今村夏子を読んだ夏
ネタバレありです
今村夏子作品を三作読んだ。そこまでドラマティックなことが起こらないのがよかった。三作品とも、平坦な日常にささやかな事件に、一般的、と言うには空気感の違う主人公。ちょっと異様な家族や状況に囲まれて平然としている得体の知れない主人公。やりたくないことを避けるためのあさっての努力。心ここに在らず。そんな主人公たち。
私は世間擦れしていけないピュアさを持病のように抱えた人は好きだけれど、狂気の境みたいな話も好きだけれど(小川洋子など)
今村夏子…今村夏子の、話は……。身につまされるリアリティに、具合が悪くなりそうだ…!(;o;)あひると星の子はまだよかった、むらさきのスカートの女はちょっと打ちのめされました。
小川洋子は美しいファンタジーなんだよ結局。静謐で品があって清めたての病室のようだよ例えるなら。非日常どころじゃない別世界だよ。
夏子は日常なんだよ。
加工されてないんだよ。
星の子 好き、面白かった。まだ子供の主人公はかわいい。いじらしい。新興宗教の云々より失恋の描写の方が辛いのが素晴らしい。
あひる 短編集っていい、好き。三編どれも好き。でも森の兄妹が一番好きかも。漫画全巻買ってくれたお母さん、涙。タイトルと表紙のほっこり感、読み終わってから見ると不穏なのがいい。
むらさきのスカートの女 上記二作と比べたらなかなか読み進まなかった。密度が濃い感じ。主人公の異様さも一線を超えている。どんな時でもむらさきのスカートの女を観察する主人公、オメーはいったいどこに居るんだよって空恐ろしくてウケてしまう。推しの部屋の壁になりたいのか。地に足のつかないおかしな人、という領域を超えている。最後、主人公は不倫関係に至らないのがむらさきのスカートの女とは決定的に違う人物像を表しているようで、おかしみでかなしみ。。単に脅迫っていう。主人公はむらさきのスカートの女と友達になりたがっていた、謎のシンパシーを感じていた、けれど実際は別物、ポテンシャルの違いがエグい。そんで主人公の方がヤバい。何がヤバいって、倫理観……。
相手の奥さんに何回も無言電話かけるメンタリティのむらさきのスカートの女を、
そういうのよく聞くね。普通の女じゃん。
と思ってしまえるのが、この作品の一番面白い所だと思いました。
むらさきのスカートの女がいないと際立たない、目にもとまらない、主人公の異常さ。
三作だいたい続けて読んだのでちょっとお腹いっぱいだけど、そのうちこちらあみ子も読みたい。
よい夏でした。
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