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しびれるような琥珀色の飲み物、その正体は…「アラビックコーヒー」

コーヒーの話題にちょっと遠回りになるのかも知れないが、以前、サウジアラビアに行った時のことから話したい。当時のサウジは、外国人に観光ビザを発給しておらず、例外的に日本人だけが、異文化学習といった名目で、観光ツアーを体験することができた。そんツアーに参加させてもらう機会があった。

サウジという国は、メッカとマディーナ(メディナ)というイスラム教の2つの聖地があり、聖地巡礼でやってくるイスラム教徒以外の外国人を観光客として受け入れることは、以前ほとんどなかったのだ。

だから、ツアーと言っても、イスラム聖地には入れず、街をぶらぶら散歩する、といったことも許可されていなかった。それでも、当時「観光鎖国」だったサウジを、ビジネスなどとは違う側面からのぞき見るのは、かなり魅力的な機会だった。

その観光ツアーの訪問場所の1つに、北部の砂漠地帯にあるイスラム以前の遺跡「マダイン・サーレハ」があった。

ヨルダン南部にあるペトラ遺跡と同じ謎の隊商国家「ナバティア王国」の遺構で、巨大な岩盤に掘られた100以上の墳墓群が圧巻だった。イスラム聖地がある国で、かつてはやや邪魔な存在だったようだが、最近は観光資源としての価値が評価され、国際的な電気自動車耐久オフロードレースが開催されたりもしている。

その、かつてのひっそりとした「マダイン・サーレハ」を見学した後で、引率のサウジ人たちが、ツアー客にコーヒーを作ってふるまってくれるという、ちょっとしたイベントがあった。世界有数の産油国で、豊かな暮らしを謳歌するサウジ人の労働意欲は極めて低いと当時言われていた。そんな彼らが、自ら砂漠のただ中に即席の囲炉裏を作り、地べたに座って、かいがいしくコーヒーをいれてくれたのは、ちょっと驚きだったし、うれしかった。

だが、これは後から知ったことだが、砂漠でくつろぐのも、砂漠でコーヒーをいれて飲むのも日常の欠かせない楽しみであり、彼らにとっては「労働」とは少し別次元の行為だったようだ。確かに、この時、彼らは実に楽しそうに、コーヒーを入れてくれた記憶がある。偏見かも知れないが、サウジ人とは、都会にいる時は、何となく元気がなくてけだるい感じだが、砂漠の中に飛び出すと、急に元気になる人たちだという印象がある。

さて、この砂漠で飲んだコーヒー、普段我々が飲んでいるコーヒーとはかなり違うものだった。ここでは「アラビック・コーヒー」と呼ぶことにするが、カルダモンなどのスパイスがきいたかなり独特な味だ。

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