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父の隠し玉・後編 〜嗚呼、職人の絶望日記〜

どうも、スマホの検索履歴が上位から「投資・株・2019 新ビジネス」になっていて、「あ、これヤバイやつや」となったきゃじょーです。

父の隠し玉が発覚した。
放置しておきたい気持ちでいっぱいだったが、これは片付けておかねば新製品開発にも気持ちよく取り組めまい。


ザルいっぱいに敷き詰められた虫たちと向かい合う。
震える手でその中の一匹に手を伸ばし、緑色に輝く羽をサクッと剥がすと茶色い体があらわになる。
体内に入っていたものは、粉状になって散らばり、独特の匂いを放つ、、、

とりあえず数十匹分を解体したところで、思わず立ち上がってその場を離れる。
「なるほど、これは気持ち悪くなる、、、」

定期的に外の空気を吸わないと吐きそうだ。

ザル二枚分にビッシリといる彼らは一体何匹いるのだろうか、、、


 
ゴールが見えてきたのは3日目だった。
隣の部屋で仕事をしていた父が様子を見に来る。
今日中には全部終わりそうだという事を伝えると、父は言った。

「そうや、こんなんやり始めたらすぐ終わんねん」

父はずっと一人で仕事をしてきたので、すぐに必要でないことを後回しにしてしまう気持ちは理解できる。
だが、わかっていても言わずにはいられなかった。


「どの口が言うねん」


以上、1300匹に及んだ虫の解体作業は無事に終了しました。
これが私の初仕事となりました。

ちなみにこのタマムシの羽、正倉院の宝物にもある漆芸の加飾にも用いられる貴重な材料らしいです。

わが工房での使い道は未だにわからないが、とにかく初仕事を終えて新製品開発へと向かうことができそうだ。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。