名/改良することに。

ネーミングも商品の一部。「わかりやすさを最優先」し、機能はそのままに『旅に便利なジャケット』と改名。旅行に向かう人に「一枚持っていれば不意に必要な時に困らず、しかもシワになりにくい」と、メリットをわかりやすく提示し大ヒット商品に。

従来のジャケットから軽量化したり(Product)、空港内店舗とECサイトの旅行カテゴリのみに販路を限定したり(Place)、旅行雑誌のみに広告出向したり(Promotion)、1万円でお釣りがくる価格にしたり(Price)と、4Pの整備も当然あったようですが。

※2021年2月現在、取り扱いがないようです。

無印良品では他にも、『紅茶クッキー』や『さつまいもかりんとう』など、「本当は美味しいのに、あまり売れていなかった商品」を、パッケージとネーミングを『ぽち菓子シリーズ』変更したところ、「ちょっとしたお礼にちょうどいい」と女性客を中心にバカ売れした例もあるそうです。

なぜつくるのか?なぜそれが必要なのか?

電通のコピーライター阿部広太郎さんは「名づけることで生命力を与える」というイメージを持ってネーミングの仕事に取り組まれているそうです。

「『大量生産・大量消費の時代』である現代、『モノ』があふれているだけでなく『言葉』すらも溢れかえっている」

そこで重要なのが「意思」という土台をしっかりと持つこと。

『おもいで写真』であれば、自分の人生を肯定し、残りの人生をより楽しむため
『旅に便利なジャケット』だと、ストレスを減らし、手軽に楽しみを増やすため

ネーミングを考える前に「なぜつくるのか?なぜそれが必要なのか?」と疑問を思い浮かべ、土台をしっかりと固めたうえで言葉選びに取り組むことが求められると阿部さんは言います。


もう一つ着目したのは、二つの例とも「ありきたりな言葉の組み合わせ」である点。伊藤園『お~いお茶』のもともとの名前は『缶入り煎茶』だったそうですし、サントリーの『BOSS』も発売当時は『WEST』という名前で、「働く人の理想という意味を込めた」改名後にヒット商品になったのだとか。

ネーミングなどを考えるとき、つい複雑な言葉や新しい言葉を考えようとしがちですが、単純なことが何よりも大事であると、言葉でなく心で理解できます。

誰に、何を提供できる存在なのか。
自分の肩書きについても、あらためて考えてみたいと思いました。


では、また。

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