ひよこ豆のペースト「ホンモス」は、中東起源、奥の深い食べ物
ホンモスという食べ物をご存知だろうか。中東でご飯を食べると、結構な確率ででくわす、ベージュ色のペースト状の食べ物だ。正式には「ホンモス・ビッタヒーニ」といい、タヒーニ(ごまペースト)をまぜたホンモス(ひよこ豆)という意味になる。アラブ料理では前菜に位置づけられ、ナンにつけたりして食べる。アラブ料理には、ナンにつけて食べるペースト状の前菜がいくつかあって、最初にテーブルに置かれる。あれこれ食べていると、メインディッシュが来る前におなかがいっぱいになつてしまうので、要注意だ。
ホンモスの起源がどこなのかについては、諸説ある。アラブ圏、イスラエル、トルコなどが本家本元を主張している。トルコやイスラエルや欧米では「フムス」と呼ぶところも多いようだが、ここでは表記を「ホンモス」で統一する。
自作ホンモス
そのホンモスを自分で作ってみようと思ったのは、特段、何かのきっかけがあった訳ではない。東京・新大久保のアジア系食材店がある通称「イスラム横丁」でひよこ豆を見つけて、「作ってみようか」と思い立ったのだ。
ひよこ豆はアジアで広く食べられている豆で、イスラム横丁のスパイスを扱う店でも間違いなく売っている。しかも、イスラム横丁は、とても値段が安い。私が買ったのは、1㌔で300円。普通のスーパーなどでも手に入るかも知れないが、おそらくその数倍の値段だろう。
ホンモスの作り方を簡単に説明する。まず乾燥ひよこ豆をひと晩、水につける。そのひよこ豆を煮て、ミキサーにかける。ひとつ問題なのは、ホンモスの正式名称にもはいっている「タヒーニ」の入手。日本ではかなり難しいかも知れない。すりごまを油でといたものでも代用がきくかも知れない。私はタヒーニの代わりになるというネット情報を参考に、中華調味料の「芝麻醤」を使った。レモン汁、塩、ニンニクも加える。スパイスはクミンパウダーを入れた。コリアンダーパウダーをいれる人もいる。
盛りつけは、皿にナイフやフォークなどで成形し、真ん中にへこんだ部分を作り、そこにオリーブオイルをたらす。パプリカパウダーをふりかける、というのもよく行われる。
こんなふうにできあがった。オリーブオイルをたらす前に、写真を撮ってしまい、食べ始めてしまった。
すべての工程をふくめると、結構時間がかかるなあ、というのが正直な感想だった。特に、ミキサーでこまかくするのに意外に時間がかかる。割合、手がかかる料理だなあ、と感じた。
ナンがないので、食パンや、あるいはメキシコ料理のトルティーヤですくって食べた。自己評価では、味はそんなに悪くない。最初にしては、成功といっていいだろう。
しかし、その少し後、驚くべきホンモスと出会うことになった。映像作家のヒロケイさんらと、パキスタン料理やアラブ料理を食べに、仙台へ行ったときのことだった。
仙台のバーで
イスラエルから来たミリスさんが仙台随一の繁華街・国分町で開いた「ミリス・ダイニングバー」で食べたホンモスだ。
食感がとてもなめらかなのだ。ミリスさんに話を聞くと、ひよこ豆の皮を取り除くための工夫をしているという。ゆであがったあとのひよこ豆をざるんなどに取って振ると、一部の皮はとれるという。さらに必要ならば手作業で皮を除去していく。あのなめらかさは、地道な作業のたまもの、という訳だ。
それでいて、ミリスさんのホンモスはきわめてシンプル。タヒーニ、塩ぐらいしか加えないそうだ。「シンプルなのが大事」、ミリスさんは自信満々に話してくれた。
また、ミリスさんのホンモス料理は、さまざまなバリエーションがある点もすばらしい。ホンモス自体は同じなのだが、それなゆで卵や、焼きキノコや、牛肉、ラム肉、ファラーフェル(ひよこ豆のコロッケ)などを添えるのだ。上の写真は「焼きキノコ添え」、つまりマッシュルームを焼いたものが真ん中に置かれているものだ。
マッシュルームの味付けは、イタリアのトスカーナ風だと言っていた気がする。とても凝っている。ホンモスに合う食べものは何か、を真剣に探しているミリスさんの姿勢には頭が下がる。
ビーガンとの相性
日本でのホンモスの話題というと(世界的な話かも知れないが)、ベジタリアンにホンモスがうけている、ということだろう。特に、卵や乳製品も摂取しない「絶対菜食主義」(ビーガン)の人たちに人気もようだ。ビーガンをうたった店でホンモスを取り入れているところが増えている。大阪には、下のような店があった。
東京では、こんな店がある。
私はビーガンという訳ではないが、ホンモスは好きだし、近くにこんな店があれば、たまに食べたいと思うかも知れない。
ホンモスは、シンプルな料理だけあって、いろいろと応用がきくのかも知れない。「ホンモス入りあんぱん」なんていうものが、日本に出現する日もそう遠くないかも知れない。
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