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【第11〜13回】『ミラノ 霧の風景』『ワールズ・エンド(世界の果て)』『すべての見えない光』

こんにちは。
文学ラジオ空飛び猫たちです。
2020年にお送りした文学作品を紹介していきます。

硬派な文学作品を楽しもう!をコンセプトにしたラジオ番組です。毎週月曜日7時にpodcast等で配信しています。ラジオをきっかけに、文学作品に触れていただけると嬉しいです。

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【第11回】『ミラノ 霧の風景』須賀敦子著 〜記憶の中の人々〜

あらすじ
『ミラノ 霧の風景』は、須賀文学の魅力が凝縮した、不滅のデビュー作。講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞。『コルシア書店の仲間たち』は、60年代ミラノの小さな共同体に集う人々の、希望と熱情の物語。『旅のあいまに』は、単行本未収録の連作エッセイ12篇。深いまなざしで綴られるさまざまな出会い。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
とても文学的なエッセイだと思いました。時間と記憶を扱っているのですが、時間が経つと出来事や人や街であったりの印象が変わるのがとてもうまいです。そのような文学的な要素を持ちつつ現実感のあるエッセイを書けるのはすごいと思いました。他にも「すごい」と思ったことはたくさんあって、イタリアにいたおよそ13年間でこれだけのものを書けることや、人生において関わった人たちを深く描写できるのが本当にすごいと思いました。絶対に自分ではできない。関わった人とのこの距離感はもはや現代では成し得ないことだし、今後どんどん失われていくことだと思いました。
ずっと自分の記憶に残る人が誰にもいると思います。そういう人たちを言葉にしているのがこの作品だと思います。きっと関わってきた人によって人物形成はされていくので、そういうことが好きな人には絶対はまると思います。

ミエ
小説のように読めるエッセイ。でもフィクションではなくて、ここに書かれているのは須賀敦子さんの人生にあったことです。登場する人物はみな無名ですが、だけどかけがないのない存在だと思えてきます。人生の中で関わった人をこれだけ丁寧に書けるのは須賀敦子さんの優しさがあってこそなので、自分も人をしっかり見れる人間になりたいと思いました。
文章にこだわりがある人は読んでほしいです。こんなに美しい日本語の文章はなかなか読めないと思います。それに旅が好きな人やイタリアに憧れる人にも須賀敦子さんが描くイタリアの小さな町や暮らしに惹かれると思います。

【第12回】『ワールズ・エンド(世界の果て)』ポール・セロー著 〜異国の地、居心地の悪い場所〜

あらすじ
雨のロンドン、酷暑のプエルト・リコ…世界のどんづまりで戸惑う人々の悲劇と喜劇―アメリカ文学界の異才ポール・セローの奇妙で痛快、尋常ならざるエネルギーに満ちた短編集。村上春樹ライブラリーのために改訳。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
個人的にはめちゃくちゃ好物な小説。これだけ居心地の悪さをリアルに描ける技量がすごくてはまってしまいました。決してハッピーではない複雑な感情を味合わせてくれるのが小説だと思うし、苦々しく切なく終るところが本当にいいです。
ハッピーエンドな終わり方を小説に求める人には合わないかもしれないです。妙にリアルに、どこか何かに対して居心地の悪さを感じていて、言葉にできない人には共感できるところがあると思います。この感じ、わかる!ってなるかもしれないです。異国ではなくとも、居心地の悪い場所というのは実生活のなか結構あるものだと思います。

ミエ
不思議な魅力がある小説です。読みやすいし、おもしろいし、でもハッピーな話ではない。社会の不都合な部分を書いているのにやけに爽やか。絶望的な話が多いけど、そんな世界を魅力的に思えました。村上春樹さんのあとがきを読むと、ポール・セローが異国を旅する中で実際に体験したことも書いているそうです。やはり異国であったり、未知の世界を教えてくれる小説はおもしろい。
ハッピーエンドではないですが、心に残る小説だと思います。でもラジオで取り上げた『ワールズ・エンド』にしても『緑したたる島』にしても、良くも悪くも人間らしさのある主人公に愛着を持つのではないかと思います。あっさり読めるけど、すぐには忘れられない小説です。

【第13回】『すべての見えない光』アンソニー・ドーア著 〜ラジオが、少年と少女の心をつなぐ〜

あらすじ
孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の姿を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
とても長い小説ですが、その厚みの分だけ感動があります。少年と少女をめぐる濃厚なストーリーですが、500ページの中で二人が時間を共にするのは一晩、わずか10ページあまり。そこにおける感動がいいです。長さに挫折する人も多いけど、絶対に最後まで読んでほしい。
これまで出会ったすべての人に読んでもらいたい小説です。物語の厚みに感動できる人、辛い話がある程度大丈夫な人には絶対読んで欲しい。長編が苦手な人はまずはアンソニー・ドーアの短編集『シェル・コレクター』の特に『ムコンド』を読んでほしい。『すべての見えない光』で味わえるような感動が待っています。

ミエ
いつまでも記憶に残る小説だと思います。この小説ではいろいろなものが物語に繋がっていて、例えばラジオとか貝殻とか缶詰とか模型とか、それらの情報が実生活で入ってくるとふとこの小説を思い出して感傷的な気分になることがあります。個人的にはやはりヴェルナーの存在が一番大きかったです。ヴェルナーはマリーと奇跡的に出会って、そこからヴェルナーは自分の信じた行動をするようになります。それまで葛藤しながら耐えてきたヴェルナーが自分の信じた道を歩く姿は、けっこう自分のことのように思えました。私やダイチさんはヴェルナーに感情移入したけど、この小説には魅力的な人物が出てくるから読む人によってマリーやフォルクハイマーやエティエンヌといった人物により強く思いを馳せるのではないかと思います。魅力的な物語、魅力的な登場人物が、読んだ人の人生を豊かにしてくれると思います。
人生の一部になるような小説になると思うので、多少読むのに時間がかかる小説ですがすべての人におすすめしたいです。

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