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日本外食新聞掲載原稿 第40話

第41話が掲載されたので第40話をアップします。
今後どうなるかわからないドキュメンタリー(実話)連載です。


実録!飲食業界のパラダイムシフトに田舎の喫茶店マスターが巻き込まれたとき、現場をこなしながらどのように活路を見出すか。391日目。




7月3日からスタートした「緊急事態宣言」でも「まん防」でもないのに21時閉店でお酒は20時までという、よくわからない期間に「愛知県厳重警戒措置」という名前がついたのは7月12日のことだった。名前が無いとなんだか落ち着かなくて、それが付くだけで安心感のようなものが湧いてくるのは何故だろう。
まぁとにかく東京の緊急事態宣言に合わせて、8月11日まで継続されることが決まった。
「いつになったら通常営業に戻せるんだろうね。もう長いこと夜営業ちゃんとやってないでしょ?」
「いやぁーまだ当分無理じゃないですか。オリンピック始まって世界各国からウイルスが持ち込まれたら一気に感染拡大するだろうし、むしろオリンピック後が大変なことになる気がしますね。ワクチン接種もどうせ進んでないだろうし。まぁとにかくオリンピックが終わるのを大人しくみてるしかないですよ。飲食店は…」
7月後半から夏休みで暇になることが分かっている。しかも今年は7月23日からオリンピックも始まるので、自宅でテレビ派の人たちはますます外出しないだろう。こんな時こそ海外へ向けての事務手続きやECサイト作成を進めるチャンスなので、どうにか7月22日までにある程度の売り上げを作って、できれば赤ワインのケーキも完成させておきたかった。売り上げに関しては年に一度の珈琲チケットセールがあるのでそれほど心配はしていなかったが、問題は中国に送るための赤ワインのケーキだ。これが思うように進んでいない。

しっかりした赤ワイン感を出したいのに思ったような味が作れなくて、ずっと停滞している。何度か試してみて少し分かってきたのは、赤ワインに熱を加えるとタンニンが分解されて渋みを感じにくくなるということだ。
タンニンがもたらす収斂性(しゅうれんせい)は、人が赤ワインを赤ワインと認識するために必要な要素で、これが弱くなるとどうしても葡萄ジュースのような少し間抜けな味に感じてしまう。ワインの酸化を防ぎつつ、日持ちさせるために火入れをして、更にアルコールをちゃんと残した状態で美味しく仕上げたい。
一口で「赤ワインだ!」と認識できる味に仕上げたいと思っていたが、どうしても出来ないでいる。
「参ったぞ。赤ワインのケーキを作って欲しいと言われてから2ヶ月も経っているのに全然完成が見えてこない。こんなこと続けていたら計画がズルズル遅れてしまうし、折角サンプルを送ると言ってくれている社長の熱が冷めてしまう。こういうのはスピードとタイミングが重要なんだ。いま目の前にチャンスがぶら下がっているのに、今、飛び付かないでどうする。チャンスが逃げちゃうぞ!もうこうなったら、今ある商品でとりあえずサンプルを出そう。赤ワインのケーキは完成次第あとから追加する方向で話をつける」。
そう決めてすぐ社長にアポを取り、サンプルを中国に送る段取りの話をしたい旨を伝えると、打ち合わせが一週間後の7月21日に決まった。
「よし。明日からの一週間で昨対100%まで売り上げを持ち上げるぞ!21日までにクリアしておけば後半が楽だからな」
「どうやってやるんですか?」
「そりゃーLINEで営業かけまくりに決まってんじゃん!まだ珈琲チケット買いに来てない人全員にLINE打ちまくるね。買いに来るまでねちっこく(笑)」
結果的に7月22日で昨対100%を越え、7月は昨対133%(300万円)でフィニッシュした。珈琲チケットは合計331冊売れ、チケットの売り上げだけで158万円と過去最高を更新。多分これは「コロナで大変だろうから…」という応援の意味も込めての331冊だと思うので、本当にありがたい。7月はさらに感染防止対策協力金が80万円入ってくるので、総合計で380万円となった。2人でやっている小さな喫茶店にしてはまずまずの数字に見えるかもしれないが、これから海外に向けてアクセルを踏もうとしている会社としては、まだまだ少なすぎる。
この程度で浮かれてはいられない。

7月19日、梅雨が明けたとたん襲ってきた酷暑にうんざりしながら、冷房がなかなか効かない厨房の中で「イギリスでは19日から全ての規制が解除になることを受け、日付が変わった瞬間からお祭り騒ぎがスタートしています」というニュースを見ていた。超絶密な状態のディスコで、イギリス人が狂ったように踊りまくっている映像が流れている。まさに狂喜乱舞。相変わらず5万人近い感染者を連日出しているそうだが、もう知ったこっちゃないって感じだな。
いや、それでいいと思う。日本ではコロナウイルスの扱いが感染症法の分類で「2類相当」とされていて、結核やSARS、鳥インフルエンザと同じ扱いなのでなかなか厄介なのだが、これを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に落とせば、ただの風邪として扱えるので、医療崩壊が起きることもなく、安心して経済活動を再開することができる。この2類から5類に落とす議論はこれまであまり表立ってはされてこなかったが、いよいよ世界が経済回復に舵を切りだしたのをきっかけに、やっと議論される空気になってきた。コロナが2類のままではどうにも動きにくいからだ。ワクチンの接種率が上がってから検討しようと思っていたのかもしれないが、接種率がなかなか上がらない中、世界に置いていかれる危機感が芽生えてきたのだろう。今ごろ?遅くないか?と思うがそれでも動かないよりマシだ。日本政府が早くコロナを2類から5類に落として、経済回復に向かってくれることを切に願う。

7月21日の社長との打ち合わせは至極スムーズに進み、上海に3個、深圳に1個サンプルを送ることが決まった。8月4日の配送予定、いよいよだ。その上、新たなビジネスのアイデアもその打ち合わせの最中に生まれ、まだまだ妄想レベルで人に話せるような内容ではないが、実現したら最高に面白そうだった。「えっ?僕が香港で代表取締役になる?えっ?どういうことですか?」
高い視座で遠くを見据えて戦っている社長と話していると、見たこともない景色の話をしてくれるので本当に楽しい。だが、その風景にはリアルな共産党強権国家の姿も映し出されるので非常に怖くもある。
「ご想像の通り、リスクはあります。そしてどこに地雷があるか分からないので、不安な毎日を過ごすことになることも覚悟しておいてください。でもね。中国人もやっぱり人なんです。ちゃんと挨拶に行って、然るべきところに渡す物は渡す。これがしっかり出来ていれば、そこまで攻撃を受けることはないです。ここをちゃんとやらないから裏切られるんです。中国人もちゃんと便宜を測ってくれる人には商売を続けて欲しいって思うんで、そんなに簡単に追い出したりはしませんよ(笑)」
柔らかい口調で「世界戦のコツ」と「お金の重要性」を教えられる。
「そんなに難しく考えなくて大丈夫です。お中元やお歳暮と一緒って考えれば日本と変わらないでしょ。向こうは季節の挨拶が重要なんです」。
そんな簡単にことが運ぶわけもないが、今はまだ安全な日本で未来の扉を開いたばかりなので、不安よりワクワクの方が大きい。今後どうなるか全く分からないが、一歩前に進んだ実感だけは残った。

いよいよオリンピックが開幕し、それと同時に夏休みが始まったので7月の後半は異様なほどの静けさを保っていた。そんな時、久しぶりにフォトグラファーの小島くんから「実家のスタジオで少しだけ小道具使って秘密工房のイメージ写真撮ってみたので確認してもらってもいいですか?」と連絡が来た。「おっ!ではではお手並み拝見と行きますか〜」と届いたファイルをワクワクしながら開いてみたのだが「・・う〜・・あ〜・・ん〜・・全然ダメだな…」一生懸命撮ってくれたのが分かるだけに(しかも無料で)厳しく指摘するのが心苦しい部分もあったが、そこは心を鬼にして、今後の彼の成長を願って思いっきりぶつけてみた。
「ごめんね、このレベルでは全く使えないよ。全然美味しそうじゃないもん。もう少しプロの仕事を研究したほうがいい」といくつか参考になりそうなサイトを共有しておいた。最初のオーダーで「日本」「大正ロマン」「秘密」「華やか」「強さ」「格好いい」「可愛い」といったイメージを写真に落とし込んで欲しいと伝えておいたのだが、いかんせん飲食の写真に関する経験と技術が足りていない。ECサイトでは写真のクオリティーが売上に直結するので、そこは絶対に妥協できなかった。「だったら最初っからプロにお願いすればいいじゃん」という声が聞こえてきそうだが、そこはあのタイミングで声をかけてきた彼に必然を感じてしまったのだから仕方がない。少し時間はかかるかもしれないが、彼がうちの写真を今後も撮り続けることになると思ったし、その為に今ここで壁にぶつかって、それを乗り越えてもらわなければ困るのだ。
「本当に僕がこのままECサイトの写真も担当していいんですか?まだこんなレベルなのに…」「大丈夫。小島くんを信じています。もっともっと撮ってここで成長すればいいし、一緒にもっと高いところを目指しましょう」
そうは言っても早くECサイトの制作に取り掛かりたかったので、この予想外のタイムロスは痛い。ここもとりあえず自分が撮った写真で先に制作を進めて、後でいい写真が撮れたら差し替えることにするかぁ。んーなかなか思うようには進まないものだ。



カフェパルランテ 三井隆義

〒487-0026 愛知県春日井市不二町2-6-7  0568-53-2477

※ビストロセット3300円 記念日コース7700円 ご予約受付中
※バースデーケーキ、チョコペンアート ご予約受付中(3日前迄に)
※珈琲チケットを持っている方は席のみの予約もできます

営業時間 12:00~22:00 (ランチ12:00~14:30LO・ディナー17:30~21:00LO)
月曜定休 + 不定休あり(noteで告知します)
P7台(乗り合わせて来てください)

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