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家族4人分の水筒洗いを十年以上続けて思うこと|コラム


十年以上の間、ほぼ毎日、家族4人分の水筒を洗っています


思い返してみれば、小学校の運動会や遠足でしか使わないと思っていた水筒ですが、今では様相が一変し、子供、大人を問わずに持っていることが当たり前とさえ言える状況になっています。

その背景には、90年代から段階的に生じた以下のことに主な要因があるようです。

  • 水道設備に起因する食中毒の対策:小中学校では水筒を持って行くことに

  • ペットボトルごみ削減の意識向上:社会人も水筒持参が当たり前に

  • 水筒の進化:飲みやすく、持ち運びやすく、衛生的に

※水道設備に起因する食中毒の対策は、居住地域により方針が異なります。

筆者の家庭も例外ではなく、家族4人全員が水筒を使っています。
子供は土日でも持ち歩いていて、夏休みの部活動時にはスポーツドリンクと麦茶の水筒2本使いをしていました。
従い、ほぼ毎日水筒を洗うこととなり、気が付けば十年以上が経ちました。

全ての部品が分解でき、パッキンも外して洗えるように水筒は進化していますから、衛生面を考えれば安心です。

ただし…

毎日洗う立場からは、現在の水筒に満足とは言えないのです


毎日家族全員分を洗うのは、それだけでひと苦労です。特に以下のことが筆者を悩ませます。

  • 筒本体、蓋、飲み口、パッキン2個…と部品が多い。

  • 蓋、飲み口、パッキンに凹凸が多く、隅々までブラシが届かない。

  • 蓋、飲み口、パッキンに凹凸が多く、洗った後の水がなかなか切れない。

  • 蓋、飲み口、パッキンに凹凸が多く、乾きにくいし拭きにくい。

飲み口に関しては、子供が幼少時にはストロータイプを使っており、更に部品数が多かったです。

結局、筆者は次のような作業を毎日20分ほどかけて行っています。

  • 全てを分解しをスポンジで洗う。

  • 筒本体の内側を長いブラシで洗う。

  • 蓋、飲み口、パッキンの凹凸部を細さが異なる2種のブラシで洗う。

  • 蓋と飲み口の通気穴を棒ブラシで洗う。

  • すすぐ。

  • カゴで水を切る。

  • ある程度水が切れたら向きを変えて水を切り直す。

  • ある程度水が切れたら拭き取る。

  • 筒本体を上向きにして、中を乾燥させる。

※20分には水切りと乾燥の時間は含んでいません。

少々神経質かも知れませんが、夏場に臭ったり、凹凸部が黒ずんだりした経験から、手を抜けなくなっています。
特に黒ずみは、ブラシが届いていないことが何度か重なると、すぐに色濃く現れ、慌てて洗っても、黒ずみが沈着してしまいます。

そもそも…

水筒は、どうして洗いにくい形状なのでしょうか?


もの造りを生業とする筆者の経験に基づく個人的な見解を以下に記します。

  • プラスチックでできている以上、凹凸は避けられない。

  • 形を決めた人が、毎日洗うことを深く考えていないのかも知れない。

"プラスチックでできている以上、凹凸が避けられない" という点について、詳しく知りたい方は、プラスチックメーカーのサイトや技術情報サイトを見たり、専門書を読むことをお勧めします。
サイトを探すのであれば『プラスチック / 射出成形 / 肉厚』と検索すれば、良い解説が見つかるのではないでしょうか。
ここでは簡単な説明に留めます。
実は、プラスチックをきれいな形でたくさん造る為には、どこの断面を見ても薄い板状になっている必要があり、部分的にでっぷりとした塊とすることが非常に難しいのです。
身近なプラスチック製品の裏側を見てください。至るところが凹んでいるはずです。塊のように見える場合は光を透かせるかコツコツと叩いてみてください。中が空洞であることが分かると思います。
ですから、水筒の飲み口の場合で考えると、飲み物が流れる所をきれいな面で造ると、その裏側はハリボテのようにせざるを得ません。
この結果、凹凸が避けられなくなり、洗いにくい形状となってしまうのです。

水筒の飲み口の断面形状

では、"形を決めた人が、毎日洗うことを深く考えていないのかも知れない" というのは、どういうことでしょうか。
飲み口の形を決める手順を簡単に見ていきましょう。

  • 水筒を傾けた時、こぼさずに口へ飲み物を流せること

  • 水筒本体または蓋に取り付けられること

  • 水筒本体及び蓋との間にパッキンを挟んで密封できること

  • できるだけ単純な形状にして造りやすくすること

  • 簡単に壊れないこと

  • デザイン性が良いこと

  • 手入れ(メンテナンス)ができること

これらは必ずしもこの通りの順番である必要はありませんし、内容も筆者の経験によるものです。
洗うことは、概して、"手入れ(メンテナンス)ができること" という少し意味の広い文言となり、形を決める手順の終盤に現れます。
当然、試作をして、実際に洗うテストをすると思われるのですが、この結果は "洗える" か "洗えない" かでしか判断されないことが多いものと思います。
"毎日洗っても苦痛でないか、洗い残しが生じやすくないか" まで検証するのは稀なことと思いますし、お金と時間をかけてそこを造り込んでも売り上げに繋がらないというのが実態と思われます。

そう考えると…

洗いにくいのは水筒に限った話ではないのです


環境意識の高まりで、シャンプーやボディーソープ、各種の石鹸や洗剤類が詰め替え式になっています。
これらは非常に素晴らしいことなのですが、肝心のボトルが汚れていきます。気になって洗おうにも、手押しポンプヘッドの裏側など、ブラシの届かないところが多いのです。
結局、汚れが気になってボトルを捨ててしまうとすれば、本来の目的は何だったのか、と考えてしまいます。

その他、麦茶ポット、ピーラー、お弁当箱…、と苦労しているものが複数思い出されます。

洗い物からは離れますが、筆者は掃除機についても同じことを思います。
吸い取り性能はすごく良いのに、吸い取ったごみをゴミ箱に捨てる際に埃が舞うのです。

結局のところ…

洗いにくくても仕方がないと諦めるしかないのでしょうか?


ここまで書いてきて大変申し訳ないでのですが、すぐの解決は諦めるしかありません。

少しずつでも状況を変えていく為の提案を以下に記します。

  • 使用頻度の高いものは、実際に手に取って、洗うことをイメージしてから買ってみてはいかがでしょうか。

  • 洗いやすさや品質は、必ずしも値段と相関しませんから、値段だけで判断せず、ものを良く見て、どれを買うべきか決めてはいかがでしょうか。

  • 洗いやすさや品質は、デザインと相反することもありますから、デザインだけで判断せず、ものを良く見て、どれを買うべきか決めてはいかがでしょうか。

消費者が、自身の生活に本当に合ったものを選んでいかなければ、メーカーが毎日の家事を見つめた商品造りで応えることは難しいだろうというのが筆者の考えです。

情報に溢れ、何でも選んで手に入れられそうに思える現代ですが、知らぬ間にメーカーや流通の都合で選ばされているのかも知れません。

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